そのゲートを通り抜けたら……生死の狭間にある空港での物語 学生の頃から慣れ親しんだ吉祥寺の街で、1つ目の集大成を!

そのゲートを通り抜けたら……生死の狭間にある空港での物語 学生の頃から慣れ親しんだ吉祥寺の街で、1つ目の集大成を!

 成蹊大学の学生劇団、劇団円想者のメンバーを中心に2019年に旗揚げした吉祥寺GORILLA。学生時代から作・演出を担当してきた平井隆也の作品を上演している彼らだが、旗揚げ翌年にはコロナ禍の直撃で思うように活動ができなかったという。
 現在は旗揚げメンバーに加えて、ちょっと驚かされる様々な経歴や特色を持ったメンバーが集まっている彼らだが、いよいよ本拠地でもある吉祥寺でこれまでにない大きさとなる吉祥寺シアターで新作を上演する。
 それぞれが熱い思いを寄せるこの劇場隣のカフェにて、旗揚げメンバーである役者の平井泰成、声楽を学び、演劇に拘らない活動を展開する日下麻彩、高校演劇から演劇作品に携わってきた長友美聡の3人に新作についてや、作・演出の平井隆也に関して話を聞いた。

―――新作『お待たせしました』は「現世とあの世をつなぐ空港」が出てくる物語とのことですが。

平井「作・演出の平井隆也が少し前から空港の話をしたい、手荷物検査場を抜けると行ける“向こう”と“こっち”の世界を上手く使った話を書きたいと話していました。それと並行して、3作目くらいから人の生死にまつわる話にも興味があるようでした」

―――皆さんはどんな設定で出てくるんですか。

平井「僕はその狭間のような“空港”にやってきて、その先をどうするかを考えて、色々な行先を訪れます。そこで色々な出会いや物語がありまた戻ってくるんです」

日下・長友「その行く先に私達はいるというわけです」

―――結構大所帯ですよね。

平井「メインキャストが13人でそこにゲストが加わります。以前小さい劇場で20人出したことがありましたが、あまりにも多すぎるとコントロールできないことを知りまして」

―――劇団の、そして作・演出の平井作品の特色を教えてください。
 まずは平井……ってややこしいですね(笑)。役者で旗揚げメンバーの平井泰成さんからお願いします。

平井「隆也とは大学1年で演劇部に入ったときが出会いです。『君も平井なんだ』が第一声でした(笑)。旗揚げから一貫して、人間のキズや弱い部分をあえて前に出して、それを見せつけながら、共感を呼ぶ作風だと想います。大学時代から比べると、ギャグシーンなどは減っていますけれど」

―――長友さん、日下さんはそこに後から参加されたんですね。

日下「私は隆也君がスタッフで参加している作品に参加して出会いました。その時の彼は舞台監督だったので、作り手としては何を創るのか興味もあったし、私は当時ダンスと演劇をかけ合わせたような言葉のない作品が多くて、少しずつ台詞もある演劇に向かっていた時期でもありましたから。後は彼の人柄ですね、彼は人の話を聞くタイプなので、彼と一緒に創ったら面白そうだなと思って」

長友「私は劇団クロムモリブデンのワークショップに参加して、隆也君とはその飲み会で知り合ったんです。その後に吉祥寺GORILLAの公演予定を見て、私も参加したいと申し出ました。
 動機は凄く不純で……私はクロムの岡野さんが好きなもので、ここでなら共演できるかもしれないと思って(笑)。でも活動している内に隆也君の周りには凄く素敵な仲間が集まると思い、その中に自分も居られるのは良いなとも思うようになりましたね」

平井「演出面でも役者の持っているものや考えを自分とすり合わせていい方向へ持って行く。良さを活かそうという姿勢ですね。稽古場でも否定をしないんです。僕達も非常に居心地はいいです」

―――記録を拝見すると、どうやら今回が1番大きな劇場になりそうですが、挑むにあたっての不安や期待はありますか?

日下「1番大きいですね。客席数もいままでの倍くらい。不安もありますが私は以前この舞台に立ったことはあり、ある程度雰囲気はわかっています。ただ、吉祥寺GORILLAでどう立ち向かうかはこれからです。先日舞台美術の打合せがあったのですが、これはいけるぞと思いましたね」

長友「高校演劇から関わっているのですが、ずっとここに立ちたかった気持ちを持ってました。だから凄く嬉しいんです。そして今回集まったキャストの強さがあり、お互いに信頼できるメンバーでもあるので、きっと大丈夫だという気になっています」

平井「大学時代、この劇場の前を通って学校に通いましたし、すぐそばの居酒屋で劇団名も決まったこともあって、当時からいつかはここでやりたいねと夢を語っていた場所です。大学時代は学校のホールで上演するので、結構大きな劇場なんです。だからその方が隆也の作品は活きる気がしていました。それだけに吉祥寺シアターの規模は作品に合っていると思います」

―――ではあらためて観客の皆さんへのメッセージをお願いします。

長友「私にとって夢の舞台に立てるので、沢山の皆さんに観て欲しいですね。劇団員になって2年目。この大舞台に誘ってもらったことは感謝していますし、だからこそ貢献したいですね。そんな気持ちがお客さんに伝わって、さらに作品に反映されればいいですね」

日下「稽古の様子などをこれからSNSでお伝えしていくと思いますが、吉祥寺GORILLAの作品創りは時間がかかるし紆余曲折するので、見守っていて不安になるかもしれません。でも確実に大事なものを見落とさないように創り上げます。それに若い人にも観てもらいたくて、学生向けチケットはとてもお得になっています(笑)。大人も子供も友達も、皆できてください(笑)」

平井「僕達にとって吉祥寺シアターはひとつのゴールでもあります。だから第1章の終わり、集大成をオールスターでお送りします。そしてここは終着点であり出発点ですから、今まで知らなかった人にも是非観て欲しいですね」

―――最後になりますが、このユニークな劇団名の由来は?

平井「さっきも話したとおり、近所の居酒屋で決まったんですが、まず学校の関係で拠点が吉祥寺だったことと、あるとき稽古のために公民館を借りに行った隆也の後ろ姿が、ゴリラの剥製に凄くよく似ている気がしたんです。それで仲間内では『ゴリラの剥製』が流行りまして(笑)。地名に動物の名前を合わせるのはいいんじゃないかと。阿佐ヶ谷スパイダースみたいにね。それで吉祥寺GORILLAとなりました」

―――ありがとうございました。

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

平井泰成(ひらい・やすなり)
千葉県出身。成蹊大学文学部英米文学科中退。劇団円想者出身。大学時代に平井隆也と出会い、演出作品全てに出演している。名字は同じだが血縁関係はない。さらに劇団と並行して2021年に旗揚げした「24/7lavo」という劇団にも所属している。

日下麻彩(くさか・まあや)
埼玉県出身。東京芸術大学声楽科卒業。役者・シンガー・ダンサー・歌唱指導者として、広く舞台芸術に携わっている。日本各地の民謡を研究し歌い歩く一座・常民一座ビッキンダーズの座員。また小池博史ブリッジプロジェクトやファミリーミュージカル、Eテレ番組への出演など実に活動範囲は広い。ただ「衝動的に土臭く」というテーマで本人の中ではまとまっている。

長友美聡(ながとも・みさと)
宮崎県出身。尾道大学芸術文化学部日本文学科卒。高校から演劇を始め九州大会へ進出。その後大学の演劇部である劇団あばら屋を経て上京後はフリーで活動する。2014年以後、:Aqua mode planning:の看板女優として作風を問わず様々な舞台に出演し、吉祥寺GORILLA第2回公演『グロサリー』で初参加。その後、劇団員となる。高校演劇部のコーチも務め、脚本や演出を手がけている。

公演情報

吉祥寺GORILLA 第7回公演
『お待たせしました』

日:2023年6月2日(金)~4日(日)
場:吉祥寺シアター
料:一般4,500円
  U-25[25歳以下]2,500円
  高校生以下1,000円
  ※U-25・高校生は要年齢確認
  (全席指定・税込)
HP:https://kichijojigorilla.wixsite.com/kichijojigorilla
問:吉祥寺GORILLA
  mail:kichijojigorilla@gmail.com

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