“獣” をテーマにした三部作の第一作目 セクシャリティと家族の物語を緻密に繊細に描く

“獣” をテーマにした三部作の第一作目 セクシャリティと家族の物語を緻密に繊細に描く

 「キ上の空論」2024年第1弾公演となる、キ上の空論 獣三作 一作め『けもののおとこ』は、主宰の中島庸介が“獣”をテーマに全く違った物語を描き出す“獣三作”の第一作目となる作品だ。

中島「人間の怪物的な部分、いわゆる“獣”を深く描こうと思い、掲げたテーマです。ただ、単純に“獣”を描きたいわけではなく、本人にとっては普通のことでも他者から見たら異常だと感じるところを取り上げて、深く追求していきたいと考えています」

 一作目の『けもののおとこ』で描かれるのはセクシャリティと家族の問題だ。

中島「セクシャリティをテーマとして扱う際に、家庭環境は必ず描かなければいけない部分だと思いますし、“人の成長”と“家族”は切り離せない。父親と息子、そして世間、様々なしがらみを描く事が重要だと考えました」

 主人公・堀矢未衣に“女に選ばれる男”になるよう教育し続ける父親・堀矢優一を演じるのは久ヶ沢徹。自身の役柄について「自分とは真逆だけれども、すごく興味が湧く人物」だと語る。

久ヶ沢「僕だったら絶対にしないだろうという生き方をしている人なので、これはおもしろいと思いました。僕の父親と母親は子育てに対して興味がない人たちだったので、自分は何も教わってこなかったんです。それで、自分の息子が生まれてからしばらくは、今まで僕が培ってきたもので、伝えた方が良いと思うことはなるべく伝えていこうと思っていたのですが、実際に子育てをしたら伝えても全く聞いてくれない(笑)。伝えることが必ずしも正しいのではないんだと気づいて今はやめました。あのまま僕が進んでいたらこうなっていたのかもしれないと、自分のあったかもしれない未来を見たようで、ゾワっとしました」

中島「物語の発端は、父親の優一です。彼の考えや、こうなってほしいという願望が未衣を作り上げています。そういう意味で、父親はキーパーソンです。父親と息子の関係性をしっかり作り上げないと物語が破綻してしまう。久ヶ沢さんにはそれを楽しんで演じていただきたいと思っています」

 心に突き刺さるセリフと描写で物語を紡ぐ中島の脚本を久ヶ沢は絶賛。

久ヶ沢「相当考えて、練られて書かれたものだろうと感じました。すごく緻密で繊細で無駄なものが描かれてない。素敵な作品だからこそ、いい意味で遊んでいけたらと思っています」

(取材・文:嶋田真己 撮影:友澤綾乃)

プロフィール

久ヶ沢 徹(くがさわ・とおる)
株式会社スーパーエキセントリックシアター所属。数々の舞台に出演し、様々なキャラクターを生み出す演技に定評がある。舞台以外にもドラマ・映画・CM・ラジオなど幅広く活動。主な出演に、シアター・コントロニカ『回廊』、笑う門には福来・る祭『明治座でどうな・る家康』、シアタークリエ『SHINE SHOW!』、虚構の劇団 解散公演『日本人のへそ』など。

中島庸介(なかしま・ようすけ)
劇作家・プロデューサー。「キ上の空論」主宰。18歳から独学で演劇を学び、岐阜・名古屋で活動。2009年、東京進出と同時に演劇ユニット「リジッター企画」の作家・演出家として活動開始。2013年、個人ユニット「キ上の空論」を旗揚げ。全作品の脚本・演出を手掛ける。大きなセットは組まず、役者の肉体と、会話言葉、軽快なシーン転換で「滑稽な人々の生活」を綴ってゆく。

公演情報

キ上の空論 獣三作 一作め『けもののおとこ』

日:2024年3月23日(土)~31日(日)
場:紀伊國屋ホール
料:7,800円
  U-25割[25歳以下]4,800円 ※当日券のみ/要身分証明提示(全席指定・税込)
HP:https://kijyo-kemono.com
問:SET mail:info@set1979.com

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