俳優・関口敦史が主宰する演劇ユニットが始動 売れない役者と仲間たち アラフォーの男4人が織りなす物語とは

俳優・関口敦史が主宰する演劇ユニットが始動 売れない役者と仲間たち アラフォーの男4人が織りなす物語とは

 ONEOR8を始め、いくつもの作品に客演する関口敦史が、演劇ユニット「ツケヤキバ」を旗揚げする。これまで関口自身が出会ってきた気の合う面白い演劇人達と、本当にやりたい演劇を求め探究するユニットだという。そんな心意気で創り上げる旗揚げ公演の作品は、このところ高い注目を集めている劇作・演出家、深井邦彦と田村孝裕の2人を脚本と演出に迎えた書き下ろしとなる。そこで旗揚げにあたっての気持ちや、作品についての話を関口、深井、田村の3人に伺うこととした。
 取材当日。インタビュールームに3人を招き入れた時に気づいたのが、三人三様の独特な雰囲気だ。どこまでも自由な関口とちょっと保護者風な田村。そしてこの2人に憧れのまなざしを向ける深井。この見立ては果たして合っているのか。そんなことを考えつつ、インタビューは始まった。

―――まず旗揚げにあたって、関口さんが深井さんの脚本、田村さんの演出を選んだ理由を聞かせてください。

関口「深井君と出会ったのは結構最近のことです。僕が制作で関わった作品の脚本が彼でしたがそれが凄く面白かったので、それから深井君の作品に出演したいと思ってました。だからこの企画を進めるとき、真っ先に頭に浮かびました。それと僕がやっている下北沢のバーにもお客さんとして来てくれるので、誘いやすさがありましたし。田村さんは……演出を誰に?と考えたら、知り合いは田村さんしかいなくて」

田村「(笑)」

―――関口さんは田村さんの後輩(※舞台芸術学院)なんですね。それに田村さんが主宰するONEOR8にも何度も客演していますよね。“アニキ”と慕っているとも聞きました。

関口「若い頃、田村さんに顔が似てると言われたことがあって、それならこの際、アニキと呼ばせてもらおうと(笑)」

―――田村さん、深井さんから見た関口さんの人となりも伺いたいです。

田村「面倒くさいんです。可愛い後輩だし世話にもなっているけど、性格に難があって(笑)。酒を飲めばかんしゃく持ちになるし、先輩後輩関係なく態度はデカいし。他人から見ると好き嫌いは分かれるタイプでしょう。でも付き合ってみると面白い奴なんです。そんなところが役者として活かされれば良いなと思いますね。バーをやっている今はともかく、その前はひどい人生でしたから(笑)。でもそれが滲み出ればいいなと思います」

深井「役者としての関口さんは2度ほど観たことがありますが、やんちゃな先輩といった印象ですね。話を聞くと酒での失敗がとても多いようなんですが、でもそれは僕にとって格好良く映ります。昭和の演劇人みたいでね。そんなことも引き受けたきっかけです」

関口「でも、今は酒をやめたので、一切問題は無いですけれど」

―――物語は売れない役者と、シェアハウスで一緒に暮らす男たちの話と聞きました。

深井「2人と話す機会があって、そこから生まれています」

―――田村さんの演出プランはもう固まっているんでしょうか。

田村「まだですが、まあ俺たち世代の9割の演劇人は、物語に出てくるような想いと経験をしていると思います。そこを突いている深井君の視点とどう向かい合うかを考えてます。売れない役者の話ですから。アラフォーの4人がルームシェアして……僕にとってはしんどい物語でもあります。社会的地位とか社会への貢献とか。もっというと生きる意味について突きつけられている気がするんです。深井君なりの僕達世代への想いが描かれていると思います」

関口「脚本を読んでいると暗くなりますね(笑)。楽しいクリスマスを過ごそうと思っていたけど暗くなりそうだなあ。まあ覚悟を決めてやりますが」

―――キャストは関口さんが選ばれたんでしょうか。

関口「ええ、僕が好きなメンバーを集めました。劇場の規模も考えると、男4人が良いかなと思って。共演経験があるのは山口さんだけですが、他もみんな昔からの仲閒です。富川君は学校(※舞台芸術学院)のひとつ下の後輩で、在学中から言い役者だと思ってました。でもあっちは僕になついてくれなくて(笑)、それが20年かけてようやく一緒にやろうと言えるようになりました。今村裕次郎さんは旗揚げに尽力してくれそうな、期待値の高い先輩です。このメンバーなら年末に花を咲かせていい年が越せそうな気がします」

深井「僕としては、田村さんの演出でこの4名に演じてもらうだけで夢のようで、関口さんには感謝ですよ」

―――ここで改めて関口さんに伺いますが、自分が主宰するユニットを立ち上げようと思った動機は?

関口「コロナ禍の3年間は僕の人生で色々な変化がありました。離婚とかバー(THEATER SIDE BAR)の開店、バイクの免許への挑戦とか、色々なことを始めるきっかけがコロナ禍でした。その中でまだやっていないのが自分が主役となる公演でした。過去色々な劇団さんにお世話になりましたが、昨今はなかなか呼んでくれなくなったので、こうなったら自分でやるしかないと思ったんです。ONEOR8では絶対主役にしてくれないですし」

田村「絶対しないよ(笑)。僕は敦史を公私ともに知っているので、尚更ですね」

―――では最後に、3人からのメッセージをいただきたいです。

深井「本当に憧れの先輩と関われることや、役者の話を書けるのが光栄で、自分の中の階段をひとつ上がった気持ちです」

田村「主役・関口敦史を観に来てください。もうそれだけです」

関口「公演が年末ギリギリですから、年の瀬に見て良かったと思える作品に出来れば良いなと思ってます」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

関口敦史(せきぐち・あつし)
東京都出身。役者を志し、舞台芸術学院で演劇を学ぶ。卒業後、小劇場を中心に活動を始め、新宿芸能社、劇団東京マハロ、下北澤姉妹社などの作品に参加。舞台芸術学院の先輩にあたる田村孝裕が主宰するONEOR8の作品には何度も客演している。下北沢のバー「THEATER SIDE BAR」では店主を務める。

田村孝裕(たむら・たかひろ)
東京都出身。劇作家・演出家。1998年、舞台芸術学院47期生の仲閒と共に、劇団ONEOR8を旗揚げ。以来、劇作・演出家として劇団の全作品を手がける。その他、小劇場からコメディ作品、劇団椿組の野外劇、舞台『サザエさん』のような商業公演まで、様々なジャンルに脚本を提供する。これまで3作品が岸田國士戯曲賞にノミネートされ、『世界は嘘で出来ている』は第18回鶴屋南北戯曲賞候補になっている、現在注目の劇作家。

深井邦彦(ふかい・くにひこ)
兵庫県出身。劇作家・演出家。2013年に個人の演劇ユニットとしてHIGHcolorsを旗揚げ。翌年には劇団の形となって全作品の作・演出を担当している。「激しさと包容力」をテーマに掲げ、マイノリティな悩みと向き合う作品を作り続けている。

公演情報

ツケヤキバ旗揚げ公演『ぬるま湯のあとさき』

日:2022年12月21日(水)~27日(火)
場:下北沢 OFF・OFFシアター
料:【劇場】4,000円
    初期割[11/21 18時・22 14時]3,500円
    学生3,000円 ※要学生証提示
    (全席自由・税込)
  【配信】2,500円
    ※Confetti Streaming Theaterにて
     12/22より配信(税込)
HP:https://tukeyakiba.wixsite.com/home
問:ツケヤキバ
  mail:tukeyakiba20221219@gmail.com

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