演劇プロデュースユニットENGを主宰する佐藤修幸。プロデューサーとして『ラストスマイル』、『クレプトキング』、『ロスト花婿』などの作品を送り出し人気を集め、つい先日も第16回公演『S.O.S(エスオーエス)~save our souls~』を終えたばかりだ。
そんな佐藤がまたどうも面白いことを始めるらしい。それが俳優であり振付師として活躍している松本稽古を迎えて組んだ企画公演『ココロ踊ル』だ。
ボクラ団義の久保田唱の作・演出による新作『ダンスピアの消失』は、普通の芝居以上にダンスを取り入れるものの、ミュージカルとは違い、歌ではなくダンスと芝居の融合を目指す作品だという。つまり、これはプロデューサーとしての松本稽古デビュー作という事になる。松本と、ここではエグゼクティブプロデューサーとクレジットされている佐藤に話を聞いた。
―――この企画はいつものENG公演とも違うようですね。立ち上げるきっかけを教えてください。
佐藤「これまで自分が面白いと思ったことに対して自ら色々手配することでENG公演をいくつも行ってきました。でもこの辺でちょっと違った形でやってみたくなったんです。
何かというと自分以外の価値観も見たいし、観て欲しいということ。
それで誰かアシスタントプロデューサーとして動ける人はいないかと考えた時、松本さんが浮かびました。プロデューサーというのは芯……メンタルや情熱が強くないと駄目だと思いますが、彼女にはそれを感じたんです。また役者としても振付師としても引っ張りだこなのに、さらにYouTubeで展開しているプロジェクト「松本稽古の振リー素材」では、視聴回数最高50万なんて記録を出している。そんなことで向いているなと思ってご飯屋さんで口説きました。僕からのアプローチです」
松本「私は根本が役者なので基本的にはお声がけをいただいて、それに対して精一杯やろうという考えでやってきましたが、一方でプロデューサーに向いているといわれることが多かったんです。それが佐藤さんのように実績のある方にそう言われたら、そろそろ時期が来た、そして今がやるときだと思えて、決意が固まりました。それにお金のことは僕が受け持つので、君はクリエイティブな部分に注力して思い切りやってくれという佐藤さんは凄くかっこいいなと思います。周囲もそう言ってますよ」
佐藤「うそー(笑)」
松本「本当ですよ(笑)。今は役者だけでなく振付師としても年間100曲くらいやっているので、クリエイティブな部分に興味があります。声をかけられた以上は面白いものを作りたいですね」
―――なるほど、見初められたってとこでしょうか。そうなるとダンスが重要になる作品になりますか。
松本「ミュージカルをやりたいといったら佐藤さんは面白そうだといってくれたのですが、歌とダンスではなく、芝居とダンスを融合させたくなりました。そこに特化した他では観られない『Dance Acting Stage!!』を創りたいと思います」
―――作・演出はボクラ団義の久保田さんですね。
佐藤「これも松本さんからの提案です。久保田さんはENGでもよく関わってもらっているので僕からかと思われそうですが、違うんです」
―――キャストも踊れる役者さんが揃っているそうですね。これはお二人で相談して決めていったんですか?
佐藤「まずは彼女から提案された役者さんたちです。さらにENGによく出て下さる方も選びましたけど、半分くらいはENGへの出演経験は無い方ですね。
ENGで僕が決めるときはどうしても好きな役者さんしか声をかけないので、弊害としてだんだん偏ってくる。今回は松本さん主導なので僕も知らない方にも出会える。半分くらいは初対面ですね。現役のAKBメンバーと一緒するのも初めてですから」
松本「濵咲友菜さんですね。3月の(劇団)ズッキュン娘公演でご一緒したんですが、演技も素晴らしいし久保田さんの作品に出たいともいっていたので声をかけました。それと『~振リー素材』に参加してくれた方にはなるべく出て欲しいと思いました」
―――そうして集まったキャストの一覧を見て、どう思いました?
松本「最高です(笑)。芝居も出来てダンスも出来て、人間性もいい人が集まりました」
―――どんな作品になりそうですか?
佐藤「久保田さんの脚本は作品として筋が通っている。そこに自然とダンスが入るような、必然性がある世界観になるでしょう
松本「物語の原案は私からいくつか出して、その中から久保田さんに選んでもらいました」
佐藤「松本さんが出した段階のタイトルや世界観は割とダサい寄りで(笑)」
松本「それを久保田さんが凄くオシャレにしてくれました。どうも芝居とダンスは分断されがちなんですが、そこを融合して垣根をなくしたいという気持ちが振付師としてはあります。芝居の流れに沿って自然にダンスが始まる。そんな舞台にしたいです」
―――他に『Dance Acting Stage!!』としてのトピックスはありますか?
松本「アイデアはいろいろあります。例えば降らしものの中で踊るとか。それもただの雪とか枯葉が降る中ではなく、ストーリー上で意味のあるものが降ってきて欲しいです。あとはお客さん参加型の、新たな手拍子の開発とか(笑)。
客席の組み方も工夫していて、特典付きの『ココロ踊ル最前席』を用意します。最前列の人が、より“ココロ踊ル”演出にしたいと思っています」
―――そんな松本さんを見ていて、佐藤さんはどう思われますか?
佐藤「頼もしさを感じます。制作の部分にも気が付くし、社会人経験もあるので、そこも武器になっていると思います。結局演劇も社会と向き合っていないと、独りよがりになりますから」
―――社会人時代は社長賞などもとられたとか。
松本「ええ、それには演劇経験が凄く活かされた結果だと思います。それで社会に演劇の力は貢献できるし、両者を結びつけるのに自分は適任だと思って演劇を選びました。結局それからずっとフリーで今に至りますね」
―――――斬新なステージを期待しています。
(取材・文&撮影:渡部晋也)
プロフィール
松本稽古(まつもと・けいこ)
埼玉県出身。子供の頃、地元で行われたミュージカル企画で演劇と出会い、劇団鳥獣戯画の知念正文が総合演出を務める「劇団にこっとちゃ茶」に13歳で入団。その後、舞台を中心に活動を続け、明治大学にて演劇学を専攻。一般企業に営業職で就職し数々の賞を受賞する。ビジネスシーンに、演劇を通して学んだ力が大きく生かされることを確信し、「演劇の力を企業に貢献したい」という信念のもと2013年6月に退職。その後はフリーの舞台女優、振付師として活躍している。
佐藤修幸(さとう・のぶゆき)
東京都出身。高校時代、演劇部の顧問がみせてくれたサンシャインボーイズに感動して演劇に打ち込み、中央大学在学中に劇団DMFに参加。以降の劇団作品に出演する。そこから発展する形でプロデュースユニットENGを立ち上げ、プロデューサーとして数多くの人気作品を送りだしている。
公演情報
松本稽古企画公演『ココロ踊ル』supported by ENG vol.1 『ダンスピアの消失』
日:2022年11月9日(水)~13日(日)
場:六行会ホール
料:【劇場チケット】
ココロ踊ル最前席[A列・特典付]10,000円
SS席[B列~ D列]7,500円
S席[E ~ L列]6,500円
A席[M・N列]4,000円(全席指定・税込)
【配信チケット】
11/11[4カメ生配信]4,500円
11/13[1カメ定点生配信]3,500円(税込)
※Confetti Streaming Theaterにて配信
HP:http://eng-age.site/kokoroodoru/
問:ENG mail:eng.seisaku@gmail.com