キ上の空論 最新作「手応え最高の作品です! 」 「キャラクターを演じず、自分に役を近づけてほしい」

キ上の空論 最新作「手応え最高の作品です! 」 「キャラクターを演じず、自分に役を近づけてほしい」

 中島庸介主宰「キ上の空論」が今春、第18回公演『けむりの肌に』を上演する。本作は中島による新作。ある日、学生時代の友人・澄乃が自殺を図ったという知らせが届く。それを聞いた茂木の胸に、あの頃の想いが蘇り―― 。主人公・茂木を安西慎太郎、澄乃を大和田南那が演じる。

中島「僕も歳を重ねてきて、死を身近に感じるようになってきました。身近な人が亡くなったらどう思うだろうと考えたのが構想のはじまりでした。おふたりとは今回が初めてですが、僕は基本的に当て書きで執筆するところがあって、だから役に近いものがあると思います」

安西「茂木は自分と重なる部分がたくさんあって、“わかるわー!”と思いながら台本を読んでいました(笑)。ひとりの人間として凄く共感できたし、今の自分だからこそ、より深く刺さる作品だと感じています」

大和田「澄乃は自殺を図るという、これまでに経験のない役で、ちょっと緊張しています。稽古を重ねていく中で中島さんの理想に近づけられたらという心境です」

 中島が役者に求めるのは、舞台上での生々しさだ。

中島「役者さんには、『キャラクターを演じないでください』とお伝えしています。なるべく自分に役を近づけてほしい。気持ちに嘘がなければ、泣けなくてもいいし、多少語尾が違ったりしても大丈夫。演じているのか、素なのかがわからない状態を舞台で見せたいと考えていて……」

安西「その感覚、凄くわかります。役者としては作品にしなければと考えがちだけれど、この作品にとって一番大切なのは嘘をつかないことだと感じていて。役者のフィルターを通さず、目の前の人とぐちゃぐちゃになりながらやっていきたいですね」

大和田「私はどちらかというと台本に書かれた通りに演じようとするタイプで、事前に自分の中でイメージを固めてしまいがち。でもそうすると実際に台詞を話した時、自分の中のイメージとギャップができてしまうことがよくあって。だから今回は稽古場での会話を大切に、役を深めていけたらと思っています」

 キ上の空論の立ち上げから10年目を迎え、この節目にまた新たな風を取り込んでいく。

中島「今回は初参加の方が多く、役者からの刺激も味わいたい。今までと違う作風にできたらと考えています。稽古場が楽しければお客さんもきっと喜んでくださると思う。そういう意味では手応えは最高です(笑)。このメンバーとともに、最高の舞台をお見せできたらと思います」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:佐藤雄哉(平賀スクエア))

レトロブームなどと言いますが、再熱して欲しい流行はありますか?

安西慎太郎さん
「僕は平成生まれの平成レトロなのですが、何故か昭和レトロに触れると懐かしい気持ちになります。昭和に触れたことがないはずなのに。特に、喫茶店や飲み屋に入るのが好きなので、昭和レトロ感溢れる居酒屋や純喫茶がもっと増えると嬉しいです」

中島庸介さん
「再熱は難しいと思いますが、“電話”ですかね。公衆電話とか、家の固定電話とか。手軽なスマホも素敵ですが、連絡を取るのにひと手間掛かるって、面倒だけど大切にも思えて。“便利”って煩わしかったりもするから。限られた時間や、声を聞く為の手間や不便さが、なんだか今の自分には重要な気がします。一旦、1週間くらい世界中でスマホ使えなくしたらどうですかね? 結構みんな楽しいかも」

大和田南那さん
「私の再熱して欲しい流行りは“文通文化”です。私は昔から友達や家族の誕生日にお手紙を書いたりしているんですが、最近はそういう記念の日だけじゃなく何気ない話をわざわざ手書きで書いて切手を貼って送るという一手間が好きで、良く友達と手紙交換をしています。SNSが発達したこの時代にあえて手紙を書くとより一層気持ちも伝わるし、貰うと嬉しいなと思って続けています。先日久しぶりに実家に帰った時、おばあちゃんに私が小さい頃に旅行先から送った手紙を取っておいてると見せてもらって。こうして物として残る所も良いところだなと思いました。私はこの仕事を始めてからいくつもファンの方からお手紙をいただいていますが、やはりいつまでも凄く嬉しいし、とてもパワーを貰えるので、また手紙を書いて送り合うという文化が流行るといいなと思います!」

プロフィール

中島庸介(なかしま・ようすけ)
岐阜県出身。劇作家・プロデューサー。「キ上の空論」主宰。18 歳から独学で演劇を学び、岐阜・名古屋で活動。2009年、東京進出と同時に演劇ユニット「リジッター企画」の作家・演出家として活動開始。2013年、個人ユニット「キ上の空論」を旗揚げ。全作品の脚本・演出を手掛ける。大きなセットは組まず、役者の肉体と、会話言葉、軽快なシーン転換で「滑稽な人々の生活」を綴ってゆく。

安西慎太郎(あんざい・しんたろう)
神奈川県出身。2013年、ミュージカル『テニスの王子様』2nd シーズンに白石蔵ノ介役で出演し注目を集める。主な出演に、『明治座の変~麒麟にの・る~』、舞台『象』、『人生が、はじまらない』、『ドロシー』、音楽朗読劇『四月は君の嘘』など。

大和田南那(おおわだ・なな)
千葉県出身。2013年、「大島チームK」公演のバックダンサーとしてAKB48劇場デビュー。2014年、『セーラーゾンビ』で初のドラマ出演ながら主人公に抜擢された。主な出演に、ドラマ『ヒミツのアイちゃん』、『マジすか学園』シリーズ、舞台『ぴんすぽ!』シリーズ、『遠き日の落球〜あの時から続いているから今なんだ〜』など。

公演情報

キ上の空論 #18『けむりの肌に』

日:2023年4月7日(金)~16日(日)
場:CBGKシブゲキ!!
料:7,500円 U-25割[25歳以下]4,500円 ※当日精算のみ/要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://twitter.com/kijyooo
問:スーパーエキセントリックシアター mail:info@set1979.com

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