日本における一人芝居の第一人者が新シリーズを開始! 人間と時代を捉えた、一人芝居ここにあり「自信作。私自身も楽しみです」 

日本における一人芝居の第一人者が新シリーズを開始! 人間と時代を捉えた、一人芝居ここにあり「自信作。私自身も楽しみです」 

 市井の人々のわずかな出来事を瞬間的にとらえ、豊かに展開させる一人芝居を得意とし、“日本における一人芝居の第一人者”と言われる俳優のイッセー尾形。特に、2015年に夏目漱石をテーマにした一人芝居『妄ソーセキ劇場』を発表してからは、『妄ソー劇場』と銘打った一人芝居を全国各地で上演してきた。今回は『右往沙翁(うおうさおう)劇場』とタイトルを一新し、近鉄アート館(大阪市阿倍野区)で上演するという。

―――基本的に一人芝居のスタイルは変えずに上演されてきたイメージですが、なぜ今回はタイトルを変えられたのでしょうか?

 「『妄ソーセキ劇場』は新聞社からの依頼で始まったのですが、その担当さんがシェイクスピア(沙翁)と絡めて『右往沙翁』という言葉を書いていたんですよ。ああ、いい言葉だなと思って、ちょっとお借りすることにしてね。タイトルを変えたからには、心機一転頑張りたいですね。その名の通り、右往左往したいです」

―――上演する近鉄アート館は、尾形さんにとって特別な劇場と言えますよね?
 「そうですね。かつて東京の渋谷にあった小劇場 ジァン・ジァンで新作を上演して、その生まれたばかりのネタを近鉄アート館にかけて、育てていくというスタイルを10年以上繰り返していました。アート館は2001年に一度閉館してしまったのですが、2014年に再オープンされて、そのときに再び声をかけていただいて。これは“もう1回やれ”という神様の導きだなと感じましたね。
 ジァン・ジァンと比べて、アート館では“全身を見られる”という感覚が一番にあってね。初演のときに、足の先まで意識が行っていなかったというショックが強かったのかな。言葉だけではなく、全身を作って舞台に立たなくてはいけないなと思うんです」

―――今回はどんなネタを披露される予定か、お話しできる範囲で教えていただいても宜しいですか?

 「昨年のネタを総括すると“老い”がテーマだったような気がします。『ここまで頑張って働きなさい。その後は、自由行動です!』という世の中でしょう? その自由行動のときに何をするか。全部が全部ではないけれど、そんなことを類推させるネタが多かったように思うんです。
 人間は時代から逃れられないし、時代を含んでいると思うんですよね。その時代を言葉にしようとしたときに、『非常に暴力的な時代』とも言えるし『自分勝手な個人主義になった時代』とも言えるし『ヒステリックな時代』とも言えるけれど、ネガティブな言葉ばかりになってしまうでしょう。せめて舞台の上だけでもポジティブでありたいと思うんです。あまりにもネガティブな時代に対する反骨精神がむくむく湧いています。
 ……要するに現実を否定するようなネタは作りたくないし、この時代だからこそ出てきた人間でありたいけれど、それをポジティブにね、つくりたいね」

―――なるほど。ちなみにネタづくりはもう始まっていらっしゃるのでしょうか?

 「そうですね、具体的にこんなネタやりたいなというのはいくつかありまして。前に登場した人物が別のネタで出ても面白いし、新しい人物も作りたいなと思う。いずれにせよ、それを形にするのが楽しいですね。
 そして板の上に乗ったネタをお客様がどう捉えるか。それでネタが育つと思うんですよ。こちらが投げかける。お客さんからも投げかけられる。人に評価されるのは怖いけれどね、それがないと。そこから始まっているし、それがあるから続いていると思う」

―――改めて、イッセーさんにとって一人芝居とは何でしょうか?

 「“仮説“ですよね。全部仮説を立てるんです。このおばさんはこういうことをする、このおじさんはこういうことをすると仮説を進めていく。その仮説を楽しむんです。
 今回のネタはぜひ観てほしいですね。新しい時代で右往左往(右往沙翁)している人たちが出てきますから。自信作ですよ。私自身も楽しみです」

(取材・文:五月女菜穂 撮影:間野真由美 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:久保マリ子)

プロフィール

イッセー尾形(いっせー・おがた)
1952年2月22日生まれ、福岡県出身。1971年から演劇活動を始める。一人芝居の舞台をはじめ、映画・ドラマ・ラジオ・ナレーションなど幅広く活動。近作では、NHK大河ドラマ『どうする家康』鳥居忠吉役など。

公演情報

イッセー尾形の右往沙翁劇場 in 大阪

日:2024年4月10日(水)~14日(日)
  ※他、地方公演あり
場:近鉄アート館
料:5,500円(全席指定・税込)
HP:https://issey-ogata-yesis.com
問:近鉄アート館
  tel.06-6622-8802(11:00~18:00)

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事