辻村深月の名作『かがみの孤城』『ぼくのメジャースプーン』が2 作同時上演 不登校・閉塞感・生きづらさ……様々なものに立ち向かう子供たちを描く

 辻村深月の小説2作品が、成井豊による脚本・演出で2作同時に上演される。1作目は2020 年初演『かがみの孤城』の再演、2 作目は辻村たっての希望で初舞台化する『ぼくのメジャースプーン』だ。

成井「奇しくも2 作品とも“不登校の少女”がキーになります。『かがみの孤城』は主人公の“こころ”がいじめによって不登校になってしまったところから始まる話で、『ぼくのメジャースプーン』は主人公の“ぼく”の好きな女の子が学校で起きた事件によって不登校になってしまう話。コロナ禍の昨今、のびのびと外を闊歩できない大人たち、青春を謳歌できない子供たちが抱える閉塞感に非常に通じるものがあるような気がしますね」

 両作品に出演し、『ぼくのメジャースプーン』では主人公“ぼく”を演じる田中亨は、観客が感情移入し易い役をつくりたいと話す。

田中「2 作品同時に出演するのは初めてです。全然印象は違うけれど、どちらも大事な役を任せていただいて、嬉しい半分プレッシャー半分で……。でも1週間ごとに稽古する作品が分けられているので上手く頭を整理しながら出来そうかなと。特殊能力を持っている“ぼく”がその力をどう使うか、悪意に悪意をぶつけること、復讐とは果たして正しいことなのか、秋山先生と議論していきます。お客さま自身が“ぼく”だったらどうするだろうか、ということをぜひ考えてほしいなと思います」

 『かがみの孤城』について、初演も経験した原田樹里はこう語った。

原田「描かれているのは主にいじめについてなんですが、現実に“生きづらさ”のようなものを感じている人だったら、“こころ”をはじめ“城”に集まってくる子供たちに共感できる、重なる部分があるのではないかなと。私は初演から引き続き、彼らを支えるフリースクールの先生役なので、お客さまにとっても心救われる存在になれたらいいなと思います。背中を押してもらえるような温かくて力強さのある作品で、再演できることがとても嬉しいです」

 厳しい情勢が続くが、成井は辻村作品の中でも特に好きな作品を同時上演できることが本当に嬉しいという。

成井「どちらも世界や他人を拒絶した女の子が外の世界に踏み出していくまでの物語です。いろいろな抑圧がある今のご時世に観ていただくことできっと励ましになると思うし、すごく心が浄化される結末だと思います。ぜひ見届けていただきたいです」

(取材・文:通崎千穂 山本一人[平賀スクエア])

突然ですが、急遽一週間の休暇が取れることになりました。どこへ行っても、何をしても自由だとしたら……どのように過ごしますか?

成井豊さん
「旅行もアウトドアも興味のない人間なので、1週間空いたら、まとめて『愛の不時着』と『ストレンジャー・シングス』と『クイーン・ギャンビット』が観たいです。この手の連続ドラマはずっと避けていたのですが、『イカ・ゲーム』を観て、心を改めました」

田中 亨さん
「僕は自然が好きなので、自然に触れてリセットしたいです。1週間だったら国内がいいかも。空気の澄んだところへ行って美味しいもの食べて、好きなだけ寝る。次の準備もしながら、畳の上でゴロゴロしたいです」

原田樹里さん
「母と2人で韓国女旅をしたいです。母も私も韓国ドラマが好きでよく観ているのですが、韓国ドラマには食事のシーンがよく出てくるのです。その韓国料理が美味しそうで美味しそうで……。現地で美味しい料理をたらふく食べたい! 舞台も観たい!コロナが落ち着いたら実現させたい夢のひとつです」

プロフィール

成井 豊(なるい・ゆたか)
1961年10月8日生まれ、埼玉県出身。早稲田大学第一文学部卒業後、高校教師を経て1985年に演劇集団キャラメルボックスを創立。劇団の脚本・演出を担当。現在は劇団以外にも外部公演での脚本・演出、TVドラマの
脚本や演劇講師など、多方面で活躍中。

田中 亨(たなか・とおる)
1999 年2月15日生まれ、大阪府出身。2015年「第4回劇団Patch オーディション」でグランプリを受賞し、同劇団に入団。主な外部出演作として、キャラメルボックス『エンジェルボール』、TRUMPシリーズ『COCOON 月の翳り星ひとつ』月の翳り編、オフィスコットーネ『母 MATKA』など。

原田樹里(はらだ・きり)
1989年1月31日生まれ、大阪府出身。2009 年に演劇集団キャラメルボックスに入団。近年の主な出演作に、キャラメルボックス『スロウハイツの神様』、『ミス・ダンデライオン』、ナッポスユナイテッド『成井豊と梅棒のマリアージュ』、『トリツカレ男』など。

公演情報

NAPPOS PRODUCE 辻村深月シアター 舞台『かがみの孤城』/舞台『ぼくのメジャースプーン』

日:2022年5月20日(金)~29日(日) ※他、新潟公演あり
場:サンシャイン劇場
料:一般9,000円 小中高生チケット[当日引換券]2,000円 ※他、券種あり。詳細は団体HPにて(全席指定・税込)
HP:https://napposunited.com/tsujimuramizuki-theater/
問:ナッポス・ユナイテッド mail:support@napposunited.com

インタビューカテゴリの最新記事