全公演“生演奏”で注目の劇団、節目の公演は“原点回帰” サルメカンパニー5周年記念『スウィングしなけりゃ意味がない』夢の東京芸術劇場で

全公演“生演奏”で注目の劇団、節目の公演は“原点回帰” サルメカンパニー5周年記念『スウィングしなけりゃ意味がない』夢の東京芸術劇場で

 2018年の旗揚げ公演から5周年を迎えたサルメカンパニーが、目標としてきた東京芸術劇場で『スウィングしなけりゃ意味がない』の公演を控える。佐藤佐吉演劇賞2021では最優秀演出家賞を含む6部門を受賞した注目の団体だ。その特徴は“全作品生演奏”。コロナ禍に負けず、メンバー全員でのシェアハウスの様子を動画公開するなど、若者らしい発想で、世間のライフスタイルの変化に応じた作品発信を続けてきた。
 今作では初のオーディションを開催し、160名の中から選び抜かれた俳優陣と共に総勢33名で“芸劇”進出に臨む。そんな彼らの想いを、主宰の石川湖太朗に聞いた。

―――全作品“生演奏”で公演されているサルメカンパニー。メンバー全員、楽器演奏ができるそうですが、一体どのような経緯で集まった皆様なのでしょうか?

石川「僕らは桐朋学園芸術短期大学で出会ったメンバーです。短期大学ですが、専攻科に進学すれば四年制大学と同じ学士がとれる学校で、3年生・4年生もいるんです。この3・4年生が、今は人数が増えたと聞いているのですが、僕らの時代は2学年合わせても全員で10~20人弱くらいしかいなかったので、すごく密接な仲になるんですね。コロナ前だったので、海外公演も含めて、沢山の芝居を作っていて、それこそ小さい劇団みたいになっていました。
 明確なきっかけになったのは文化祭で坂口安吾作の『桜の森の満開の下』を舞台化して、演出をやらせていただいたことで……。初めて演出をして、面白くて、今後も演出がしたい、劇団を作りたいって思ったんです。その時の教授には『1人で早く売れたいか、皆で遅く売れたいか、どっちがいいか考えた方がいい』と言われて、熟考の末に後者を選ぶことに決めて。一緒に劇団をやりたいなと思ったメンバーに僕が声をかけていって、集まってくれたのが今のサルメカンパニーのメンバーです。ただ楽器が出来るメンバーを集めよう!と意識したわけではなくて、集まったメンバーが、たまたま全員楽器が出来たんです……。これは本当に偶然ですが奇跡だなと思います」

―――活動5周年ということですが、半分以上は“コロナ禍”ですよね。大変なこともきっと多かったと思いますが、メンバーでシェアハウスをする様子を動画公開するといった画期的な発想はどこから湧いてきたのでしょう?

石川「僕が突発的に『こういうことをやりたい!』と言い出すことが多いんですが、メンバーと相談して、面白そうだねとなったらやってみて、いやいやそれは……となったら却下して、という感じで。僕のアイディアをメンバーがどんどん膨らませてくれることが多いです。コロナ禍で、より焦燥感にかられたというか、何かやらなくては、という気持ちが芽生えて……。シェアハウスは、せっかく全員楽器が出来るんだから防音の家を借りて一緒に住んでみようよとなったのが始まりでしたね。
 コロナ禍は確かに大変なことも多かったですが、悪いことばっかりでもなくて……。シェアハウスの他にも、坂元裕二さん原作の『またここか』という作品の配信限定公演を作ったのですが、この時の映像チームの皆さんとも、お互いに『コロナで大変だけど何か表現活動をしたい』という気持ちが合致して、一緒に活動できることになって……。コロナがあったからこそ出会えた人たちも沢山いました。今までの日常がなくなってしまったからこそ、新しく面白いコンテンツを嗅ぎ分けようとする、嗅覚が鋭い人たちも沢山表に出てきたなとも思うんです。色々なことが経験できた期間でした」

―――第8回公演『スウィングしなけりゃ意味がない』はどのような作品ですか?

石川「1941年、ドイツ占領下のチェコ・プラハで実際に起きたエンスラポイド(類人猿)作戦という、ハイドリヒ暗殺の話を元にしています。旗揚げ公演でハイナ・ミュラー原作の『戦い』を舞台化したのですが、その時にナチスについて片っ端から調べて、この作戦のことも知っていました。この事件を題材にした小説や、映画も当時沢山見たんですが、舞台化はされていないんだなと思って……いつかやってみたいと思っていたんです」

―――ある意味、原点回帰ということでしょうか?

石川「そうですね! 旗揚げ公演の後にこの作品をやらないかという話も出たのですが、小さい規模では難しいんじゃないかということになって。いつかもっと大きな劇場で公演できるようになったらやりたいねという話をしていたので、5周年を記念して東京芸術劇場でやるのにふさわしい演目として、改めてこの作品に挑むことにしました。
 また、20代の信頼できるキャストを多く集めてやりたいと思っていたのもあって、この5年間でそれぞれのメンバーが客演で出会った方々や、新しく出来た人脈のおかげで、オーディションには160人もの方々が集まってくださって……。自信を持ってお届けできるメンバーが揃いました。5年間、温めてきた作品と言っても過言ではないですね」

―――今回も生演奏ということですが、聴きどころは?

石川「タイトルは『スウィングしなけりゃ意味がない』ですが、この時代はスウィングジャズが禁止されていたんですよね。それは逆に言えば、スウィングジャズを踊ること、演奏することが当時の抵抗運動の一環だったということなんです。史実上のエンスラポイド作戦には関係はないのですが、生演奏のジャズと芝居の融合で、その要素をこの事件に組み込むことで、より分かりやすく、ダイレクトにお客様に登場人物たちの気持ちを届けられるのではないかと思っています」

―――サルメカンパニーの生演奏は、劇中にどのように組み込まれているのでしょうか?

石川「ミュージカルとは違うので、例えばこれまでの作品だとカラオケのシーンになったら生演奏でバックバンドが始まったり、登場人物がレコードをかけたら、それに合わせて生演奏が始まったりと、物語の流れに沿って自然に組み込まれていることが多いです。なのでストレートプレイだと思って観に来てもらえたらと思っています」

―――5周年ということですが、過去の作品を振り返って印象的だった演出や出来事は?

石川「僕の演出作品は場面転換が多かったり、2つのシーンが同時進行していたり、王道の舞台演出ではないかなと思っていて……。7作目の『人間の感動について』では真ん中に紐カーテンを引いて、家の中と外を表現して、家の中で起こっていることと外で起こっていることを同時にお客様に見せるということをしました。映像作品も作りましたけど、舞台ではそういう舞台ならではの演出が好きで、大事にしているつもりです。
 あとはお客様を驚かせるのも好きなので、スーツケースの中にLEDライトを仕込んで、ケースを開けた瞬間にまるでオルゴールかのように生演奏が始まって、スーツケースの中身が光り出す……というのをやったこともありました。
 『瞬間プレイボーイ』という作品では、途中で死んでしまった登場人物が、急に死んだ次のシーンに出てきたこともありましたね……。その後見続けると、あ、このシーンは過去回想か、ってちゃんと分かるんですけど。常に遊び心を忘れずに演劇を作り続けたいと思っているので、今作も戦争劇ではありますが、チラシはレコードのジャケット風に作ってみました。オープニングにもビックリするような描写を入れたので、きっと驚いてもらえるんじゃないかなと思います。
 あとはマニアックな方向けではありますが、サルメカンパニーの旗揚げからこれまでの作品の印象的なセリフを今作には散りばめてあるので、ずっと応援してくださっている方にはそこも楽しんでいただけたらと思います」

―――ありがとうございます。では最後に、観に来てくださるお客様に一言お願いします。

石川「僕らは結成する時に、5年間は頑張ろう、5年やってどうにもならなかったら解散しよう、と決めて立ち上げました。それだけに今作は並々ならぬ思いで挑んでいます。皆様の心に何かを残せる作品になればと思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです」

(取材・文&撮影:通崎千穂(SrotaStage))

プロフィール

石川湖太朗(いしかわ・こたろう)
1995年8月20日生まれ、静岡県出身。サルメカンパニー主宰にしてほとんどの作品の脚本・演出を務める。客演としては劇団鹿殺し・Pカンパニー・Makino Playなどに出演。近年の出演作品に、Makino Play vol.1『東京原子核クラブ』林田清太郎役、Makino Play Vol.2『モンローによろしく』ビリー・ポラック役、DULL-COLORED POP 第25回本公演『岸田國士戦争劇集 動員挿話』友吉役など。

公演情報

サルメカンパニー5周年記念公演
『スウィングしなけりゃ意味がない』

日;2023年5月18日(木)~21日(日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:5,000円(全席指定・税込)
HP:https://www.salmecompany.com
問:サルメカンパニー
  mail:salme.swing@gmail.com

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事