糸あやつり人形と生身の人間が織りなす唯一無二の世界 幻想の大海原で「白鯨」との壮絶な闘いが始まる!

 古典、新作、海外公演など、様々な創作活動を通して糸あやつり人形の可能性を高めてきた「一糸座」。中でも、生身の役者と人形が同じ舞台に上がる新作公演は、これまでの人形劇の既成概念を打ち破る新たな世界を生み出してきた。劇団桟敷童子の東憲司が脚本と演出を手掛けた最新作は、アメリカ文学の傑作『白鯨』をモチーフに、松本紀保演じるある女性の精神世界の冒険を描く壮大な物語だ。

東「一糸座さんの公演を通して、時には人間以上の複雑な表情を見せる人形の表現力の凄まじさを見せつけられました。そこに松本紀保さんをはじめとする生身の役者さんが加わることで、新しい演劇が出来るのではと期待しています。今回は精巧な人形自体が何よりの舞台美術。一糸座さんと共に人形劇の概念が変わるような、インパクトのある舞台にします」

松本「人形の力強い存在感が生身の俳優が持つそれと舞台上で拮抗しているんですね。俳優同士がぶつかり合うのとはまた違う、人形と人形遣い、俳優という3つの魂とエネルギーがぶつかり合う様子に今までにない興奮を覚えました。そこに生身の
自分がどう入っていくのか、全く未知の世界への挑戦なので、まっさらな気持ちで臨もうと思います」

 精力的に外部との共作を通じて人形の可能性を模索する代表の江戸伝内と、名跡を受け継いだ四代目結城一糸。その創作意欲は益々、高まるばかりだ。

江戸「役者さんや演出の方々と創作をすることで、思いもしないようなことが起きます。双方に違いがあるという前提で、1つの芝居を創っていくのがとても重要な事です。『なぜ、人形か』ではなく、『人形をどのようにして』という主語にすること
で、その可能性が無限に広がっていきます。人形と役者さんの身体が関わることで生まれる変化が楽しい。舞台を通して人形にはこんなにも多様性があるんだということを感じて頂ければ嬉しいです」

結城「素晴らしい役者さんが多く出演されるので、いつも以上に緊張していますが、人形遣いとして、皆さんのパワーに負けないように、いかに人形を存在させるかが1つの挑戦です。人形劇という既成概念を破ることは簡単なことではないですが、外部の方々と同じ舞台に上がることで化学反応が起き、全く違う世界を創ることができると信じています。今後も様々な分野の方々と共に新しい挑戦をおこなってまいります」

(取材・文:小笠原大介 撮影:間野真由美)

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江戸伝内さん
「近松門左衛門の墓は大阪に3箇所あるらしいが、私がいったことのある墓は尼崎にある広済寺の墓だ。その墓は派手さが無く、なんとなく近松らしいと思った、「虚実皮膜」虚構と現実の間そして慰み、そんな品の良いお墓に興味のある方はぜひ一度お参りしてみてはいかがでしょうか」

プロフィール

東 憲司(ひがし・けんじ)
劇団桟敷童子代表。劇作・演出・美術を手掛ける。凝った舞台美術と社会の底辺で生きる人々を描いた骨太で猥雑な群像劇が特徴。外部作品も積極的に手掛け、2012年度には紀伊國屋演劇賞 個人賞、読売演劇大賞 優秀演出家賞、鶴屋南北戯曲賞をトリプル受賞。

松本紀保(まつもと・きお)
TPT『チェンジリング』でデビュー。主な出演作に、東宝ミュージカル『ラ・マンチャの男』、劇団チョコレートケーキ『治天ノ君』、桟敷童子『その恋、覚え無し』、パルコ・プロデュース『ジュリアス・シーザー』など。第21回読売演劇大賞 優秀女優賞受賞。

江戸伝内(えど・でんない)
寛永年間から続く結城座・十代目結城孫三郎(故・結城雪斎) 三男として生まれ、5歳で初舞台。1972年、三代目結城一糸を襲名。2005 年、「江戸糸あやつり人形座(現在の一糸座)」を旗揚げ。2022 年、長男・結城敬太に一糸の名を譲り、「江戸伝内」と改名。

結城一糸(ゆうき・いっし)
三代目結城一糸の長男。祖父・結城雪斎(十代目結城孫三郎)と共に6歳で初舞台を踏む。2022年5月、四代目結城一糸を襲名。

公演情報

糸あやつり人形一糸座『崩壊 ~白鯨ヲ追ウ夢~』

日:2024年2月28日(水)~3月3日(日)
場:座・高円寺1
料:一般5,000円
  ペア割[2名1組]9,000円
  初日割[2/28]4,500円
  ※他、各種割引あり。詳細は団体HPにて
  (全席指定・税込)
HP:ttps://www.isshiza.com/houkai
問:糸あやつり人形一糸座
  tel.042-313-5205(11:00~17:00)

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