映画やドラマにもなった名作の舞台が再演 現代も続く戦争の記憶。「みんなに知って欲しいし、伝えたい」

映画やドラマにもなった名作の舞台が再演 現代も続く戦争の記憶。「みんなに知って欲しいし、伝えたい」

 大ヒット映画『この世界の片隅に』の原作者、こうの史代氏による名作コミック『夕凪の街 桜の国』舞台版の再演が8月に決定した。2017年に初舞台化され、毎回フレッシュなキャストとともに紡いできた本作。2021年度版には、北原里英と國森桜をW主演に迎え、戦争から時を経て人々が日常を取り戻してもなお影を落とす原爆の記憶を、昭和30年と現代を生きる二人の女性を通して描いていく。


心が揺さぶられる物語

物語は原爆で被爆した過去を持つ女性・平野皆実(ひらの みなみ)の人生を描く『夕凪の街』編と、現代を生きる皆実の姪・石川七波(いしかわ ななみ)がひょんなことから広島の街を旅する『桜の国』編からなる。戦争とは、原爆とは、平和とは、を問い、令和になっても続く戦争の傷跡に気づかされる。

――原作や台本を読んだ感想や印象は?

 北原「一番最初に漫画を読ませていただきましたが、物語の奥深さに驚き、また感動して涙を流しながら読みました。最近戦争を扱う作品が減ってきていて、学生の頃のように映画を見る授業もないですし、久しぶりに戦争の物語に触れてとても心が揺さぶられて、是非この作品をやりたいと思いました」

國森「私は何も知らない状態で2019年のこの舞台を拝見しました。戦時中を描いたお話が多い中でこの作品は戦後に生きた方の辛さや気持ちを描いていて、こんなお話があるのか!と。」

――切り口が今までの戦争のお話と違いますよね。

國森「そこにびっくりしました。そして今回自分が演じる側になって、役は現代の七波ちゃんの方かな?と思ったらまさかの皆実ちゃんで、あら!と。とても難しい役だと思うので頑張りたいです」

北原「本当にそう! (配役が)逆だと思ったよね(笑)。私も最初は完全に戦時中の皆実を演じると思っていて、漫画もそっちの気持ちで読んでいました……(笑)。」

――出演するにあたり色々な想いや決心があったと思いますが、役作りのためにリサーチなど準備していることは?

北原「準備としては戦時中の気持ちでしばらくいましたから、まずは現代の方に切り替えます(笑)。でも、戦時中と現代それぞれの違うイメージがあってこそ生まれる面白さもありそうだなって。そこはすごく楽しみにしています」

國森「私は広島出身なので(学生時代は)8月が近づくと自習で調べたり、原爆ドームや資料館に行ったり、夏休みでも8月6日は全員登校してお話を聞いたりしていたので、小学生から高校まで一生懸命に学んだことを思い出しながら台本を読んでいます」

――DNAに刻まれているからこそ、今までとは違う皆実になりそうですね。何を意識して演じようと思っていますか?

北原「現代パートを担いますが、私自身も戦争を経験していないですし、広島生まれでもないので、そういう点では七波と同じでリアルに今の若者目線で、戦争を知らない世代として演じていくことができるかなと思っています。もちろん色々と学んでこのご時世でなければ原爆ドームにも行きたいんですけど今はまだ難しいので、行けないからこそ知らないことを武器に、観客の皆さんと同じ目線で物語を進めて行けたらと思います」

――七波は戦争を知らない世代ですが家族の過去も深く知らず、でもすぐ近くに戦争があって

北原「そうなんです。原作を読んだ時に戦後には広島の人に対しての差別が確実にあったと知り、それが信じられなくて。このことは私自身きちん勉強して知っておくべきだと思いましたし、色んな世代の方に知って欲しいので意識して演じていきたいです」

國森「私はいま広島弁を意識しています。台本は昔の言葉が多くて現代とは語尾が違うんです。間違えて今の広島弁で言ってしまったり、イントネーションがぜんぜん違うので、そこをどうしようかと。
また、自分自身戦争を体験したことがなくて気持ちの部分はやっぱりわからないので、その気持ちを作ることが一番課題かもしれないです」

歌とダンスを交えて表現

――過去の映像が少し見られますが、歌やダンスがあるようですね。それぞれの見どころ、観て欲しいところについて教えてください。

北原「私は歌が苦手で。AKB48にいた時は割と下手を売りに個性として立っていましたが(笑)さすがに、ボイトレに行って練習して挑もうと思っております。歌が挑戦であり、それがどういう形になるのか、一つの見どころとしても是非観ていただきたいです」

國森「ダンスがヤバイですね。本当に踊れない分類なんです」

北原「え! 意外!」

國森「見て欲しいところは、観客の時も演じる時もですが、七波ちゃんの目線でお話が進むところが凄く好きで、やはりそこを観て欲しいですね」

――2人の物語が同時進行されていく、そこも見どころになりそうですね。

北原「私も七波としてちゃんとしないと! 原作を知らない方にもわかりやすく伝えたいです」

コロナ禍の稽古場で座長として

――W主演ということで、どんなカンパニーを作っていきたいですか?

北原「この間初めてコロナ禍で舞台に出演しましたが、本当に制限が多くてみんなでご飯も行かず、稽古場でもずっとマスクをしていたんです。その状況でどれくらいのコミュニケーションがとれるのかなと思っていたのですが、意外ととれたんです。できる範囲内にはなりますが、ちゃんとコミュニケーションがとれているカンパニーになったらいいなあと思います。
桜ちゃんは若いので、年上として『私が引っ張らないと!』という気持ちはあります! 任せてください!」

國森「嬉しいです! 私はすごく人見知りで、今回とても出演者が多いので全員とお話ができるか。人見知りが発揮されそうで、そうならないように頑張ろうと思います」

――初めての現場で心掛けていることは?

北原「私は最初人見知りはしませんが、グイグイ話しかけていい人かどうかは最初に見極めますね。 この人は大丈夫という人を見つけて、そこから広げていく。無理にはいかないので安心して欲しいです。私は本当に平和第一の人間ですので」

國森「ずっと待ってしまうので、話しかけていただければ」

――でも今回は座長です!

國森「あははは!」

北原「皆実パートは任せました! コロナ禍という状況もあって、それぞれの稽古スケジュールになる予定なので、もしかしたら最初のうちは会わないかもしれない」

國森「あッ! どうしよう!」

北原「頑張って!」

國森「頑張ります!」

エンタメとして発信していくことで人々の記憶から戦争が消えないように

――夕凪チームと桜の国チーム。個々の稽古から合わさった時、また違う刺激がありそうですね、楽しみにしていることは?

北原「実はWキャストで上演する舞台は初めての経験なので、毎公演とても新鮮な気持ちでやれそうです。そこで起きるであろう化学反応みたいなものは楽しみです」

國森「私は初通し(最初から最後まで台本通りに初めて通してやる稽古)がすごく楽しみです。本番の初日が一番好きで」

北原「うんうん、わかる。初日の雰囲気っていいよね。」

國森「そうなんです! みんなで稽古をしたそれぞれの部分が合わさって初めて通すことが本当に楽しみで。まだ稽古もこれからなのに今からワクワクしています」

――では最後に意気込み、お誘いのメッセージをお願いします。

國森「戦争作品は2度目ですが、今回は戦争中のお姉さんとして全力で元気よく楽しくできたらと思います。怖いと噂の演出の森岡さんに負けないように、“國森やってやるぞ!”という意気込みで頑張ります」

北原「一緒に闘うよ! 頑張りましょう! かねてから戦争の物語は興味があり挑戦したいと思っていたので、夏にこのような機会を頂いて嬉しく思います。まだコロナ禍でなかなか劇場に来てくださいと大声で言いづらい状況ではありますが、観に来ていただけたら嬉しいです。
戦争をしていた時代の事が薄れてきていると思うので、この舞台を通して発信していくことによって、人々の記憶から戦争が消えないように、その役割を少しでも担えたらと思います」


(取材・文&撮影:谷中理音)

プロフィール

北原里英(きたはら・りえ)
1991年6月24日生まれ、愛知県出身。
AKB48グループでの活動後、NGT48に移籍しキャプテンを務めた。卒業後も舞台やドラマ、映画、バラエティーほか幅広く活躍中。主な作品に舞台『新・幕末純情伝 FAKE NEWS』主演・沖田総司役、映画『サニー/32』、ドラマ24『フルーツ宅配便』など。7月放送開始、テレビ東京『女の戦争 バチェラー殺人事件』に現在レギュラー出演中。

國森 桜(くにもり・さくら)
1999年4月2日生まれ、広島県出身。
2017年に応募総数約5,000人の中から選ばれ、秋元康プロデュース「劇団4ドル50セント」の劇団員として活動を開始。
主な出演作にTBS『チア☆ダン』、日本テレビ『PRINCE OF LEGEND』、ライフカード「未来は、その手の中にある」篇TVCMなど。

公演情報

“STRAYDOG” Produce
夕凪の街 桜の国

日:2021年8月4日 (水) ~2021年8月8日 (日・祝)
場:CBGKシブゲキ!!
料:S席8,500円
  A席 一般6,000円 
  A席 U-18割引[18歳以下]3,000円
 (全席指定・税込)
HP:http://www.straydog.info/index.html
問:ストレイドッグプロモーション
  mail:s-pro@straydog.info

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