彩吹真央が届ける“心の世界” 「人間として生きてきた部分と、役者として生きてきた部分を総動員させて挑みます」

彩吹真央が届ける“心の世界” 「人間として生きてきた部分と、役者として生きてきた部分を総動員させて挑みます」

 『アルジャーノンに花束を』など数々の名作で知られる、作家ダニエル・キイスの傑作小説『五番目のサリー』が舞台化される。主人公・サリーは、自分の中にデリー、ノラ、ベラ、ジンクスという四つの異なる人格を持つ、“五重人格”のヒロイン。この難役に挑む彩吹真央は「まずはまっさらな気持ちで原作を読んだ」という。

 「人間の精神世界が分かりやすくかつ面白く描かれていて、のめり込んでしまい、あっという間に読み終えたんです。サリーは役者冥利に尽きる役だなと思いましたし、荻田さんがどのような演出をされるか、サリーを通して私をどう魅せてくれるのか。どのように新しい発見をさせてくださるのだろうと、ワクワクが止まりません」

 脚本・演出の荻田浩一とは、宝塚歌劇団在籍時代から続く縁で、卒業後も多くの作品を共に作り上げてきた。だからこそ覚悟も必要、と彩吹は語る。

 「一つの作品の中で色んな役を複数演じる機会は今までに何度もありましたが、多重人格の役は初めて。台本を読みましたが、今までとは違う引き出し、体力的・精神的にも使ったことのない力を思い切り使わないとできない役なんだろうなぁ、と。大きなハードルに向かっていく覚悟を決めました」

 その傍らにはクタクタになった原作本が。「台本に書かれていないところは身体に染み込ませておきたい」と作品にかける想いが伝わってくる。そして注目すべきは別人格の四人について、それぞれ配役がなされているという点だ。

 「このお話を頂いた時には、沢山の役をどう演じるのだろうと(笑)。荻田さんによると、私はサリーだけを演じるのではなくて、やはりそれぞれの人格も演じつつ、別人格と同時に同じセリフを言ったり共有したり、時には対話的なこともあるそうです。面白いのは男性も別人格を演じられるということ。すごく興味を感じたし、見どころだと思います。ジェンダーを超えたひとりの人間としての豊かさみたいなものを、このキャスティングから感じられますよね」

 歌唱力にも定評のある華やかな顔触れが揃っているが、あえてストレートプレイで贈る本作。彩吹をはじめ、舞台経験豊富な実力派キャストたちに期待が高まる。

「サリーはどんどん成長していきますし、どう変わっていくのか、そんな彼女に共感していただけたら。そしてなぜタイトルが“五番目のサリー”なのかを見届けてください」

(取材・文:谷中理音 撮影:佐藤雄哉)

近頃日本でも定番イベント化したハロウィン。「一度はやってみたい!」「過去やったこれはハマった!」「これは見ていて面白かった!」という仮装を教えてください。

「残念ながら、ハロウィンの仮装はあまり経験がなく…… でも仮装の思い出といえば、宝塚歌劇団を卒業した次の日、雪組生全員で一泊二日旅行でのこと。下級生の幹事さんから手渡されたのが学ラン。水夏希さんや未来優希さんらと共にその学ランを着てポーズをとると黄色い歓声が上り、撮影のフラッシュを浴びました。
 男役は昨日で卒業したのになぁ……と思いましたが、きっとこんなにキャーキャー言われる事ももう無いかもしれない……と男子高校生になりきって、そのコスプレを満喫したことが忘れられません」

プロフィール

彩吹真央(あやぶき・まお)
 6月9日生まれ、大阪府出身。1994年宝塚歌劇団に入団。繊細な演技力と豊かな歌唱力を持つ男役スターとして活躍。退団後の主な出演作に、ミュージカル『シラノ』、『End of the RAINBOW』、舞台『アドルフに告ぐ』、ミュージカル『フリーダ・カーロ』、こまつ座『イヌの仇討』、ミュージカル『マリー・アントワネット』、『ラヴ・レターズ』等、ジャンル問わず多数出演。作品ごとに幅広いキャラクターを演じ分ける。
 今年11月には『宝塚歌劇 花組・月組 100t h a nniversary「Greatest Moment」』が控えている。

公演情報

舞台『五番目のサリー』

日:2021年10月21日(木)~30日(土)
場:よみうり大手町ホール
料:9,800円(全席指定・税込)
HP:https://music-g-h.com/stage/sally
問:キョードー東京 tel.0570-550-799
  (平日11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)

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