元女子プロレスラーでありながら、脚本・演出家でもあるMARUが主宰する劇団水色革命。役者だけでなく、レスラーもキャストに加えたユニークな舞台を打ち出し、飛切り個性的な劇団として知られている。そんな彼女たちが、この度結成10周年を記念した公演を上演する。
現代社会で年々ボリュームが大きくなっている「介護」をテーマした作品だが、客演にジャガー横田や現役レスラーの世羅りさを招いて、個性的なキャストによる作品が期待できそうだ。主演の岩井杏加を含めた4人に話を聞いた。
―――劇団水色革命10周年、ですね。
MARU「この10年、いろいろありまくりました。どちらかというと辛い、しんどいことの方が多かった気がしますが、それでも公演をやってお客様から感想を貰い、好評だと、やはり次もやりたいとなっちゃうんです」
―――しんどいこと、とは？
MARU「劇団員が言うことを聞かない（笑）……まあそれは冗談として、公演を打つのは大変なことだし、普通の劇団ではないので、周りからは色々いわれたりしましたしね。聞かないことにしましたけれど」
―――そんな節目の作品は新作で、「介護」がテーマだそうですね。
MARU「そうです。節目の公演ですが、あまり再演はしたくないタイプなので、新作を書きます。
テーマについては、現在自分が実際に介護をしているんですが、尊敬する演出家さんから、自分が経験したことを書く方が強いからやってみるべき、と言われたことをきっかけに書くことにしました。これからは『介護』が当たり前の時代が来るので、それを明るく捉えていく作品にしたいです」
―――ジャガー横田さんは水色革命の舞台に何度か出ていますが、師匠から見てMARUさんの10年はどんなものだったと思われますか。
ジャガー「リングではともかく、舞台ではMARUが師匠ですよ。舞台に参加して彼女の頑張りとセンスは見てますが、舞台は生モノで、プロレスにつながることを教えられました。それにいつも役柄や台詞について気を遣ってくれるんです」
MARU「ジャガーさんの部分はあて書きですし、ジャガーさんだけピンマイクをつけているんです。次回公演では誰かに突っ込んで貰おうかな（笑）」
ジャガー「舞台向きでは無いんだよ、私は」
MARU「でもオーラが違いますよ」
―――世羅さんは立ち上げメンバーですが、同じく10年見続けての感想を聞かせてください。
世羅「旗揚げ当時は私も何が何だか分からなくて、とにかくついていこうと必死でした。でも本当に周りから色々と言われていたんです。それに対して皆で会議を重ねていく内に認められてきた感じですね。そこで助けてもらったMARUの力は、大きかったです。
3年前に水色革命を抜けたのも、もっと違うことをやりたかったからで、引き続きMARUと水色革命のことは見ていましたから、存続しているのは嬉しいし、応援していきたいと思います」
―――そして今回主役の岩井さん。現役劇団員としての言葉を聞かせてください。
岩井「もう6年になりますが、自分は舞台を始めてすぐに水色に入って、今までずっとMARUさんや世羅さんが助けてくださりました。MARUさんをはじめ、人柄がいい人ばかりですから」
MARU「いい人しか選ばないから……（笑）」
―――タイトルなどからの想像ですが、いつもの水色革命とはまた少し色が違いそうですね。
MARU「いつもならアクションやダンス歌を盛り込むのですが、今回、アクションは無いでしょうね。芝居で勝負したいと思っているんです。そしてMARU作品は感情のジェットコースターだと言われますが、それも抑え目になりそうです。まあ、そういいながら急にジャガーさんが踊っちゃうかも……」
ジャガー「格闘シーンにしてくれよ」
世羅「誰が相手するんですか（笑）」
―――ところで世羅さんは久々の舞台ですね。今なにか不安はありますか。
世羅「ぶっちゃけセリフを覚えられるかどうかが（笑）。どうやって覚えていたか分からなくなってます」
―――ジャガーさんは？
ジャガー「長台詞がなかったらいいなと」
MARU「それは最初から言われているんですよ。出番は多いです」
ジャガー「やだなあ（笑）」
―――岩井さんは現役座員だから、余裕ですよね。
岩井「でも主演は久々なんです。だからセリフの量が……。皆さんに囲まれるのも緊張します」
MARU「皆、問題は台詞だねえ（笑）。岩井さんは取材前に震えてたもの」
ジャガー「なるようにしかならないから、堂々とやればいいんだよ」
―――では皆さんセリフの心配は乗り越えての、決意表明をお願いします。
世羅「今の自分を応援してくださっている皆さんは、プロミネンス結成以降の人が多くて私の演技を観たことがない人ばかりの気がするので、私の本気の演技を見せつけたいですね」
ジャガー「脚本を読んでMARUが伝えたいことを探り、それを伝える1人になりたいと思います」
岩井「1年振りの水色革命で主役に選んで貰ったので、MARUさんと一緒に最後まで舞台を務めようと思います。全公演観に来てください！」
MARU「10周年なので、今まで一番面白い作品にしたいと思います。全公演来て下さい（笑）!!」
（取材・文＆撮影：渡部晋也）
プロフィール
ジャガー横田（じゃがー・よこた）
東京都出身。中学卒業後にオーディションを経て、全日本女子プロレスに入団。1977年にリングデビューする。迫力満点のファイトで人気を博し、1986年に一旦引退。その後は後進の指導やプロレス番組の解説などで活躍する。1995年、全日本女子プロレスに復帰。さらに吉本女子プロレスJd’にも選手兼コーチとして参加。その他いくつもの団体に参戦している。またバラエティ番組でも活躍し、医師である夫・木下博勝氏とのおしどり夫婦ぶりで人気を高める。水色革命の作品には『リングリングリング』ほか、数作品に参加している。
世羅りさ（せら・りさ）
広島県出身。2012年にMARUを主宰とする劇団水色革命の旗揚げに参加、初舞台を踏む。さらに11月にはプロレスラーとしてデビュー。以降、舞台女優とレスラーを兼業して活躍。レスラーとしては2016年にICEx∞王座決定トーナメントで優勝し、新王者となり1年間防衛。舞台人としては、水色革命第19回公演『マイバラード』で脚本・演出も担当する。その後、劇団水色革命を脱退。さらに2021年いっぱいで、所属するプロレス団体アイスリボンからも脱退。新たに仲間達とプロミネンスを結成して活動を継続している。
岩井杏加（いわい・きょうか）
千葉県出身。コルバタ第10回公演『A.D～automatic dream』から舞台に出演し、さらに劇団水色革命に加入して作品に出演する。2020年の舞台『リング・リング・リング』では長与千種役を演じ、実際のプロレス技を取り入れた女優たちによるミックスメディア作品『アクトリング』にも出演。2022年には、女優によるプロレスをモチーフにしたエンターテインメント団体・アクトレスガールズでもデビューした。
MARU（まる）
埼玉県出身。劇団東俳で活動後、10代で多くの舞台とVシネマに出演。俳優としての活動と並行して2000年に吉本女子プロレスJd’に入門。プロレスラーとしてのキャリアを積み、2005年に引退。舞台での活躍に専念し、2011年に若手の底上げを目標にした劇団水色革命を旗揚げ。作・演出も担当し、今年10周年記念公演を開催する。女優によるプロレスをモチーフにしたエンターテインメント団体・アクトレスガールズでも活動中。
公演情報
劇団水色革命第25回《10周年記念》公演
『一歩一歩』
料：指定席 S席［特典付］7,500円
A席［特典付］6,000円
自由席4,800円（税込）
HP：https://twitter.com/kakumei_mizuiro
問：劇団水色革命
mail：kakumei.mizuiro@gmail.com