シテ方金春流能楽師× シェイクスピア劇演出家のタッグで挑む新作能の金字塔 能楽五流派の能役者が集結! 新境地の『鷹姫』を披露

 金春(こんぱる)流能楽師の山井綱雄が、新作能『鷹姫』を上演。1400年の歴史を誇る能楽最古の金春流でも本作を手がけるのは初となり、シェイクスピア劇演出家の木村龍之介を演出に迎え、能楽の可能性を切り開く。

山井「『鷹姫』には上演時に演出家を立てるという条件があり、ずっと能楽師が演出を兼ねてきました。能の既成概念を超えて革新的な世界を探るべく作られたのが『鷹姫』という新作能でもあり、そういう意味でも能に限らず可能性を探りたい。もともと原作はイェイツが能に感化され書いた作品で、きっとシェイクスピアに通じるものがある。そこで木村さんが一番適任ではと考えました」

木村「僕も常々能とシェイクスピアには通じるものがあると考えていて、お話を頂いた時は何か運命のようなものを感じました。シェイクスピアを演出していると、俳優の力というものが必要になってくる。日本における最強の俳優は誰かと考えた時、能楽師ではないかと行き着いて。実際山井さんを舞台で初めて観た時は、得体の知れない美しさに驚き、こんな人がいるんだと圧倒されました」

 本作の初演は52年前に遡り、新作能の金字塔として上演を重ねてきた。

山井「まず膨大な資料に目を通し、過去の舞台を検証していきました。台本は52年前のものをほぼそのまま上演しますが、あとはこの空間をどう解釈し、能楽師がどう動くか、木村さんの発想で演出して頂いています」

木村「山井さんに導いて頂きつつ、同じ精神を持つ者同士語り合いながらイメージを作り上げています。キャストの皆さんも錚々たる顔ぶれですが、こちらの提案に対して〝だったらこうしてみようか〞と受け入れ、実際にどんどん体現して下さっている。稽古では本当に凄い現場になっています」

 宝生流宗家宝生和英、観世喜正、櫻間金記ら、能楽五流派から能役者が集結。流派を超えたキャストが一堂に会し、金字塔の新境地に挑む。

山井「能楽は敷居が高いという方はまだまだ多い。能の精神を守りつつ普及発展させるために今何をすべきか、という意識を持たなければいけない。これは歴史への挑戦であり、変化の一つのきっかけになるはず。これだけの役者が集まったのは奇跡に近い。今お見せできる歴史的金字塔を、ぜひご享受頂けたらと思っています」


(取材・文:小野寺悦子 撮影:友澤綾乃)

近頃日本でも定番イベント化したハロウィン。「一度はやってみたい!」「過去やったこれはハマった!」「これは見ていて面白かった!」という仮装を教えてください。

山井綱雄さん
「2017年にカナダ・バンクーバーにて、現地カナダ人アーティスト・作曲家が能を元にしたオペラを作り主演させて頂いた折、稽古本番で約1ヶ月バンクーバーに滞在しました。その時に本場のハロウィンを体験しました。先ず驚いたのは本場のハロウィンは、子供向けのものであること(笑)。子供が主役。日本のように大人が騒いでいない(笑)。家族に連れられた子供が可愛らしく仮装し、家々を廻りお菓子を貰って廻るというものだということを初めて知りました(笑)。ガイコツやカボチャのお化けで色とりどりにデコレーションされた家々は、それはそれは美しかったです。そして、仮装した子供達も可愛らしく、西洋文化の真髄の一端を垣間見た気がしました。」

木村龍之介さん
「もしもハロウィンパーティーに呼ばれたら……そうだな、息子と妻と僕でバンドを結成しようと目論んでいるので、三人で仮装してスマッシング・パンプキンズっていうバンドの「1979」を演奏でもするかな。『どこで死ぬかわかんないや ただ塵になるのかな? 忘れさられて、この地球に溶けちゃってさ♪』なんて歌ってね。星がキレイで、嫌なことなんてこれっぽっちもないみたいに。」

プロフィール

山井綱雄(やまい・つなお)
1973 年生まれ、神奈川県出身。
シテ方金春流能楽師。重要無形文化財( 総合指定)保持者。公益社団法人「能楽協会」理事。公益社団法人「金春円満井会」常務理事。79 世宗家金春信高、80 世宗家金春安明、富山禮子に師事。祖父は金春流能楽師 梅村平史朗。5才初舞台、12 才初シテ、以降『乱』、『石橋』、『望月』、『道成寺』、『翁』、『正尊』、『安宅』を披演。山井綱雄 能の会「山井綱雄之會」を主宰するほか、初心者の為の能ワークショップ、学校公演なども多数開催。他ジャンル芸術家との共演、創作作品にも多数取り組み、能楽の新たな可能性に挑み続けている。

木村龍之介(きむら・りゅうのすけ)
1983 年生まれ、大分県出身。
東京大学英米文学専攻、シェイクスピアを研究。シェイクスピアシアター、蜷川カンパニー、文学座附属演劇研究所などで演技・演出を学び、劇団カクシンハンを立ち上げ、全作品を演出。2020年に劇団体制からプロデュースチームに移行し、劇団という枠組みを超えて国内外で演劇の面白さを社会に届けるプロジェクトを企画。最新のギミックや理論を駆使したシェイクスピア戯曲の連続上演は、その大胆な発想と斬新な解釈により国内外から注目を浴びる。

公演情報

第十六回山井綱雄之會
新作能『鷹姫』

日:2021年11月5日(金)18:30開演(17:45開場)
場:国立能楽堂
料:SS席12,000円 S席10,000円
  A席9,000円 B席7,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.tsunao.net/
問:山井綱雄事務所
  tel.070-6526-0270(平日10:00~18:00)

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