金森穣演出振付のグランド・バレエ、遂に完結! オリジナルキャストを踊り、自分にしかできない役にする

 日本最古の物語文学を題材に、金森穣演出振付で贈る東京バレエ団の『かぐや姫』。2021年秋の第1幕、今年4月の第2幕初演に続き、この秋開幕する第3幕で遂に完結を迎える。

 「完結まで本当に長かったですね。最初は僕たちも金森さんも互いに探りさぐりの状態から始めて、徐々に信頼関係を築いていった感じです。金森さんのスタイルは僕らには難しいことも多く、苦戦したこともありました」と言うのは東京バレエ団ソリストの大塚卓。第1幕では村人を、第2幕からは帝を踊っている。

 「金森さんからはマンツーマンで帝の振りを渡されて、必死で覚えていきました。金森さんの中ではストーリーもあって、構成もできていると明言されているけれど、僕らはまだ全貌が見えなくて。振付の時も少しずつヒントを与えてもらえる感じで、自分で役を作らなければいけない。ただ金森さんの振付を踊っていると、自然と役に入る感覚があります」

 帝は宮廷を統べる人物で、影姫を正室に持ちながらかぐや姫に惹かれるという役どころ。従来の物語とはまた違い、本作ならではのオリジナル色も濃い。

 「帝は宮廷で一番偉い存在ではあるけれど、誰からも尊敬されてない。それは帝自身も薄々感じている。役作りとしては、威厳ある表の顔に加え、その裏にある孤独な顔を意識して表現しています。金森さんも満足してくれたのか、2幕終演後“良かったよ”と言ってもらいました」

 東京バレエ団に入団して4年。古典全幕の王子も務め、着実にキャリアを積み重ねてきた。最近気づいたことがあるという。

 「昔はまずお客様のために踊るんだという意識があったけど、今はまず自分が満足できる踊りを踊ろうと考えるようになりました。そうすればきっとお客様にも伝わるからと。そのためにはストイックに自分を磨かなければいけない。役に真摯に向き合い、一番いい状態をお客様にお見せする、それが今の目標です」

 いよいよ世界初演を迎える第3幕。オリジナルキャストを踊り、バレエ団の歴史に名を残す。

 「今までは歴代のダンサーが受け継いできた役をもらい、彼らを超えようと思いながら踊ってきました。でも今回は僕が帝という役を作り、継承していかなければいけない。あの人の帝はすごかった、ああはできないと言われたい。あの人の帝は超えられないと言われるような役にしたい。自分にしかできない役にする、そのくらいの勢いで臨まなければという気持ちでいます」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)

勝負の日に身に着ける、勝負色はありますか?

「青色。普段は黒や白を着ることが多く、色物で唯一着るのが青です。特に意識して着ているという感じではないですが、青は気持ちが落ち着くので好きです」

プロフィール

大塚 卓(おおつか・すぐる)
5歳よりバレエをはじめる。第43回ローザンヌ国際バレエコンクールでセミファイナリストへ進出を果たした他、受賞歴多数。2015年に奨学金を得てハンブルク・バレエ学校へ留学した。同校を卒業後、クイーンズランド・バレエ団に入団。『ラ・バヤデール』(ブロンズ像)、『シンデレラ』(ジェスター)、『ロミオとジュリエット』(マンダリン)ほか、リアム・スカーレット、カルロス・アコスタ、イリ・キリアンらの作品に出演する。2020年4月に東京バレエ団へセカンドソリストとして移籍入団。2021年、ソリストに昇進。

公演情報

東京バレエ団 かぐや姫 全3幕 世界初演

日:2023年10月20日(金)~22日(日) 場:東京文化会館 大ホール ※他、新潟公演あり
料:S席14,000円 A席12,000円 B席9,000円
  ※他、各種席種あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://www.nbs.or.jp/
問:NBSチケットセンター tel.03-3791-8888(平日10:00~16:00/土日祝休)

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