水夏希と浅田舞の愛憎劇にも注目! 「私の人生でこんなに踊ることは二度とない」本場のオルケスタと綴るアルゼンチンタンゴ

水夏希と浅田舞の愛憎劇にも注目! 「私の人生でこんなに踊ることは二度とない」本場のオルケスタと綴るアルゼンチンタンゴ

 元宝塚雪組男役トップスターの水夏希が、自身の芸能生活30周年を記念して『GRAN TANGO2023』を開催する。
 第1部は水夏希の構成によるブエノスアイレスタンゴレビュー。とあるナイトクラブを舞台に、水夏希と浅田舞が1人の男を取り合う愛憎劇を繰り広げる。第2部では今なお愛されるタンゴの魅力を、歌・ダンス、そしてフェデリコ・ペレイロキンテートの洗練された演奏で綴る。スペシャルゲストは現代最高の歌手、ギジェルモ・フェルナンデス。また、壮一帆と彩吹真央も本場のオルケスタの熱い演奏とともにタンゴを歌い上げる。
 10年近くタンゴに熱中し「今回は全精力をもってタンゴに取り組める最後の機会」と意気込む水と、昨年からタンゴにのめり込み、1月に初舞台を踏んだばかりの浅田。ふたりに本作の見どころやアルゼンチンタンゴの魅力について伺った。


芸能生活30周年。今の自分の全力でタンゴを

―――――本作の見どころは?

水「自分で言うのもなんですが、見どころは本当に満載なんです! 私の芸能生活30周年を絡めたコンサートですので、本来なら30年間を振り返って宝塚の曲をやるところなんですけど……。40周年が来たとき、こんなに沢山は踊れないんじゃないかなって思って。だから、ここが自分の人生のなかで猛烈にタンゴを踊る最後の機会かなと思っています。そこに舞さんという華やかな方が加わってくださって、よりスケールが大きい世界観になったなと感じています」

自分の人生を隠さなくていい――それぞれのタンゴ沼

―――――浅田さんも1月にタンゴの初舞台を踏んでからというもの、4月にアルゼンチン留学、7月に『ラミーロ・ガジョ・グランオルケスタ特別来日公演』出演など、タンゴにのめり込んでいる印象です。

水「ほんとすごいよね!」

浅田「もともと、高校生の時にアルゼンチンタンゴの音楽でフィギュアスケートをしたのがタンゴとの初めての出会いなんです。まさか自分でもこんなにすごい勢いで夢中になるとは思いませんでしたが、素敵なご縁でつながっているなと感じています。実際にアルゼンチンに行ってみたことで、タンゴって本当にアルゼンチンの方々にとっては日常なんだっていう発見もあって、そこでまたタンゴ熱がぐっと上がりましたね。7月の公演が終わったらまたアルゼンチンに行ってきます。まさか24時間かけて行く国に半年かけて2回も行くとは思いませんでしたが(笑)、『Gran Tango』の稽古に向けて良いエネルギーをチャージできたらいいなと思います!」

――――おふたりはタンゴのどんなところに魅力を感じているのでしょうか。

水「もともと宝塚とタンゴは親和性がありますし、日本の郷愁に共通するものもあるので、下級生のころから好きなジャンルではありました。退団後にアルゼンチンタンゴの女性パートを踊るようになって、自分が今までやってきたダンスのなかで一番取り憑かれる感じがしたというか。それからは『タンゴ風のダンス』から『アルゼンチンタンゴ』という、ちゃんとしたパートナーと踊るダンスの奥深さにもがき続けています。タンゴ沼に足をとられている状態ですね(笑)」

浅田「私はフィギュアスケートではソロ競技だったので、タンゴの音楽をひとりで滑ったことしかなかったんです。でも、こうして氷の上から陸に移動して、男性とふたりでアルゼンチンタンゴを踊る練習をしたときの衝撃はすごかったですね。社交ダンスとは組み方も歩き方も全て違うんですけど、まず抱擁の練習からスタートしたんです。それが私、恥ずかしくてできなくて」

水「社交ダンスも組むんじゃない?」

浅田「でも、タンゴはもっと近いんですよ。『おでことおでこをくっつけて歩くってどういうこと?』って、恥ずかしがっている時間もなくて。今までフィギュアスケートや社交ダンスをやっているときは、きれいに踊らないといけないとか、辛くても元気に見せないといけないとか、自分の感情を無理にコントロールして踊ることが多かったんですけど、タンゴと出会ってからは自分の感情に対して嘘は付かなくていいんだということを感じました。辛かったことも苦しかったことも、自分の人生を隠さなくていいっていうことにすごく惹かれた。陽だけではなく陰の部分も出せるから、踊っていても心地がいいんですよ。自分はまだまだ始めたばっかりですけど、この先もどっぷりはまっていくんだろうなと思っています」

本場アルゼンチンでも実現不可能な豪華オルケスタ

――――本作は、芝居仕立てのレビューとコンサートの2部構成。第1部では、水さんと浅田さんは1人の男性を取り合う恋のライバルを演じるとか。

浅田「どんな物語になるのかちらっと伺いましたが、今は不安でしかないです(笑)。こういったことをするのが人生で初めてなので、『ちょっと待って、この私が!?』ってなりました」

水「そういう意味では、誰も知らない浅田舞さんが見られます」

浅田「そうですね、私も知らない私です」

――――アルゼンチンの国民的スターと名高いギジェルモ・フェルナンデスさんが来日されるのも、大きな見どころですね。

水「彼はCDのレコーディングや『Gran Tango 2020』のオープニングで声のみでしたが台詞を言っていただきました。今回は素晴らしい歌を披露してくれます。そしてフェデリコ・ペレイロ キンテートの皆さんも、アルゼンチンでは各々が自分のオルケスタを持ってらっしゃる方たちなので、このメンバーが集まって演奏することはブエノスアイレスではありえません。本場のオルケスタが演奏するタンゴは、リズムが全然違うんですよ。ワン、ツー、スリー、フォーのインテンポじゃないから、空気が伸びたり、縮んだり、重くなったり、軽くなったり。そのバンドネオンやヴァイオリンのタンゴ独特のリズムというか、グルーブに体が乗っていくのが最高に楽しいんです。タンゴを聴きにいく機会って少ないと思うのですが、来てくださった方には100パーセント楽しんでいただく自信があります」

――――本作は文化庁子供芸術文化支援事業の対象公演ということで、6歳から18歳以下の子どもは無料で鑑賞できます。初めてタンゴに触れる機会にもうってつけですね。

水「ぜひお子さんを連れてきていただいて、先入観なく音を浴びてほしいです。バンドネオンやヴァイオリンの独特の旋律が身体に響いてくる、体験型の鑑賞になると思います。前回と前々回の『Gran Tango』は4人で演奏するカルテットでしたが、今回はさらにチェロが加わって、よりダイナミクスの幅が広がっています。お1人ずつのソロパートも本当に素晴らしいんです」

――――ありがとうございました。最後に、ファンやカンフェティの読者の方に向けて一言お願いします。

水「私の人生でこんなに踊る事はもう二度とないという覚悟でいるので、ぜひ見逃さないでいただきたいです。踊りやお芝居もありますけど、この音楽は聞き逃すべからずと心から思うので、騙されたと思って来てください。絶対に損はさせませんと確信を持って言えます」

浅田「水さん含め素晴らしいメンバーの方々と一緒にステージに立てるという喜びを胸に、皆さんの波と風に置いていかれないように、私自身楽しんで素晴らしい物語とタンゴをお届けできるよう精一杯頑張りたいと思っています。11月にステージでお会いできるのを楽しみにしています!」

(取材・文:いつか床子 撮影:HIRO KIMURA)

 

勝負の日に身に着ける、勝負色はありますか?

水 夏希さん
「勝負カラーは赤ですかね。男役の時はやはり黒、真っ黒が勝負服というか正装だと思っていたので、退団の記者発表の時も黒を着ましたが、今は情熱の赤、やる気の赤ですかね。闘牛じゃないですけど、テンションが上がるというか高揚する色なんでしょうね。特に真っ赤な口紅とかは気合が入ります」

浅田 舞さん
「今は特に決まっている色はないのですが、子どもの頃フィギュアスケートの大会に出る時に、母が衣装の裏側にお守りとして金色のスパンコールを1つ縫い付けてくれていました。大切な思い出です。アルゼンチンタンゴも衣装を制作しているので、これからは自分で縫い付けてみてもいいなぁと思いました」

プロフィール

水 夏希(みず・なつき)
千葉県出身。元宝塚雪組男役トップスター。1993年宝塚歌劇団入団、3年目にして新人公演の主役に抜擢される。『ベルサイユのばら』ではオスカル・アンドレ等主要4役を演じ、2007年に中日劇場での『星影の人』沖田総司役にてプレトップお披露目後、『エリザベート』トート役で大劇場初主演。宝塚初の天覧公演の主役も務めた。2010年の退団後は、ミュージカル・ストレートプレイ・ダンス等さまざまなジャンルの舞台で活動中。2014年の『アルジェンタンゴ』をきっかけにタンゴに魅せられ、多数のステージに立つ。2020年には宝塚退団10周年企画として『NATSUKI MIZU EN BUENOS AIRES』を発売。フェデリコ・ペレイロ率いるカルテットとブエノスアイレスで収録を行った。

浅田 舞(あさだ・まい)
愛知県出身。7歳からスケートを始め、女子フィギュアスケート選手として活躍。現役引退後はスポーツキャスターやタレントとしても幅広く活動を展開。2017年には初の本格的舞台女優に挑戦している。2021年、テレビ番組の企画をきっかけに社交ダンスに挑戦し、2022年三笠宮杯全日本ダンススポーツ選手権(全日本シニアⅠ)では準優勝。以前試合に向かう行き帰りにアストル・ピアソラの曲を聴いていたというエピソードを知ったプロデューサーの誘いでタンゴを始め、今年1月にはタンゴ公演『Alma de Tango タンゴの魂 2023』にゲスト出演。4月にはアルゼンチンへ留学を果たした。7月には『ラミーロ・ガジョ・グランオルケスタ特別来日公演』にダンサーとして出演。

公演情報

水夏希 芸能生活30周年記念公演 GRAN TANGO 2023

日:2023年11月3日(金・祝)~5日(日)
場:イイノホール
料:12,000円(全席指定・税込)
HP:https://crescmusic.jp/
問:アルマムジカ tel.070-1260-6333(平日11:00〜17:00)

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