十三代目市川團十郎白猿の襲名披露と、八代目市川新之助の初舞台を記念した公演『伝承への道』が3月に行われる。本来2020年だった襲名予定がコロナ禍で延期され、昨年ようやく襲名となった團十郎は、今の心境を次のように話す。
「2022年11月は、祖父の十一代目團十郎襲名から60年、七代目團十郎が“歌舞伎十八番”を制定してから190年です。そして、三代目、四代目、五代目、六代目、七代目の襲名披露は全て11月でした。全く予期していなかった新型コロナウイルスで、世の中ががらりと変わってしまいましたが、このタイミングでの襲名は、自然な成り立ちなのかもしれないと思うようになりました。
海老蔵としての18年間で経験したことが、自然と團十郎に繋がっていくのだろうと、今は、気負い過ぎないことも大事なのではないかと感じております」
昨年から襲名披露興行が行われている中、同公演は成田屋親子3人が出演するとあって、ひときわ注目が集まる。
「十三代目市川團十郎白猿を襲名させていただくにあたり、“伝統の継承、未来へ”というものが舞台に立つうえで、私の使命なのではないかと考えるようになりました。お陰様で娘は四代目市川ぼたんを、息子は八代目市川新之助の初舞台を踏み、名前を受け継ぐことができましたので、本格的に“伝承への道”を切り拓いていきたい、という想いでこの公演を開催させていただくことになりました」
ブログでは團十郎に見守られ愛らしい姿を見せる子どもたちも、立派な舞台役者への道を歩み始めている。そんな2人に、舞台に立つ楽しさを訊ねると、ぼたんからは「舞踊は、身体で表現する難しさはあるのですが、私にとっては父から教わる楽しさがあります」。そして新之助からは「お客様が歌舞伎を観て喜んでくださるところです」という答えが返ってきた。
初めて歌舞伎を観る人にとっても良い機会になりそうな今回の公演。最後に團十郎からメッセージをいただいた。
「歌舞伎は難しいと思われがちですが、全くそんなことはございません。同じ時間に役者とお客様が1つの空間を共有し、皆で作るのが舞台です。お客様ご自身もエンターテインメントの一員として、ぜひご参加いただき、何も考えずに楽しんでいただきたいです」
(取材・文:西本 勲)
市川團十郎さん
「争いの無い、思いやりや愛の溢れた、芸術性の高い世界に住んでみたいですね」
市川ぼたんさん
「私は昨年12月の父と弟の襲名披露公演で、女性としては約60年ぶりに歌舞伎座で出し物をさせていただいたので、60年前に出し物をされた三代目市川翠扇さんにお会いしてみたいです。そして、初代市川團十郎さんにもお会いできるような世界に住んでみたいです!」
市川新之助さん
「全てが緑に覆われたような森の中で、木のお家があり、お水は川で汲んできたり、火を起こしをしたりするようなところに住んでみたいです! 小高い丘にお家があり、その下に川が流れているようなイメージです。村中の人とお友達になって鬼ごっこしたりして遊びたいです」
プロフィール
市川團十郎(いちかわ・だんじゅうろう)
1977年生まれ、東京都出身。1983年5月、歌舞伎座『源氏物語』の春宮で初御目見得。2004年、十一代目海老蔵を襲名。“歌舞伎十八番”、“新歌舞伎十八番”の復活に意欲的に取り組む一方で、2013年に立ち上げた自主公演「ABKAI」や、2015年から始まった「六本木歌舞伎」など、歌舞伎の新たな可能性にも挑戦。海外公演も多数。2022年11月、12月に十三代目市川團十郎白猿を襲名。
市川ぼたん(いちかわ・ぼたん)
2011年生まれ、東京都出身。2014年、「古典への誘い」八千代座公演の『芝居前三升麗賑』で初御目見得。2019年8月、シアターコクーン「市川會」にて『羽根の禿』の禿で四代目市川ぼたんを襲名。ドラマ出演や声優業など、舞台以外でも活躍している。
市川新之助(いちかわ・しんのすけ)
2013年生まれ、東京都出身。2015年11月、歌舞伎座『江戸花成田面影』で初御目見得。『源氏物語』の光の君、『橋弁慶』の牛若丸など大役に次々と挑戦。2022年11月、12月に八代目市川新之助の名で初舞台を踏む。
公演情報
市川團十郎・ぼたん・新之助 成田屋親子 『伝承への道』
日・場:【東京国際フォーラム ホールC】2023年3月30日(木)
【神奈川県民ホール】2023年3月31日(金)
料:一等席11,000円 二等席10,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.zen-a.co.jp/naritayaoyakokai/
問:Zen-A tel.03-3538-2300(平日11:00~19:00)
協力:松竹株式会社