今こそフラメンコが持つ情熱とパワーを全国に! 若手からベテラン、そしてレジェンド小島章司を迎えたフラメンコの集大成

今こそフラメンコが持つ情熱とパワーを全国に! 若手からベテラン、そしてレジェンド小島章司を迎えたフラメンコの集大成

 スペイン・アンダルシアで生まれたフラメンコ。日本での人気は非常に高く、日本人ダンサーや歌い手の多くが本場スペインで認められているほどだ。そんな日本のアーティストをまとめている日本フラメンコ協会の旗振りで公演が制作され、仙台・札幌・富山・徳島・大阪・館山と全国6ヶ所でのツアーを行う。そのきっかけを協会事務局長の瀬戸雅美が語る。

瀬戸「今年3月に東京で公演した『アニフェリア ~フラメンコの祭典~』をベースに作品を巡演します。1990年に発足した協会ですが、その礎を築き2021年に相次いで亡くなられた前会長の濱田滋郎さんと前事務局長の田代淳さんへのオマージュを、という声が上がったことがきっかけです。年齢、性別、文化を超えて人々にパワーを与えるフラメンコの裾野を拡げていく目的もあって皆が参加する作品を企画しました」

 そんな企画に演出家として抜擢されたのがダンサー・演出家の佐藤浩希。パートナーの鍵田真由美と創り上げた『Ay曽根崎心中』などの作品で知られる。作品への取り組みについて語ってくれた。

佐藤「フラメンコは年齢を重ねれば重ねるほど良くなる踊りですが、ここでは世代を超えて、それぞれのフラメンコへの愛が結晶した舞台を作りたいと思います。基本的にアーティストは一匹狼の人が多いですが、フラメンコの素晴らしさを伝えるために、そんな独立したアーティスト達が一丸となって、素晴らしい作品を作り、それを世間一般に広めていくことが大切だと思います。まさに、それがこの作品です」

 そしてアーティストの頂点に立つのが小島章司。この10月に84歳になった小島だが、現役として舞台に立ち続けている、まさにフラメンコ界のレジェンドの1人だ。

小島「もう日本でもスペインでも一番の年長者になってしまいました(笑)。この3月にもヘレスのフェスティバルに呼ばれて踊ってきましたが、お陰様でスペインでも日本でも居場所を創ることができた幸せな人生だと思います。協会は濱田さんや田代さんと3人で引っ張ってきただけに、2人へのオマージュ
とあればと出演したのですが、さらにこの全国公演にもいつのまにか出演が決まっていました(笑)」

 踊りだけでなく、歌やギターも第一線が揃い全国を巡る『フラメンコのちから』。さらに各地で活動するアーティストの参加もあるという。アーティスト達の情熱を感じるために足を運びたい。

(取材・文:渡部晋也 撮影:友澤綾乃(小島章司・瀬戸雅美))

2023年を総括!と聞いて、一番最初に浮かんだ出来事は?

小島章司さん
「出来事……ではないのですが、2023年を総括と聞いて浮かんだのは、Simone Veil(シモーヌ・ヴェイユ)の“魂の救済への希求”という言葉です。戦禍に生きる私たちに、救済への道すじは有るのでしょうか。信仰と祈りを捧げ続けることしか出来ない私たちですが、同時に、“芸術”は私たちの人生にはなくてはならないものである、ということを証言し続けようではありませんか」

佐藤浩希さん
「この度の全国公演開催の発端となった、3月に行われた『第11回アニフェリア ~フラメンコの祭典~』です。大御所から若手まで日本フラメンコ界を代表する方々が集まる初めての大規模開催。演出・振付を承った私は、リハーサルが始まる前は戦々恐々としておりましたが、集まったアーティストの全員の“フラメンコ愛”に導かれて、夢のようなひと時を過ごさせていただきました。そうして出来上がった作品は各人のエゴなど一切ない、ひたすらに愛のハーモニーに満ち溢れた作品となり、お客様に感動していただきました。今は再演できることの喜びを噛み締めながら、準備に取り組んでおります」

瀬戸雅美さん
「2023年は、“コロナ禍明けの公演復活ラッシュ”に嬉しいやら目がまわるやらの1年でした。主催・制作にかかわる舞台やプロジェクトが多すぎで、“分身の術”を手に入れる方法はないものかと(わりと真剣に)夢想してしまったほどです。そんな中で最も印象に残っているのは、この度の全国ツアーで上演する私たちの協会作品『フラメンコのちから』を初演した3月の公演のことです。その後、この作品が2024(令和6)年度の文化庁『文化芸術等総合支援事業(学校巡回公演)』に採択されたことも、この上ない福音でした。たくさんの想いがひとつになってみんなの夢が実現した年として、2023年は忘れがたいものになると思います」

プロフィール

小島章司(こじま・しょうじ)
徳島県出身。1968 年にマドリッドに渡りダンサーとしての研鑚を積む。1975 年にはパリのスペイン民族舞踊団に振付師として招かれる。2003年、紫綬褒章 受章。2023年3月、スペイン・ヘレスのフェスティバルに招へいされ、新作を踊った。

佐藤浩希(さとう・ひろき)
東京都出身。1996年、河上鈴子スペイン舞踊新人賞、同年の日本フラメンコ協会新人公演にて、特別奨励賞を受賞。1998年、鍵田真由美と共に「アルテイソレラ舞踊団」を結成。2006年、Newsweek 日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。

瀬戸雅美(せと・まさみ)
一般社団法人日本フラメンコ協会 事務局長。東京外国語大学でフラメンコに出会い、学生連盟を創設。自治体や企業とフラメンコイベントを企画制作する。音楽事務所・教室「アテネ・ミュージック& アーツ」を立ち上げ、公演プロデュースやアーティストマネジメント、歌詞翻訳等に従事。

公演情報

フラメンコのちから〜The Power of Flamenco~
すべての生を讃えて

日:2023年12月11日(月)~2024年1月24日(水)
場:仙台・札幌・富山・徳島・大阪・館山
  ※各会場詳細は団体HPにて
料:自由席6,000円(税込)
HP:https://www.anif.jp/
問:一般社団法人日本フラメンコ協会
  tel.03-3383-0413(月・水・金 13:00~17:00)

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事