名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』が新作歌舞伎に! 壮大なスケールでゲームの世界観を歌舞伎で表現

名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』が新作歌舞伎に! 壮大なスケールでゲームの世界観を歌舞伎で表現

 世界累計出荷・DL販売数2110万本以上を誇る大人気ゲーム『ファイナルファンタジーX』が、この春、新作歌舞伎に! これまで『NINAGAWA十二夜』、『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』、『風の谷のナウシカ』で歌舞伎の新たな世界を切り開いてきた尾上菊之助が企画・演出を手がけ、ゲームと歌舞伎の融合でまた新風を巻き起こす。

 キャストには、菊之助のほか、中村獅童、尾上松也、中村錦之助、坂東彌十郎、中村歌六ら豪華顔ぶれが集結。会場は歌舞伎初の360度客席回転劇場・IHIステージアラウンド東京(豊洲)で、旅の始まりから終わりまでゲームの世界観を歌舞伎の舞台で表現していく。菊之助に本作へかける想いを聞いた。


―――『ファイナルファンタジーX』を歌舞伎にしようと考えたのはなぜでしょう。発想のきっかけをお聞かせ下さい。

 「2020年のステイホーム期間中、先行きの見えない日々をどうにかしたいと考えながら過ごしていて、その気持ちをすくい上げてくれたのが『ファイナルファンタジーX』でした。もともと『ファイナルファンタジーX』が大好きで、久しぶりにゲームをしてみたら、キャラクターたちが葛藤を乗り越えていく様やどんな困難にも諦めずに前へ進んでいく姿にものすごく励まされて。私に限らず、コロナ禍でゲームに力をもらった人は多かったのではないかと思います。きっとこの大変な時代において力強いメッセージになるのではないかと想い、そこから構想が始まりました」

―――アーロン役の中村獅童さん、シーモア役の尾上松也さんをはじめ、キャストには豪華役者勢が顔を揃えました。

 「一人ひとりにお電話をして、“この作品で元気をお届けしたい”という想いを直接お伝えさせていただきました。みなさんいつも一緒にいる仲間ですから、その演じている役や普段の雰囲気も相まって、この方にこの役をというのは私の中で自然と決まっていったように思います。なかでも剣豪のアーロンはティーダを導き、そして見守るというとてもステキなキャラクターで、これは絶対に獅童さんに演じてもらいたいと考えました。

 『ファイナルファンタジーX』を歌舞伎にするとお伝えしたら、みなさん最初は驚かれましたね。それでも二つ返事と言いますが、ぜひ一緒にやりたいと口々に言ってくださって、本当にありがたい限りです。なかには『ファイナルファンタジーX』をよく知らない、ゲームをしたことがないという方ももちろんいました。ゲームの説明に役立ったのが攻略本で、キャラクターの抱えている背景や歴史まで詳しく書かれているので、それを基にそれぞれの役柄を皆さんにお伝えしていきました」

―――今回は歌舞伎初の360度シアター・IHIステージアラウンド東京で上演されます。どのような演出を考えていますか?

 「『ファイナルファンタジーX』は場面数が多いので、転換がスムーズにできるという意味でも360度シアターと親和性がとてもあるのではないかと思いました。ただ廻る機構や4面の舞台、8メートルの巨大スクリーンをどう効果的に使うか、全てが未知なる挑戦です。水の中で立ちまわりのアクションをする場面があるのですが、今回は歌舞伎のように本水を使わずに、最先端のテクノロジーを駆使し、あっと驚いていただける唯一無二の世界観を表現していけたらと考えています。映像を歌舞伎で使うのはあまりないことですが、スクリーンと役者が絡む演出も考えていて、どんな化学反応が起きるのか私自身も楽しみです。『ファイナルファンタジーX』と歌舞伎を融合した世界をお客様に楽しんでいただけるよう、見所をしっかり作っていきたいと思っています」

―――1日がかりでの上演という壮大なスケール感も話題です。体力作り、モチベーションキープの秘訣をお聞かせください。

 「『風の谷のナウシカ』も長時間の上演でしたが、今回はステージも違うのでまた勝手が違う。体力作りのコツというのは私の方が逆に聞きたいくらいで(笑)、やはり普段の生活を大切にすることしかないと思うので、あえて言うなら睡眠や食事に気を付ける程度でしょうか。睡眠は6〜7時間は絶対に取るように。食事は白米より5分づきの玄米を食べている方が調子がいいので、それと味噌汁を家内に作ってもらっています。観客のみなさんも長時間の観劇を快適に楽しんでいただけるよう、劇場のシートに特別なクッションをあしらい、さらに近隣のホテルと連携した日帰りプランや宿泊プランもいろいろご用意しました。私自身のご褒美は、自然を感じに山へ行くこと。最近ハマっているのが青森の白神山地で、次の休みが来たらまた行ってこようかと今から楽しみにしています」

―――古典とはまた違う新作歌舞伎ならではの魅力をどう考えますか?

 「新作歌舞伎を作るときにいつも大切にしているのは、歌舞伎を観たこと無い方も、そして普段から歌舞伎をよく観に来て下さる方にも楽しんでいただける作品にすること。若い方からご年配の方まで、世代を超えて交流をしていただけるのが新作歌舞伎の魅力だと考えています。1回で聞き取れる平易な言葉を使うのも新作歌舞伎の良いところで、歌舞伎を観た事無い方には本作品を通して歌舞伎の楽しさを感じてもらえるように、また歌舞伎をよく観に来てくださる方には歌舞伎の新しい演技体や手法を堪能していただけるような作品作りをしています」

―――本作を通してお客様に届けたいものとは?

「日本人が大事にしてきた心をエンターテインメントとしてお伝えしてきたのが歌舞伎であり、先人たちの意志を受け継ぐという意味でも、日本の心が大切に描かれている原作を新作歌舞伎の題材にするよう常に務めてきました。『ファイナルファンタジーX』というゲームに込められているのも、大いなる希望と深い愛なんですよね。絶対に諦めないと前を向き、それぞれが相手を思いやり、力を合わせ、葛藤しながら旅をする。人間が大事にしなければいけない心が込められた作品だからこそ、この大変な時代のなかで生きる皆さんに本作品のメッセージを届けたいと思っています」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)

 

プロフィール

尾上菊之助(おのえ・きくのすけ)
1977年8月1日生まれ。1984年2月、歌舞伎座『絵本牛若丸』で六代目尾上丑之助を名乗り初舞台を踏む。1996年5月には『弁天娘女男白浪』の弁天小僧菊之助ほかで五代目尾上菊之助を襲名。『伽羅先代萩』の政岡、『摂州合邦辻』の玉手御前、『義経千本桜』の知盛・権太・忠信、『春興鏡獅子』、『京鹿子娘道成寺』など、立役・女方として、時代物・世話物・舞踊と幅広いジャンルで数々の大役を務める。発案・主演を務めた、シェイクスピアを歌舞伎に翻案した『NINAGWA十二夜』を2005年に実現させ、2019年には新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』で主人公ナウシカを、2022年の再演ではトルメキア皇女クシャナを演じた。
主なTVドラマ出演作品に、TBS『下町ロケット』、『グランメゾン東京』や、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』など。2023年1月にはNHK土曜ドラマ『探偵ロマンス』に出演。

公演情報

木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』

日:2023年3月4日(土)~4月12日(水)
場:IHIステージアラウンド東京
料:前編・後編通し SS席[特典付]32,000円 S席[特典付]28,000円 A席24,000円
  B席19,800円
  ※他、前編/後編のみチケットあり。詳細は公演HPにて(全席指定・税込)
  ※新型コロナウイルス感染対策並びに舞台機構の確認のため、前編終了後、すべてのお客様に一度、劇場外にご退館いただきます。
HP:https://ff10-kabuki.com/
問:ステージアラウンド専用ダイヤル tel.0570‐084‐617(11:00〜16:30)

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