スタートから10年を迎える「藤間勘十郎文芸シリーズ」。きらびやかな『源氏物語』の贋作として描かれ、江戸時代最大のベストセラーとなった柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』を、女優4名と三味線・筝・鳴物・笛の生演奏のコラボによる「語りの世界」バージョンで上演する。構成・演出の藤間勘十郎とシリーズ初出演の水夏希に話を伺った。
藤間「私は普段、歌舞伎の振り付けや演出を行なっています。文芸シリーズを通して歌舞伎以外の方と一緒にお仕事をする機会が増え、引き出しが増えました。さらに今回は新たに“語り”ということで、演者さんのまた違う面を見られるのが楽しみです。朗読劇ですが、このシリーズは元々“読む”ことにこだわって作ってきました。演者のみなさまの存在を挿絵のような感じで出せたらと思っています」
水が演じるのは、将軍 足利義政の妾腹の子・足利光みつ氏うじ。
水「『源氏物語』のパロディで、当時庶民が熱狂したベストセラー。推理小説のようでもあり、おもしろそうだと思いました。現役時代に出演した『源氏物語 あさきゆめみし』との違いも楽しみにしつつ、難しそうだというのが第一印象。私にとっても、伝統芸能の方々とご一緒するのは刺激があるので楽しみです。歌舞伎などを観ていると、現代劇と違うセリフの強さ、訴えかけるものがありますよね。今回、言葉は現代語ですか?」
藤間「いろいろです。言葉のおもしろさや七五調で語られる古典音楽の歌詞に魅力があるので、全部現代語だと作品のおもしろさが出てこない。お客さまが完全にわからなくても、雰囲気で伝わればいいと思っています」
水「普段使わない言葉でいかに世界観を作るのかというのも見どころかもしれません」
藤間「演者は4人しかいないけど登場人物は大量にいる。どうやるかが、今回の挑戦と驚きになると思います」
水「さらに生演奏ですもんね」
そして水は、「和ものに出演するのは年に1回あるかないかなので、その時間が楽しみ」と続ける。
水「歌舞伎はちょっとハードルが高く感じますが、その世界の方とコラボすることで、『こんなにおもしろかったんだ』と楽しめたら。『偐紫田舎源氏』もこういう機会がなければ一生読まないと思うし(笑)」
藤間「確かに(笑)。題名を聞いてもピンとこないですよね」
水「江戸時代のベストセラーを、時空を超えて体感できたらいいですね」
(取材・文:吉田沙奈 撮影:平賀正明)
藤間勘十郎さん
「五月病にかかる間がないので(笑)わかりませんが、1つのことが手につかないと他のことをやる! それが飽きたらまたもとに戻る! 私はいつも五月以外もこうして乗り切ります。1つにに集中できない時は諦めます。ただボーっとしないように常から様々な事に疑問を抱きながらが生きてます。“なぜ?”ということを常に問うていると、ボーっともしないし、頭が活性化し、無駄がなくなる、つまり行動が時短になるのでは!!」
水 夏希さん
「Time is money! 宝塚にいた頃から時短は得意でした。先々の予定を見て、テトリスのように組み立てていく。またはマルチタスクで。忙しい時はお風呂でごはんを食べたりします」
プロフィール
藤間勘十郎(ふじま・かんじゅうろう)
日本舞踊家・演出家・歌舞伎舞踊振付家。2002年9月に八世宗家 藤間勘十郎を襲名。フランス・オペラ座の歌舞伎公演、初音ミクとのコラボによる「超歌舞伎」の演出などを手掛けるほか、音楽劇『ハムレット』では、海外戯曲の演出にも挑戦。苫船(とまぶね)の名前で作詞・作曲・脚本も手掛けている。
水 夏希( みず・なつき)
元宝塚雪組男役トップスター。1993年、宝塚歌劇団入団。2007年『エリザベート』で大劇場初主演。宝塚初の天覧公演の主役も務めた。2010年退団後は、ミュージカル・ストレートプレイ・ダンスなど様々なジャンルの舞台で活動中。最近の出演舞台に、Musical『HOPE』THE UNREAD BOOK AND LIFE、ミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』、『エンジェルス・イン・アメリカ』など。
公演情報
藤間勘十郎文芸シリーズ 語りの世界Vol.1『偐紫田舎源氏』
日:2024年7月19日(金)~21(日) ※他、大阪公演あり
場:浜離宮朝日ホール 小ホール
料:S席8,800円 A席7,700円(税込・全席指定)
HP:https://artistjapan.co.jp
問:アーティストジャパン mail:info@artistjapan.co.jp