大衆演劇から歌舞伎の世界へ。そして師匠に伴い入団した劇団新派では最年少の女形として大いに注目された河合宥季が、昨年末に林佑樹と改名し新天地に飛び出した。
「新型コロナ感染症の流行で、出演していた舞台の中止や演劇やエンタテインメントが敬遠されることを体験して、私もこれからのことを考えました。いっそ芝居以外の道へ、とも考えましたが、私から役者、舞台を引いてしまうとなにも残らないことに気が付きました。ならば舞台の大小は関係なく、さらに広い世界に出て行こうと。それには師匠や新派から離れるべきだと考えたんです」
その第一歩として10月に開催するのが『第一回林佑樹の會』。芝居仕立ての『男の花道』と長唄舞踊『女伊達』による二部構成の舞台だが、チラシには新派の大御所俳優も名を連ねている。
「もう、思ってもみないことでした。新派の重鎮である田口守さんや伊藤みどりさん、そして川上彌生さん等、みなさん協力してくださって。さらには特別出演して頂く林与一さんの存在も大きいです」
林与一といえば舞台はもちろん、テレビや映画で活躍し、誰もがよく知る大御所俳優。同姓ではあるが別に師弟関係というわけでもないというこの二人にはどんなご縁があったのだろうか。
「この数年、舞台でご一緒させていただくことが何度かありまして、昨年も『歌行燈』という作品で親子の役をさせていただきました。楽屋の席も隣同士でいろいろとおしゃべりしていたんです」
林与一の師匠といえば、戦前戦後の時代劇スターである長谷川一夫。若い方はピンとこないかも知れないが、1984年に没した後には国民栄誉賞を追贈されていると聞けば、どれだけ偉大な存在かを分かってもらえるだろう。そして林佑樹にとっても憧れの大スターの一人であることは言うまでもないが、今回の演目である『男の花道』は、その長谷川の代表作。
「長谷川先生をリアルタイムで知っているわけではないですが、ひいおばあちゃんにいろいろ話を聞いて憧れていました。『男の花道』も大好きで、と与一さんにお話ししたら、『貴方がやれば良いじゃないの』といっていただき、そんなおしゃべりがきっかけで今回の公演につながっていくんです」
こうして林与一の協力を得て、林佑樹は実に華々しい第一歩を記すこととなる。是非その晴れ舞台に駆けつけたいものだ。
(取材・文:渡部晋也 撮影:平賀正明)
「秋といえば、楽しみなのは栗です! そして大好物のお米と一緒に炊き込むのも大好きです! 毎年毎年、秋は栗ご飯の味が恋しくなります(笑)。
私の地元は島根で、小さい頃から美味しい栗、美味しいご飯が楽しみでした。実家の家の前はお米が採れる田んぼがあり、近所に栗の木があり、今思えばとっても贅沢な思いをさせていただきました(笑)。コロナが落ち着いたら、秋の味覚を求めて、島根に帰ってみたいものです」
プロフィール
林 佑樹(はやし・ゆうき)
島根県出身。子どもの頃から日本舞踊や地元で盛んな神楽を通して伝統芸能に親しみ、劇団朱雀を経て歌舞伎の世界に入る。三代目 市川猿之助門下となり市川猿珠の名前で活躍。その後師匠である河合雪之丞の劇団新派入団に付き添う形で河合宥季に改名して入団。劇団最年少の女形として活躍する。新派公演の他に自主公演も主宰するなど、精力的な活動を展開しているが、2021年に新派を退団。林佑樹の名で新たな一歩を記す。
公演情報
第一回 林佑樹の會
日:2022年10月26日(水)12:30/17:00開演 ※開場は開演の30分前
場:浅草公会堂
料:特等[特典付]10,000円 一等席7,500円 二等席5,000円 三等自由席3,000円(税込)
HP:https://kiyohito198.wixsite.com/hayashiyuukinokai
問:林佑樹の會 tel.080-5887-3188