世界的振付家の代表作を上演 舞台上で表現したいのは“離れていく心”

世界的振付家の代表作を上演 舞台上で表現したいのは“離れていく心”

 20世紀を代表する振付家、ローラン・プティ氏の没後10年を偲ぶ特別公演『ローラン・プティの夕べ』が開催される。上演するのはプティの代表作であり、牧阿佐美バレヱ団との25年に渡る交流のきっかけになった『アルルの女』、そしてプティが牧阿佐美バレヱ団創立45周年を祝して振り付けた『デューク・エリントン・バレエ』だ。

 「昔ウィーンで『アルルの女』を観て、鳥肌が立つくらい衝撃を受けたのを覚えています。バレエでは珍しく男性中心で回っていき、最後のソロも印象的。憧れの作品なので、すごく楽しみです!」と語るのは、『アルルの女』でフレデリを踊る水井駿介。
 また同作でヴィヴェットを踊る青山季可も、「心から感じて踊ることによって、真実味がより強く出るように思います。これまでの人生経験を自分なりに噛み砕いて、思いをぶつけたいです」と意気込む。

水井「フレデリは舞台上に存在しないアルルの女に思いを馳せて、心ここにあらずな状態。でも許嫁であるヴィヴェットにも若干の情が残っています。ラストに向けてどのように自分の感情を持っていくかが難しいところだと感じていますね」

青山「ヴィヴェットは、フレデリの心をどうにかつなぎ止めたいと願う一途な女性です。こちらがどう反応するかで、フレデリの見え方も変わってくるかなと。お互いのコミュニケーションがすごく大切になると思います」

 2人がペアを組むのは昨年に続き2 回目。現在は綿密なリハーサルと相談を積み重ねながら互いの呼吸を合わせているという。

水井「プティさんの振付は全てに意味やドラマがあって、感情に繋がっていくんです。観ていると心拍数が上がって、気持ちが乗せられていきます」

青山「プティさんは音楽も大事にされていると感じますね。『デューク・エリントン・バレエ』は実際のライブ音源を使用しているので、とてもジャジーな気分になりますよ!」

 全く雰囲気の異なる2作品の上演で、プティの魅力を心ゆくまで堪能できる贅沢な公演となりそうだ。

水井「プティさんの作品を一番多く上演しているのが牧阿佐美バレヱ団です。プティの世界を引き継いで、皆さんにお見せできたらと思っています」

青山「楽しさとエネルギーをお届けできるように頑張るので、ぜひ劇場で観ていただければ嬉しいです」

(取材・文:いつか床子 撮影:間野真由美)


“忘れられない夏の思い出”を教えてください

青山季可さん
「一時、夏に『眠れる森の美女』やローラン・プティさんの作品で、スペインツアーによく行っていました。バルセロナ、マドリッド、グラン・カナリア島、グラナダ……。スペインの様々な土地に行って踊れたことは幸せでした。日中は暑いため夜に開催される野外公演ならではの舞台から見た客席の雰囲気、温かく盛り上げてくださるお客様の拍手、忘れられません。私は心配性なので荷物が多く、移動の度にてんやわんやだったのも、今となっては懐かしい想い出です」

水井駿介さん
「温泉旅行。海外のバレエ団に在籍していた頃、夏に日本に一時帰国した際には、毎年温泉に行っていたのが思い出です。新潟や熊本、熱海などの温泉旅館に泊まり美味しいご飯を食べ、温泉に浸かりながらゆったり過ごしました。今は中々行ける状況ではないですが、落ち着いたらまた行きたいです」

プロフィール

青山季可(あおやま・きか)
大阪府出身。3歳からバレエを始め、その後A.M. ステューデンツ(第18 期生)、橘バレヱ学校で学ぶ。10 歳で牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』のクララを踊る。英国ロイヤルバレエスクール・ホワイトロッジ、ジョン・ノイマイヤー・ハンブルクバレエスクールを卒業後、2001 年に牧阿佐美バレヱ団に入団し、『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『ドン・キホーテ』、『ライモンダ』、『リーズの結婚』などに主演する。第32 回服部智恵子賞他受賞歴多数。

水井駿介(みずい・しゅんすけ)
新潟県出身。5 歳よりバレエを始め、ウィーン国立バレエ学校を首席で卒業。ウィーン国立バレエ団研修生を経て、ポーランド国立バレエ団に入団。『眠れる森の美女』、『ラ・バヤデール』、『ロメオとジュリエット』のほか、フレデリック・アシュトン、ピエール・ラコット、ジョン・ノイマイヤー、ジョン・クランコ、イリ・キリアンなどの著名な振付家の作品に多数出演。19年牧阿佐美バレヱ団に入団し、『眠れる森の美女』や『リーズの結婚』等に主演する。

公演情報

牧阿佐美バレヱ団 ローラン・プティの夕べ

日:2021年10月9日(土)・10日(日)15:00開演(14:00開場)
場:新宿文化センター 大ホール
料:S席13,000円 A席10,000円 B席7,000円 C席4,000円(全席指定・税込)
HP:http://www.ambt.jp
問:牧阿佐美バレヱ団 tel.03-3360-8251(10:00~18:00/土日祝休)

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