自分たちが演じたい曲を自由に選ぶ公演企画『花乃公案』 平たく言えば能はヒューマンドラマ。構えず自分なりに楽しんで欲しい

 観世流に属する同世代の能楽師3人が集まって定期公演を行う『花乃公案』。今回で8度目となるが、5年前、2017年暮れに第1回を行うまでには10年近くもの歳月が必要だったという。そもそも何故3人でこうした自主公演を行おうとしたのだろう。

浅見「私は叔父(浅見真州)からそろそろ会を立ち上げたほうがいいと勧められていましたし、普段やりたい曲を自由に出来るわけではないので、自分で曲を選べる会をやるべきだと思いました。周囲の勧めもあって普段から一緒にいる2人と始めたんです」

北浪「私の場合、どうしても主役を演じる機会は少ないので、その機会を作りたいと思ったことはありますね。そして周りに同世代で価値観も近い仲間がいて、1人より3人の方が動きやすいと考えました」

馬野「以前いくつかの会を運営していましたが、九州の仕事が増えて自分自身のプロデュース公演は出来なくなっていたんです。そんな時に同じ志、価値観を持てる良い仲間に恵まれました。プライベートでも仲が良くて、お互いに遠慮が無いので、風通しがいい。出会いは同じ日の楽屋だったしね」

浅見「みんな性格が違うんです(笑)。でも志が同じなので補えているわけで」

 番組(プログラム)は舞囃子、能2番、狂言1番という構成。3人だから能3番、では無い。

浅見「それだと時間が長くなりすぎますから。それぞれ自分がやりたい大曲を選びますが、今回は私が舞囃子で『養老』を舞います。単純にスッキリしている曲ですし、これはお能の会なので、他の2人の邪魔をしないようにと選びました(笑)」

北浪「私の『松風』は、昔から“熊野、松風に米の飯”と言われるほど、飽きの来ない重ねる毎に味わいが出る曲で、いつか演じたいと思っていました」

馬野「私の『安宅』は歌舞伎の勧進帳のもとになった曲です。17年くらい前、30代で演じましたが、力任せにやってしまった部分もあって、そろそろ経験も積んだのでやってみようと思いました。役者冥利に尽きる能ですね」

 能というとどうしても難しく敷居が高いイメージがあるが、話を聞いていると凄く興味が湧いてきて、肩の力を抜いて足を運びたくなる。

馬野「敷居が高いと言われますが、平たく言えば演劇、ヒューマンドラマなんです。物語もそれほど複雑ではないし。だからそれほど構えずに観てもらいたいです。つまらない曲は有りませんし、楽しみ方は百人百様でいいんです」

(取材・文:渡部晋也 撮影:山本一人(平賀スクエア))

プロフィール

浅見慈一(あさみ・じいち)
1964年生まれ、東京都出身。観世流能楽師・浅見真高の長男。3歳で仕舞『老松』にて初舞台。和光大学卒業後、本格的に能の道を歩み始め、父及び八世観世銕之亟に師事。1998年より、父が主宰する「代々木果迢会」の運営に携わり、定期公演やレクチャーなどを開催。普段は銕仙会に所属し、海外での公演経験も数多い。

馬野正基(うまの・まさき)
1965年生まれ、京都府出身。観世流能楽師・馬野義男の長男。2歳の時に仕舞『老松』にて初舞台。1972年、能『猩々』にて初シテ。幼少より父及び河村隆司に師事。東京藝術大学音楽科に進学し、卒業後は八世観世銕之亟に入門。1995年に独立、銕仙会に所属し、現在は九世観世銕之丞に師事。能面が好きで「愛車を売ってまでして欲しい能面を買った」という。

北浪貴裕(きたなみ・たかひろ)
1967年生まれ、東京都出身。観世流能楽師・北浪昭雄の長男。6歳の時に能『三井寺』の子方にて初舞台。子方での出演を終えた後、一旦は舞台からを離れるが、成蹊大学卒業後、本格的に能の道を志す。1990年、岡久広に入門。1996年、能『経正』にて初シテ。2000年に独立。現在観世会に所属し、自主公演会「播の会」を主宰する。

公演情報

第8回 花乃公案

日:2022年12月25日(日)13:00開演(12:00開場)
場:国立能楽堂
料:S席10,000円 A席8,000円 B席6,000円
  ※他、学生席あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:http://www.tessen.org/
問:花乃公案事務局(銕仙会内) tel.03-3401-2285(平日10:00~17:00)

インタビューカテゴリの最新記事