誰もが知る『四季』の作曲者アントニオ・ヴィヴァルディと父ジョヴァンニ 時代を超えて語り継がれる親子の情愛を紡ぎ出す物語

誰もが知る『四季』の作曲者アントニオ・ヴィヴァルディと父ジョヴァンニ 時代を超えて語り継がれる親子の情愛を紡ぎ出す物語

 「Buon giorno a tutti!(こんにちは、皆さん!)」と流暢なイタリア語で登場したのは俳優の辰巳琢郎。ワインだけでなく、料理や文化も含めてイタリアが大好きだという。彼が出演するのは、バロック時代の楽聖 ヴィヴァルディの奮闘から成功を描く、バロック音楽劇『ヴィヴァルディ- 四季-』。

 世界中の誰もがそのメロディを知る名作『四季』の作曲者アントニオ・ヴィヴァルディの父 ジョヴァンニ役だ。床屋を生業にしながらヴァイオリン奏者としても評判が高かったジョヴァンニは、早くから息子の才能を見抜き、その成功のために手を尽くしたという。

 「スケールの大きな歴史的叙事詩ではありませんが、ハートフルで人情話のようないい物語です。親子や人間同士の情愛というのは世界共通、時代も超えて変わらない部分がありますから」

 辰巳自身も親として子供を育て上げた。物語に共感できる部分も多そうだ。

 「息子を天才だと信じる父親の気持ちはわかります。僕も今でもそうですよ。でも子供は自分の所有物ではありませんから、やがて親離れがやってくる。それもまた必要なこと。この舞台でどんな父親にするか、これから稽古を重ねながら積み上げていきます。世の父親あるいは母親たちに共感していただける人物にしたいですね。アントニオ役の高田くんとは今回が初共演なので楽しみです」

 そして“バロック音楽劇”と銘打つだけあって、本作には3人の楽士が出演する。

 「贅沢ですね。やはり生演奏は格別だと思います。だって芝居でも配信と劇場は全く違うでしょ。この前久々に出演した、劇団そとばこまちの『贋作写楽』
にも生演奏の和太鼓と三味線が入りましたが、凄く気持ちが良く、高揚しました。コンサートの司会も多くバロックも聴いています。ヴィヴァルディの時代
だとバッハやヘンデルとか。ストラディヴァリウスなどヴァイオリンもこの時期に生まれた楽器ですよね。ヴィヴァルディの『四季』が作曲されたのが1723年だそうですから、今年は300周年にあたるんです」

 ヴィヴァルディによる音楽に包まれた心温まる物語を、最後に辰巳はこう勧めてくれた。

 「観劇しながらイタリアに行きたくなったり、イタリア料理を食べたくなる。そんな芝居をしたいですね。難しい物語ではないですし、親子の話だから共感もしやすいと思いますから、構えずに観に来てください。観劇後のイタリア料理店は予約しておいた方がいいですよ(笑)」

(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)

プロフィール

辰巳琢郎(たつみ・たくろう)
大阪市出身。京都大学文学部在学中、関西では人気実力ともにNo.1の「劇団そとばこまち」を主宰し、役者としてだけでなく、プロデューサー、演出家として’80年代前半の学生演劇ブームの立役者となる。卒業と同時にNHK 朝の連続テレビ小説『ロマンス』にて全国区デビュー。以来、知性・品格・遊び心と三拍子揃った俳優として幅広く活躍中。今年秋には、45周年記念公演『贋作・写楽』で40年ぶりに「劇団そとばこまち」の舞台を踏んだ。食通、ワイン通としても知られ、「日本のワインを愛する会」会長、日本ソムリエ協会名誉ソムリエを務める他、海外のワイン騎士団からも数々の騎士号を贈られている。自ら企画・出演する「辰巳琢郎の葡萄酒浪漫」(BSテレ東)、「辰巳琢郎の家物語~リモデル☆きらり」(BS朝日)が好評放映中。コンサートの司会や演出、海外旅行や晩餐会のプロデュースなど活動の幅も広い。著書は『やっぱり食いしん坊な歳時記』、『日本ワイン礼讃』他。近畿大学文芸学部客員教授。国連WFP 協会顧問。観光庁アドバイザー。

公演情報

バロック音楽劇『ヴィヴァルディ-四季-』

日:2024年1月6日(土)~14日(日) ※他、愛知・兵庫公演あり
場:新国立劇場 小劇場
料:S席8,800円 A席7,700円(全席指定・税込)
HP:https://artistjapan.co.jp/aj_vivaldi/
問:アーティストジャパン mail:info@artistjapan.co.jp

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