豪華客船を舞台にした、ある怪盗の一幕喜劇 「暗転は使わない」 こだわり辿り着いた15周年

豪華客船を舞台にした、ある怪盗の一幕喜劇 「暗転は使わない」 こだわり辿り着いた15周年

 2007年の旗揚げ以来、セットチェンジによる場面転換や暗転を挟まない「一幕喜劇」を貫いてきた劇団暴創族。ラジオ局・結婚式場・理髪店・漫画家の仕事場などあらゆるシチュエーションを描いてきた同劇団が15周年記念公演に選んだ舞台は豪華客船だ。

 太平洋に浮かぶ、豪華客船。不思議な力を持つ海の秘宝“鴇色珊瑚”を盗み出すべく船に潜入した怪盗グッドモーニングが、乗り合わせたクセの強い乗客達が起こすトラブルに巻き込まれていくという。鴇色珊瑚のありかやその力、また怪盗に任務を依頼した謎の人物の正体など、物語は謎とスリルに満ちている。

 「最終的には宝を手に入れる、手に入れないはどうでもよくなってしまう感じがするんですよね。いつものドタバタした暴創族らしい話になると思います」と語るのは主宰の大坪雅俊。

 ワンシチュエーション、しかも暗転なしという縛りで劇作を続けることに関して「今でもすごく大変ですね。いつも『頼むから違う場面に飛ばせてくれ』と思いながら書いてます(笑)」とのこと。それでも現在の作風を貫く理由とは。

 「僕がお芝居を観はじめた頃、『暗転って邪魔だな』と思ったんです。もちろん暗転を効果的に使うお芝居もあったのですが、自分たちの都合の良いように使っている演出がすごく多い。僕は効果的な暗転を使う技術がまだないと思ったので、自分で旗揚げをするときにはいっそ暗転を使わないと決めたんです。基本的にダンスや殺陣はやらず会話劇のみで構成されているので、我ながら縛りは多いなと思いますね」

 それでも15年にわたり現在のスタイルをとってきたのは、会話劇がもたらす独特の魅力があったからだという。

 「人間と人間が醸し出すエネルギーは、会話劇が一番わかりやすいのではないでしょうか。どんなに上手な役者さんでも会話には相手が必要ですし、そこには1人だけでは生み出せない熱量が生まれます。役者さんの特徴や醸し出す雰囲気はそれぞれ違うので、現場でよく書き直しながら作っていますね。15周年を迎えましたが、これからも大まかな方向性は変えずにさらに会話劇を突き詰めていきたいです」

 今回は新たにプロジェクションマッピングを導入し、豪華客船の一夜を彩る予定だ。

 「配信も予定していますが、劇場でしか味わえないものもあります。皆さん、ぜひ観に来てください」

(取材・文:いつか床子 撮影:友澤綾乃)

暑い夏を乗り切るための、夏バテ防止の健康管理法を教えてください

大坪雅俊さん
 「夏バテには“牛乳”が良い。という話を聞いてから、暑い日の朝は必ず牛乳を飲むようにしています。暑さで失われる栄養素を効率よく吸収できるそうです。
 あとは、いつも通りの食事を心掛けてます。夏に限らず、朝はしっかり食べないと調子が悪いタイプなので。
 今年は真夏の稽古が続くので、牛乳パワーで乗り切ろうと思います」

プロフィール

大坪雅俊(おおつぼ・まさとし)
1980年2月14日生まれ、福島県出身。劇団暴創族主宰。高校卒業後、俳優の道へ。複数の劇団に所属し研鑽を積み、多くの舞台に出演。2007年「BOH! MIMISH(ぼう!みみっしゅ)」を旗揚げし、2013年「劇団暴創族」へ改名。現在まで全作品の脚本・演出を務めている。シチュエーションコメディの中でも、セットチェンジによる場面転換や暗転を使わない「一幕喜劇」にこだわり続ける。刺激的な劇団名とは裏腹に、ふんだんに散りばめられた笑いや表情豊かなキャラクター、最後にはホロリとさせるストーリーが持ち味。近作にFMラジオ局を舞台にしたコメディ『ラ・ラ・ラジオ物語』や、建て替えが決まった古い校舎で巻き起こるファンタジー・ロマンス・ミステリー『わたあめ物語』など。

公演情報

劇団暴創族 15周年記念公演『鴇色珊瑚物語』

日:2022年9月7日(水)~11日(日)
場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料:一般5,000円 高校生以下3,000円(全席指定・税込)
HP:http://gekidan-boh-sozoku.com/
問:劇団暴創族 mail:boh.sozoku@gmail.com

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