ロシア文学の名作に、歌舞伎界の人気若手俳優・中村壱太郎が挑む! 「朗読劇だからこそ 声 で勝負する舞台を目指したい」

ロシア文学の名作に、歌舞伎界の人気若手俳優・中村壱太郎が挑む! 「朗読劇だからこそ 声 で勝負する舞台を目指したい」

 ロシアの文豪・ツルゲーネフの代表作の1つ『初恋』。大正時代に我が国に紹介されて以降、数多くの翻訳が発表されてきた作品を朗読劇として上演する。主人公となるウラジミールにアスリートから俳優に転身し、現在数多くの舞台やドラマに出演している藤本隆宏。そしてウラジミールが恋に落ちる公爵令嬢・ジナイーダを勤めるのが、人気の女方として知られる歌舞伎俳優・中村壱太郎だ。

 「歌舞伎の舞台公演の合間ではなかなか新しい挑戦ができる機会がないので、今回出演が叶ったことは嬉しいです。さらにリーディング公演ということに興味があり、声で伝えることが見どころになると思います。歌舞伎でも“ 一声(いちこえ)、二顔(にかお) 、三姿(さんすがた)”と言われますように“声”から入りますから、声で勝負したいという気持ちがあり、お話を受けました。そして普段から女方の自分が、このジナイーダをどう切り取って演じるかが自分の抱負であり、目標でもあります」

 このキャスティングだけでもユニークだが、さらに翻訳と上演台本を戯曲翻訳者グループ「TRANSLATION MATTERS」の代表であり、翻訳の言葉で演劇を変革している木内宏昌が書き下ろす。そして、演出をオペラの世界に日本の古典芸能の要素を取り入れ高い評価を得ている彌勒忠志が担当する。

 「演出の彌勒さんとは先日お話ししまして、構成や衣裳の話など色々と伺いました。朗読劇だと最近は少し演技が入る場合もありますが、今回は椅子に座ってお客様に真っ直ぐ向かってのリーディングを考えていらっしゃるようでした。そこは私が考える、声で勝負することに通じますので、親和性を感じています。彌勒さんはオペラの土台の中で色々なことをされていらっしゃるので、お話を伺っていても構成が明確だと思いました」

 幼い頃から芸を磨き、役者だけでなく日本舞踊や長唄にも造詣のある壱太郎。一方で現代劇への客演はあるといってもまだ数少ない。今回相手役となる藤本をはじめ、共演陣は初顔合わせばかりだという。稽古を通してどのような作品になるか楽しみだ。

 さて、18世紀に書かれた恋物語。それをただなぞるのではなく、現代らしい手法で組み立て直す。本作はどうやらそんな作品になりそうだ。

 「女方として僕が演じるジナイーダを観ていただきたいです。そしてこのカンパニーが掲げる到達点である、純粋でまっすぐな朗読劇、“声”で楽しんでいただく舞台になるといいですね」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア) ヘアメイク:大宝みゆき)

勝負の日に身に着ける、勝負色はありますか?

中村壱太郎さん
「勝負の(人前に出る晴れの日、大事な打ち合わせの日など)には、白いシャツをきていることが多いかもしれません。人と人とのご縁を大切に、真っ白な心で向かい合うためという思いがあるような気がします。好きな色が深い緑色なので、自身のテーマカラーにすることもあります!」

プロフィール

中村壱太郎(なかむら・かずたろう)
東京都出身。中村鴈治郎の長男。祖父は四世・坂田藤十郎。母は日本舞踊の吾妻徳穂と伝統芸能を継承する家系に生まれ育つ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。1991年11月、京都・南座で初お目見得。1995年1月、大阪・中座『嫗山姥』の一子公時で初代中村壱太郎を名のり初舞台を踏み、その後、女方を中心に歌舞伎の舞台に精進して現在に至る。2014年に日本舞踊の吾妻流七代目家元吾妻徳陽を襲名。歌舞伎以外の活動として野田秀樹作、オン・ケンセン演出の『三代目、りちゃあど』への出演や、新海誠監督作品 映画『君の名は。』で巫女の奉納舞を創作、2021年に舞台『夜は短し歩けよ乙女』への出演などがある。

公演情報

リーディング『First Love ~ツルゲーネフの「初恋」~』

日:2023年8月28日(月)~30日(水)
場:あうるすぽっと
料:7,700円(全席指定・税込)
HP:https://artistjapan.co.jp/
問:アーティストジャパン tel.03-6820-3500(平日11:00~18:00)

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