成井豊が脚本・演出を手がける、東野圭吾作品の3作目 韓国での大成功に触発されて再演へ。新たな顔ぶれで挑む

成井豊が脚本・演出を手がける、東野圭吾作品の3作目 韓国での大成功に触発されて再演へ。新たな顔ぶれで挑む

 東野圭吾の傑作ミステリー『仮面山荘殺人事件』がこの秋、サンシャイン劇場にて再演される。この作品は成井豊の脚本・演出で2019年に初演。その後、成井の脚本で韓国のプロダクションが上演。2ヶ月にわたるロングランを実現した作品だが、今回の再演には韓国版の大成功が影響していると成井は言う。

成井「凄く衝撃を受けました。僕の芝居が負けているとは思いませんが、それでも凄い作品に仕上げてくれました。『容疑者Xの献身』、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』も韓国版があって、それも観ましたけれど、今回はヤバイと思いました」

 対抗心に燃えての再演だからキャスティングはより重要になるだろう。熟考の末に主役に選んだのは溝口琢矢と清水由紀だった。

成井「(初演から)まだ4年しか経っていないから、キャストはそのままか、ガラッと変えるかのどちらかだと思いました。結局、畑中智行以外は全員変えました。溝口くんは先日の『かがみの孤城』での印象が凄く良くて、頼りになる奴です。清水さんは以前キャラメルボックスの芝居にも出て貰っているの
ですが、その時は僕はノータッチだったからいつかはご一緒したいと思っていました。念願が叶った感じです」

溝口「周りから成井さんは『怖い』という噂があったのですが(笑)。でも『かがみ……』の稽古を進めていく内に、思ったことをちゃんと言ってくれる方なんだとわかりました。初めての演出家さんだと、どうしても最初は探りながら進めるのですが、成井さんは僕が持ってきたものをちゃんと見てくれて判断してくれる。だからのびのびとやらせてもらえました」

清水「あの時は2本同時上演で、もう一本がやはり東野さん原作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』でした。あれから10年経って、また東野圭吾さんの作品を成井さんとやれるのは感慨深いですし、成井さんの演出は受けてみたいと思っていました」

 沢山の刺激を受けて挑むだけに、初演を越えそうな再演になる。そんな決意を成井は聞かせてくれた。

成井「韓国の舞台美術が凄く良かったものですから、今回は再検討しようと思っています。東野作品は魅力的な登場人物が重要で、それが舞台化するモチベーションになっています。この作品も溝口くんが演じる樫間高之、清水さんの森崎朋美を是非皆さんにお見せしたいです。話は面白いし、役者陣も素晴らしいメンバーですから、どうぞ劇場に足をお運びください」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))

これだけは捨てられない! 手放せない理由とあわせて教えてください。

成井 豊さん
「小学2年の時に書いた童話です。きっかけは国語の授業の『この物語の続きを書いてみよう』という課題で、それがあまりにも楽しかったので、自分でオリジナルを書いてみた。それを担任の先生に読ませたら褒めてくれたので、さらに書いた。結局、10数本書いてしまいました。今、読むとあまりにも稚拙で、苦笑するしかないんですが、これが僕の劇作家としての原点。死ぬまで捨てられません。でも、誰にも読ませませんよ!」

溝口琢矢さん
「“おしゃべり”です。周りの人間からおしゃべりくそ野郎と呼ばれているのですが、自覚しています。話し始めたら止まらないのです。つまらないことを長々話すことだけはしないように心がけているのですが、これがなかなか難しい。でも静かになるとそれはそれで心配されてしまうので、今後は人のためになるおしゃべりくそ野郎を目指していきたいと思います」

清水由紀さん
「オーディションで着た白いワンピースです。高校1年生の時にオーディションを受けたのをきっかけに芸能界に入りしたのですが、その最終審査で着たワンピースはなかなか手放せません。さすがにもう着ることはありませんが私にとっては始まりの日なのでたまにそれを見ると当時のことを思い出すし、気を引き締められます」

プロフィール

成井 豊(なるい・ゆたか)
埼玉県出身。脚本家・演出家。早稲田大学第一文学部に在校中、学生演劇サークル「てあとろ50’」で活動。卒業後、高校教師を経て1985年に演劇集団キャラメルボックスを旗揚げ。ハートウォーミングなファンタジー作品を標榜し、人気劇団の1つへと成長させる。2019年、キャラメルボックスは活動を休止するが、2021年に再開した。

溝口琢矢(みぞぐち・たくや)
東京都出身。2007年に俳優デビュー。同年12歳で『劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!』でライダーのミニ電王および小太郎を演じ話題に。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に様々な分野で活動。近年の主な作品に、映画『大河への道』、ドラマ『善人長屋』、『あいつが上手で下手が僕で』シーズン2、舞台『モダンボーイズ』、『Being at home with Claude 〜クロードと一緒に〜』、舞台『あいつが上手で下手が僕で』、『ワールドトリガーthe Stage』など。

清水由紀(しみず・ゆき)
愛知県出身。2002年、第8回全日本国民的美少女コンテストをきっかけに芸能界入り。「美少女クラブ31」のメンバーとして活躍する。大ヒットドラマ『渡る世間は鬼ばかり』に貴子役で出演。舞台作品にも進出し、キャラメルボックス作品には2013年の『彼の背中の小さな翼』に出演している。

公演情報

舞台『仮面山荘殺人事件』

日:2023年10月11日(水)~15日(日)
  ※他、大阪公演あり
場:サンシャイン劇場
料:一般8,000円
  小中高生2,000円(全席指定・税込)
HP:https://napposunited.com/kamensansou2023/
問:ナッポス・ユナイテッド
  mail:support@napposunited.com

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