歌舞伎俳優・中村米吉、外部公演初出演! 「女方として培ってきたことを大切に演じたい」

歌舞伎俳優・中村米吉、外部公演初出演! 「女方として培ってきたことを大切に演じたい」

 ジャン・ジロドゥの最高傑作であり不朽の名作と言われる『オンディーヌ』。12月より、主演・中村米吉で上演される。中村は本作が外部公演初出演となり、「最初はとても悩みました」と語る。

 「ちょうど歌舞伎の公演が一番多い時期にあたり、また私自身、歌舞伎をこれだけ長い時間離れるのは初めてのこと。ただ父(中村歌六)に話をしたところ、『それは面白いね!』と言ってくれて。父は若い頃、劇団四季で研究生のようなことをしていたので、浅利慶太さんがこの作品を大変愛していたこと、『番町皿屋敷』と本作は人間の愛を最も美しく描いた作品だとおっしゃっていた、というのをかねがね聞いていました。そこに何かご縁も感じ、精一杯勤めたいと思っています」

 歌舞伎界期待の若手女方として活躍し、現在人気急上昇中。ビジュアル公開時にはまずその圧倒的な美しさで話題を呼んだ。

 「足元がスースーして、女性のみなさんは大変ですね(笑)。洋装とは違いますが、例えばどうすれば華奢に見えるかなど、今まで女方として勉強してきたことの応用でもあって。どんな作品でもそうですが、これまで培ってきたことをどれだけ活かせるかが大切だと感じています」

 オンディーヌは漁師夫婦に育てられた水の精。ある日、遍歴の騎士・ハンスと恋に落ち、人間界で暮らし始める。だが彼女の無邪気なふるまいを恥じたハンスは、元婚約者に心を移し――。

 「オンディーヌは純粋でとても無垢。ときにストレートな物言いをするけれど、それをどう悪意なく素直な女性としてお見せできるか。歌舞伎の娘役でも言えることですが、清らかな色気でないと下品に見えてしまいかねない。可愛く健気で、だからこそ悲しい恋になる、そんな役を演じられたらと思っています」

 自身にとって20代最後の年でもあり、「これは本当に大きな挑戦」と意気込みを露わにする。

 「玉三郎のお兄さんに『30歳になるまでに女方の基本を身につけ、その上に役の心を乗せなければいけない』と言われたことがあり、それをずっと自分の指針にしてきました。今まで勉強してきたことをこうした形で問われるというのは非常に刺激にもなりますし、30代に向け大きな足がかりになる公演だと感じています。歌舞伎から半年以上離れる訳ですが、それだけの意義ある公演にできるよう真摯に臨み、そしてこの不朽の名作に恥じないオンディーヌを演じられるよう頑張りたいと思います」

(取材・文:小野寺悦子 撮影:佐藤雄哉(平賀スクエア))

年末ジャンボが当選! 好きに使えるならば、どう使う?

「夢が広がるアンケートですが、やっぱり何かしらの不労所得を確保しようかと……あ、そういうことではないですね(笑)。まずは日頃お世話になってる人たちにお礼をすることが1つ! あとは自分の観たい歌舞伎芝居を、自分の理想的な配役で上演したいです! 自分が主役をやる……って言いたいところですが、さすがちょっとおこがましいかな、と慎ましいところを見せておきます(笑)」

プロフィール

中村米吉(なかむら・よねきち)
1993年、五代目中村歌六の長男として生まれる。2000年7月、歌舞伎座『宇和島騒動』の武右衛門せがれ武之助で父・歌六の前名を継ぎ、五代目中村米吉を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、本格的に歌舞伎役者として歩み始める。2022年、新作歌舞伎『風の谷のナウシカ 上の巻―白き魔女の戦記―』ではナウシカ役を勤めた。2021年、第42回松尾芸能賞 新人賞受賞。2023年春には新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』にヒロインのユウナ役で出演予定。

公演情報

『オンディーヌ』

日:2023年1月6日(金)~11日(水) ※他、愛知公演あり
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:S席9,500円 A席[バルコニー席]8,500円(全席指定・税込)
HP:https://artistjapan.co.jp/ondine2022-2023/
問:アーティストジャパン tel.03-6820-3500(平日11:00~18:00)

Advertisement

インタビューカテゴリの最新記事