10代から舞台で活躍し、20代でプロレスラーとしてのキャリアを重ね、現在は劇団水色革命の主宰として、作・演出を手がけるMARU。数えてみればその芸歴は30年を迎えるという。そんな節目に劇団水色革命が贈り出すのは、遊郭、岡場所と呼ばれる場所で繰り広げられる不思議な世界の物語。劇団にとって初めての時代物となる本作に、現役プロレスラーでもある松井珠紗。現役高校生ながら小劇場で活躍している西内琢馬。その他MARUの人望に惹かれて集まったキャストが挑む。いつもの溢れる元気だけでなく、しなやかさや美しさも強調した新機軸が発動する。主宰のMARU、主演の松井、西内。そして客演の篠原功に話を聞いた。
―――この公演、劇団主宰のMARUさんの30周年ということですが……、“生誕”30周年じゃないですよね。
MARU「(笑)いいえ“芸歴”です」
―――まだ若いのにそれだけの芸歴があることに驚いたのですが。
MARU「子どもの頃から劇団でお芝居してましたから」
―――そんな節目を記念した公演は時代物のようですが、どんなきっかけでこの内容にされたんでしょう。
MARU「今回は遊郭やそこに暮らす女郎たちが出てくる物語ですが、劇団として今まで時代物を手がけたことがありませんでした。いつかは挑戦しようと思っていたのですが、今回節目の公演ということで、それをきっかけにやってみようと思いまして。脚本を書くためにそういった世界が出てくる映画……例えば土屋アンナさん主演の『さくらん』とか……をたくさん観ました。うちの劇団は(西内)琢馬以外みんな女性なので、彼女たちの美しさを出したいとも思いました。そこも今まであまりやってこなかった要素ですから。
―――では女優陣の美しさも見どころですね
MARU「ええ、今回は美しい女性、がテーマです。ただの“お色気”ではなく、日本女性の立ち居振る舞いなど、芸術的な美しさを見せたいですね。それには自分の美意識だけでなく、出演してくださる先輩方の意見にも助けられてます」
―――普段の水色革命からは異色の作品ですが、主演される松井さんはどんな印象ですか。
松井「私も今まで和物のお芝居をしたことがないので、自分としても挑戦ですね。同時にすごく楽しみでもあります」
MARU「もちろん主演が現役のレスラーですからプロレスの要素も入ります。それにダンスや歌、殺陣も。そこはうちの劇団だからこそでしょう。そんな“動”と“静”のギャップも魅力になると思います」
―――さて、主役の松井さんと恋仲になって、駆け落ちをするのが西内さんですね。
西内「えぇ、用心棒の光国を演じます。松井さん演じる国蝶の駆け落ち相手です。アンサンブルで和物の芝居に出たことはありますけれど、メインで時代物に取り組むのは初めてです。でもアクションがいっぱいありそうなので楽しみですね。まあ外見の若さはお芝居でフォローできればと思います」
―――そして客演される篠原さん。今までストレートプレイだけでなく、ミュージカルや2.5次元など様々な作品で活躍されているベテランですが、MARUさんとの接点はどちらでしょう。
篠原「2019年のコルバタ(MARUが代表を務める別の劇団)の公演でMARUさんと共演したのですが、水色革命の作品はまだ知らないんです。今回はうちの劇団(演劇集団SINK)から2名参加していますが、それ以外はほとんど初対面の方ですね。普段自分が作・演出をしているうちの劇団の作品は、シリアスで社会派のストレートプレイなので、普段からするとだいぶ違った現場になりそうですね」
―――MARUさんはなぜ篠原さんを呼ぼうと思ったんですか。
MARU「役者としても人間的にも大好きなんです。共演したときにずっと一緒だったんですが、いつかは絶対に水色革命にも出てほしいと思いました」
―――劇中で使われる音楽もオリジナルですよね。
MARU「出演もされますが、シンガーソングライターでもある紫都七さんが、作詞・作曲から音楽制作まで全部やってくれています。その他ダンスやアクションなど盛りだくさんで、水色革命らしい舞台になりますよ」
―――そんな舞台を控えて、皆さんからのメッセージを頂きたいのですが。
松井「今年はあまり舞台に出ることができなかったんです。それだけにお客さんも松井の舞台を観たい!と思っていらっしゃるでしょう(笑)。今回は主演ですし、力を入れて私のお客さんで全席埋めるような気持ちで取りかかります」
西内「最近はアクションを活かす舞台が無かったので、今回の作品でそういった姿をみなさんに見せられるのは嬉しいです。それにとても大人っぽい役ですから、みなさんに格好いい西内を観せたいです」
篠原「舞台を実現できることが当たり前ではないと思い知らされた昨今ですが、そんな中でもMARUちゃんの30周年を盛大にお祝いしたい。そんな気持ちです。アクションその他、今まで役者に必要な部分は身につけてきたつもりですが、最近はガタもきているので、お手柔らかにお願いしたいです(笑)」
MARU「30周年という節目は1度しかないわけですが、振り返ってみると、とても濃い経験をさせてもらえました。いろいろと苦労はしたけれど、それ以上に恵まれ、幸せな30年でした。特に20歳超えてプロレレスを始めてからは人脈も増えたし、引退して劇団を始めてからもいろいろな人に繋がって。苦労以上に周囲の方に支えられてきました。そんな私と、劇団の集大成にしたいです」
(取材・文&撮影:渡部晋也)
プロフィール
MARU(まる)
埼玉県出身。劇団東俳で活動後に10代で多くの舞台とVシネマに出演。俳優としての活動と並行して2000年に吉本女子プロレスJd’に入門。プロレスラーとしてのキャリアを積み、2005年に引退。舞台での活躍に専念し、2011年に若手の底上げを目標にした劇団水色革命を旗揚げ。作・演出も担当する。今年で芸歴30周年を迎えた。
松井珠紗(まつい・みさ)
神奈川県出身。劇団東俳からフリーランスを経て2018年、劇団水色革命に参加。2019年『離婚しないで』以降、主演を務めている。水色革命の他、コルバタなどの舞台に出演。さらにActwres girl’Zに所属する女子プロレスラーとして、「水色全力娘」のキャッチコピーでリングでも活躍している。
西内琢馬(にしうち・たくま)
千葉県出身。2013年、母親が見つけてきたオーディションを受けて9歳で初舞台。その後、2016年までに10作品に出演。中学1年生で水色革命に参加。現役高校生の小劇場俳優として、存在感を放っている。
篠原 功(しのはら・いさお)
東京都出身。演劇集団『SINK』主宰。2001年に演劇実践集団デスペラーズの旗揚に参加。その後2009年に演劇集団『SINK』を旗揚げ。脚本・演出を手掛けている。俳優としてはストレートプレイから2.5次元、さらにミュージカルなど幅広いジャンルに出演。さらにテレビドラマや映画、ナレーションでも活躍している。
公演情報
劇団水色革命 第23 回本公演
MARU 芸歴30 周年記念公演『愛で殺して』
日:2021年12月16日(木)~19日(日)
場:築地本願寺ブディストホール
料:S席7,500円 A席:6000円
自由席4,800円(税込)
HP:http://www.mizuiro-k.com/
問:劇団水色革命
mail:korubata.japan@gmail.com