19世紀フランスを代表する画家・ロートレックの劇的な生涯を一人語りのミュージカルで描く、山本芳樹ソロミュージカル『ロートレック』がこの秋、3度目の上演を果たす。
「元々ミュージカル俳優の沢木順さんが、ソロミュージカルを追求する中で立ち上げ、上演を重ねていましたが、いずれ誰かに引き継ぎたいと考えていらして。2015年に僕が『PHANTOM』を演じた時にお話を頂きました。僕でいいのかと思いもしましたが、ミュージカル『オペラ座の怪人』でファントムを演じる沢木さんが、僕のストレートプレイのファントムを観て是非にと言って下さるのならばと決心し、2017年に初演を迎えました。
その時は照明も地あかりだけ。セットや小道具はなく、エレクトーン1台の演奏でひたすら語り、歌うという、落語からインスパイアされたスタイルを踏襲しました。でも、ライフワークにとバトンを託されたので、続けていくなら美術や映像を入れたいなと。そうすると、エレクトーンは素晴らしい楽器ですが、視覚的に現代感がある。アコースティックな感じでピアノ一本で演ろうと、僕が大きな信頼を置く後藤浩明さんに相談したら、ピアノ・パーカッション・ベースのバンドを提案してくれて。
登場人物それぞれに象徴的な小道具も取り入れて上演したのが2020年。それでもまだやり足りないことがあって、次に活かしたいという希望が生まれ、今回の企画を立てました。さらだたまこさんの脚本、玉麻尚一さんの音楽で構成された、ソロミュージカルとしての基本は変えませんが、今回は僕の希望でヴァイオリンにも入ってもらい、美術も増やし、シアトリカルな部分でさらに進化させられたらと思います」
たった1人で演じるミュージカルを、どう体感しているのか。
「はじめは、なんて孤独なんだろうと思ったんです。相手役もいないし、演出も僕自身だし。自分で何もかも決めていく事が新鮮な分、寂しかった。でもその孤独って自由でもあって、舞台で何にも縛られず全てを自分1人で作り出せる。大変ですが、今はその自由さをより感じるようになりました。作品が描くロートレックの人生や、曲の良さにやればやるほど魅了されているので、ロートレックを親密に感じていけたら彼の魅力がより深まると思っています。
沢木さんにご連絡したら、『ロートレックはあなたのおかげで生き続けてくれています。感謝します』とメールを頂けて。作品の立ち上げから関わってきた方々の想いがこもった作品です。大切に演じ継いでいくので、是非多くの方に観ていただけたら嬉しいです」
(取材・文:橘 涼香 撮影:岩田えり)
「夢野久作『死後の恋』。今から数年前、劇団の朗読公演でこの作品を朗読させていただきました。そのときに受けた衝撃……興奮……。公演終了時のご挨拶で『この作品の一人芝居を演ってみたい!』と語り、翌日SNSでも『運命を感じた…』と呟きました。それ以来、折に触れ思い出す『死後の恋』。いつか実現させたい夢……」
プロフィール
山本芳樹(やまもと・よしき)
兵庫県出身。1996 年、「劇団スタジオライフ」に入団。繊細で緻密な演技力と絶大な存在感で、劇団の看板俳優として、年齢・性別を超えた幅広い役柄を演じる。スタジオライフでの主な出演作品は、『トーマの心臓』、『PHANTOM』、『アドルフに告ぐ』、『はみだしっ子』、『アンナ・カレーニナ』など。外部出演も多く、翻訳劇・ミュージカル・ダンスパフォーマンス公演のほか、定期的に音楽ライブを行うなど活躍は多岐にわたる。
公演情報
Yoshiki Yamamoto Solo Musicalロートレック
日:2022年10月26日(水)〜30日(日)
場:ウエストエンドスタジオ
料:【劇場】5,500円(全席自由・入場整理番号付・税込)
【配信】2,800円(税込) ※Confetti Streaming Theaterにて10/27より配信
HP:https://yylautrec.com/
問:プティビジュー tel.080-4850-5351