濃密な人間たちがぶつかりあう芝居を劇場で体感して欲しい! ゴツプロ!主宰・塚原大助の新企画「ブロッケン』始動

濃密な人間たちがぶつかりあう芝居を劇場で体感して欲しい! ゴツプロ!主宰・塚原大助の新企画「ブロッケン』始動

 「いつもあなたにプラス1℃」を掲げて、多彩な作品を発表している「ゴツプロ!」主宰の塚原大助。そんな彼がプロデュースする、ゴツプロ!Presents/ブロッケンver.1『ブロッケン』が4月21日~30日に、本多劇場グループ 新宿シアタートップスで上演される。
 この企画は新たな作家、新たな演出家、新たな役者との出会いを求めて塚原が始動する新プロジェクトで、何かを壊し、また何かをつかみ取りたいという思いで、演劇界に新しい風を吹き込もうとする舞台だ。
 そんな新プロジェクトの船出に、作品の脚本を担当する深井邦彦、演出家の西沢栄治、そして塚原が揃い、新たな舞台の目指すところを語ってくれた。

新たな可能性によって広がっていける

───ゴツプロ!さんの新企画「ブロッケン」始動ということで、まずこの企画の意図から教えていただけますか?

塚原「ゴツプロ!という劇団の主宰として8年、合同会社になって7年目なんですが、駅前劇場から本多劇場、大阪公演、海外公演と進んできたわけです。それがこのコロナ禍になって、本多劇場の規模でやるということにどうしても大きなリスクが生じてしまったり、21年の公演も中止になってしまったりなど、色々なことがあったんです。
 そうしたなかで、やっぱり小さな劇場でも公演をやっていく必要があるねという話の中から、うちのメンバーの佐藤正和が『青春の会』を立ち上げて、子供たちにも芝居を観て欲しいと下北沢桃太郎プロジェクト『桃太郎』をやったり、2人芝居や4人芝居など規模の小さいものを、ということで『父と暮らせば』を東京・広島・大阪・福岡の4都市でやりました。
 それから浜谷康幸が、コロナ禍の中で劇団同士が繋がっていくのが大事じゃないかと「BOND52」、「52」はゴツプロ!のゴツなんですけど、劇団と劇団を繋げていく企画を立てて『山笑う』という小松台東さんの作品をプロデュースしました。
 また、次世代への橋渡しを目的とした、演劇を創る過程を学ぶプロジェクトの「ゴツプロ!演劇部」も始動しています。劇団を立ち上げる若手がすごく少なくなってきていると聞き、本多劇場グループの本多さんとも話したのですが『やっぱり劇団がなくなってしまうと、結局いずれは劇場もなくなっていくよね』ということで、若い人たちに劇団を立ち上げてもらう為に、我々で色々な場を作ろうという思いからメンバーが動いているんです。
 そのなかで、僕は劇団の主宰として様々なことを考えながら動いてきたんですが、今回は僕個人として、若い作家さん、演出家さん、役者さんとの新たな出会いを求めて、その可能性によってまた広がっていけるということを伝えられたらと思い、この『ゴツプロ!Presents/ブロッケン』というものを企画しました。

───確かに、今リスクが大きすぎて劇場を抑えられないので、昨年(2022)は一度も舞台公演を企画できなかった、という劇団さんのお話をいくつもお聞きしました。劇団がなくなってしまうと、レパートリーの作品も上演されなくなってしまうので、素晴らしい取り組みだと思います。
 その企画に今回脚本家として深井邦彦さん、演出家の西沢栄治さんが集われた。西沢さんは、昨年のゴツプロ!第七回公演『十二人の怒れる男』の演出もされていらっしゃいますが、それぞれの出会いというのは?

塚原「下北沢で、今は『UCHIAGE』という名前になっていますが、当時『Theater Side Bar』というバーがあって、そこで深井君と初めて知り合ったんです。
 僕は先ほどからお話してるように、新しい作家さんを探していたところでもあったので、色々な話をしたらやたらと気があって。あたかも地元の学校の先輩・後輩みたいな、演劇人っぽくねえな(笑)みたいな会話を何回もしていたんですよ。
 そこから作品も何本も見させていただいて面白いなと思っていたので、今回『ブロッケン』をいよいよやるぞ!となった時に、彼に頼もうと思って電話したらちょうど京都にいて。それで『俺の友人が奈良でお茶屋さんをやっているから、もし奈良に行く予定があるんだったら寄りなよ』と言ったら、『明日なら行けます』っていうから、『あ、じゃあ俺も奈良に行こう』と」

西沢「早いね(笑)。フットワークが軽い!」

塚原「下北沢で馴染みの環境で話すよりも、奈良のお茶屋さんで今後の話をする方がちょっと面白いんじゃないかなと思って、待ち合わせしたんです」

西沢「そうだったんだ」

塚原「その時は『ブロッケン』というタイトルだけが頭にあって、何かこう壊していきたい、掴み取りたいという思いも込めて名前を付けたので、そのタイトルだけを持って『ブロッケン』っていうタイトルで一緒にやらないかというお話をさせてもらいました」

───そう伺っていかがでしたか?

深井「今おっしゃってくださったように、下北沢では先輩・後輩みたいな感じでお話させていただいていましたけれども、演劇人としての塚原さんや『ゴツプロ!』さんは憧れだったんです。その人が、僕がたまたま仕事の関係で京都にいたからといって、わざわざ奈良まで来てくださる? それって何事なんだろう、みたいな感じでした。
 そこから話をさせてもらって『ブロッケン』というタイトルで何か書けないか?という、非常に怖いざっくりした話だったんですが(笑)、詳しく企画意図などをお伺いするうちに、これは自分にとっても新しいチャレンジができそうだ、という思いになりました」

───そして、演出を西沢さんにというところは?

塚原「西沢さんとは僕が前に劇団『椿組』の花園神社野外劇『贋・四谷怪談』に役者として出演させていただいた時に、はじめて演出をしてもらっていて」

西沢「あぁ、そうだ、そうだ! あれが最初だったよね」

塚原「そうそう、その時のダイナミックな演出がすごく印象に残っていたので、去年『十二人の怒れる男』の演出をお願いしたんですけど、今回深井君と『演出誰にしようか』という話をした時に『西沢さんにやってもらえたら嬉しいです』と言ってきてくれて。
 僕も西沢さんが現代劇を演出したらどうなるんだろう、それは見てみたいな! それもまたブロッケンじゃないか、と思ってお願いしたら、『自分としても勝負になると思うけど』と引き受けてくださいました」

───面白そうだと思われたわけですね?

西沢「いや、塚原さんも深井君も大好きだからさ」

塚原「そういうのはいいよ(笑)」

深井「逆にプレッシャーが!」

西沢「いやいや、基本頼まれたら断らないんですけど(笑)、これまで色々な人に巻き込まれながらここまでやってこられたので、またこういう新しいスタートに巻き込んでもらうのは光栄だし、色々な人と出会って、交わっていくことによって、自分も上手くなっていけるだろうと思っているので、良い機会を与えてもらったと思っています」

予想がつかないからこその化学反応

───そのタイトルだけがあった「ブロッケン」ですが、今お話になれる範囲でどんな作品なのか教えていただけますか?

塚原「台本がまだ前半というか、16ページだからね(笑)。前半でもないよな?(※取材は2月中旬)」

深井「4分の1くらいしか……」

───こんな世界観です、で大丈夫です。

深井「僕はどちらかと言うとこれまで静かめの芝居を書き続けてきたんですけど、今回はタイトルと大助さんの勢いをお借りして、自分が今までやってこなかったことにちょっとチャレンジしてみようかなと思っています。
 ずっと好きで書いてきた家族の話を入れつつ、ある兄弟の破壊と再生じゃないですけど、激しさと同時に包容力もあるみたいな作品になればいいなと思って、今執筆中です」

塚原「でもね、この16ページまででもちょっとびっくりしたんですよ。こういう勢いで来るんだなと。読んでてすごく爽快感があって面白い。とても熱量高めな芝居ですね」

西沢「俺なんて電車止まってて(※取材当日交通機関の乱れあり)さっき来たので、まだ3ページ、いや4ページに入ったか?ってとこまでしか読めてないんですけど(笑)。でも、その4ページまででもう登場人物達が動いてるんですよ。これはこの先どうなっていくのか予想がつかないなと」

───その予想がつかないというのが、この企画にとっては良いことなのでは?

塚原「そうですね。今回は『ブロッケン』というタイトル、そしてユニット名そのものだということも含めて、新しい何かをやっていきたいということなので。役者さん達、うちの泉知束が出ますが、他の方々とは皆さん『はじめまして』なのも、予想のつかない人たちから化学反応が起これば面白いなと思ってメンバーを集めたからです。
 高畑裕太君は、深井君と同じように下北沢のバーで知り合って、すごく真面目な子なんですけど出てくるエネルギーがすごいので、彼と兄弟役をやったら面白いだろうなというのがまずありました。
 有薗芳記さんは深井君の作品に常連で出られていて、僕にとって憧れの先輩でしたから、是非一緒にやらせて欲しいとお願いして。それからちょっと擦れた感じと言いますか、棘のある若い女性を探していたところ、前田悠雅ちゃんを紹介してもらって、映像を見させていただいたら、求めていたイメージにとても近い方だったんです。
 そして岩瀬顕子さんとは面識はあったのですが共演したことはなくて、彼女が主宰している劇団『日穏-bion-』のお芝居を見に行った時にとても素敵で、是非一緒にできればと思いました。
 基本的に僕と岩瀬さんが夫婦役で前田さんがその娘。僕と高畑君が兄弟で、その伯父が有薗さん、泉が僕の会社の部下という設定で物語を動かしてもらっています」

───深井さんは、そうした役者さんのお顔を思い浮かべて書かれるタイプですか?

深井「僕はその環境の方がありがたいです。いわゆるあて書きと言われるものをさせていただいているので」

───西沢さんは、役者さんのお顔触れを聞かれていかがでしたか?

西沢「僕も『はじめまして』の方々が多いので緊張しますよね。まぁ、皆さんもしていると思うけど、このチラシもすごいインパクトでしょう? これって実際にこの状態で撮ったの?」

塚原「そう、みんなチューブトップを来て寝転がって。でもここで1度集まってイメージを共有したおかげで、既に一体感が生まれているから稽古場がより楽しみになりました。やっぱりそういうことって重要じゃないですか」

西沢「うん、裏のほうだと普通にある芝居のチラシって感じだけど(笑)、これは面白いよ」

渾身でぶつかっていく、それこそがブロッケン

───今回の舞台で、それぞれに期待するところをお話いただけますか?

深井「大助さんも西沢さんも僕にとってはずっと見てきた方々なので、ご一緒できること自体がとても光栄です。今も結構信じられない、夢の現象みたいだなと感じるところもあるので、もう僕からはそれこそ渾身でぶつかっていく、それこそブロッケンでしょうみたいな感じですから、おふたりの胸を借りつつ、化学反応を起こせるようにしていきたいなと思っています」

西沢「深井さんはご自分でも演出をされる方だから、台本の世界観がちゃんと立ち上がっているので、僕はいつものように台本に沿いながら、俳優を見つめながらやっていくだけなんですけど。
 先ほども言いましたが『はじめまして』の方々がほとんどですし、もちろんチームとしてはがっちり固まりつつ、あんまり仲良しになり過ぎず、良い意味の異種格闘技みたいなことになると面白いんじゃないかなと思っています」

───チームワークとは別の部分で、和気藹々としすぎないということでしょうか?

西沢「それぞれの価値観や人生がぶつかって、それが作品に反映されていくといいなと思いますね」

塚原「まずやっぱり深井くんと西沢さんの組み合わせというのがすごく楽しみだなと思っています。この間、上演する新宿シアタートップスに劇場下見に行ってきたんですが、西沢さんから奈落の使い方をはじめ、劇場をどう使うかというアイデアがどんどん出てくる、そのひと言一言が早くも面白かったんですよ。ですから、深井君の現代劇と、西沢さんの発想が融合したときの広がり方はすごく楽しみですね」

───今回は、「ブロッケン」というシリーズ名がそのまま作品タイトルにもなっていますが、今後このシリーズを別のタイトルの作品で続けていくということですよね?

塚原「そうです、そうです。ブロッケンver.1、ver.2と。最初に言いましたように、今『ゴツプロ!』のメンバーが色々なプロデュースをしているので、コンスタントに年に4本から5本の公演が打てるようになれば、演劇の活性化にも繋がるだろう、という思いがあるので、そんな形で企画を立てていっています」

───本当に素晴らしい企画だなと思いますので、新たな広がりに期待しています。ではこの舞台を楽しみにされている方々にメッセージをいただけますか?

西沢「『ゴツプロ!』とはひと味違う空気感の作品を皆様にお見せできればいいと思っていますし、さっきも言いましたが、役者同士の異種格闘技が生み出す化学反応を、是非劇場で、LIVEで楽しんでいただけたらなと思っています」

深井「僕の作品を見てくれている方がいらっしゃるならば、今までにないことをやっているので、それも含めて楽しみにしていただけたらいいなと思うのと、やっぱりいま続いてきたコロナ禍で、劇場から離れてしまったお客様もいらっしゃるでしょうし、生きていく上で色々な環境の変化もあると思うんです。だからこそ、なんとかそこを打破できるような作品をお届けしたいと思っています」

塚原「新宿シアタートップスが本多劇場グループに入ってそろそろ1年半ぐらい経つのかな?というところで、こうしてまた輪が広がったのは僕らにとってもすごく嬉しいことなんですね。しかもシアタートップスって、これぐらいの人数の濃密な芝居をやるにはちょうどいい空間なんです。
 ですから深井君も言いましたが、お客様にもう1度劇場に帰ってきてほしいし、台本はまだ16ページですけど(笑)、でもとても濃厚な人間達のぶつかり合いの芝居になると思います。その濃さをお客様に浴びてもらいたいし、それを共に観る力を僕たちにもぶつけてもらえたらいいなと思っています」

(取材・文&撮影:橘 涼香)

プロフィール

塚原大助(つかはら・だいすけ)
東京都出身。俳優・プロデューサー。ゴツプロ!主宰。
本公演のプロデュースも務め、本多劇場進出、地方公演や海外公演の実現、メディアミックスや全公演生配信等、次々と新しい取組を推進。大小様々な劇場で、多くの作家・演出家とコラボレーションしていく企画「ブロッケン」もプロデュース。また、日本最大級を誇る理美容組合SPC GLOBAL と日本資質表現教育協会との連携で、演劇を通した人材育成に取り組んでいる。
こまつ座 第133回公演『人間合格』、KURAGE PROJECT Vol.1『売春捜査官』、映画『ソワレ』等に出演。

深井邦彦(ふかい・くにひこ)
東京都出身。HIGHcolors主宰、作・演出担当。現代劇を主に創作している演出家であり、劇作家。「激しさと包容力」をテーマに掲げ、マイノリティな悩みと向き合う作品を作り続けている。
近年では、兵庫県政150周年記念事業の演劇部門の演出や、よゐこ濱口優氏がプロデュースするアイドルグループの演出、朗読劇の演出、エキセントリックシアター若手俳優へのワークショップ講師など活動の幅を広げている。
近年の作品に、HIGHcolors番外公演『生き辛さを抱える全ての人たちへ』作・演出、ファーストピック主催公演『野に咲く花なら』演出、グッドディスタンス風がつなげた物語『珠子が居なくなった』作・演出などがある。

西沢栄治(にしざわ・えいじ)
東京都出身。2000年よりJAM SESSIONを主宰し、演出家として活動。日本演出家協会主催若手演出家コンクール2003へ出場し、最優秀賞受賞。古典から現代劇まで幅広く手掛け、近年では不条理劇やこども向けの芝居などジャンルにとらわれず活躍している。
主な演出作品に、新国立劇場の演劇『あーぶくたった、にいたった』、流山児★事務所公演 宮本研 連続上演 第2弾『美しきものの伝説』、椿組 夏・花園神社野外劇『天保十二年のシェイクスピア』『四谷怪談』、JAM SESSION『ヴェニスの商人』、『楽屋』、ゴツプロ!第七回公演『十二人の怒れる男』などがある。

公演情報

ゴツプロ!Presents/ブロッケンver.1
『ブロッケン』

日:2023年4月21日(金)〜30日(日)
場:新宿シアタートップス
料:一般5,500円 早期割引[4/21~23]5,000円
  U-22[22歳以下・枚数限定]4,000円
  ※要身分証明書提示(全席指定・税込)
HP:https://52pro.info
問:ゴツプロ合同会社 mail:staff@52pro.info

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