突然、学校の屋上に追い込まれた少女たち。絶望的な状況下で見いだす希望とは 若手女優の登竜門として数多くの才能を育てた名作舞台。今、再び。

突然、学校の屋上に追い込まれた少女たち。絶望的な状況下で見いだす希望とは 若手女優の登竜門として数多くの才能を育てた名作舞台。今、再び。

 2010年に初演され、現在に至るまで何度も再演されている『アリスインデッドリースクール』シリーズ。カールズ演劇カンパニー「アリスインプロジェクト」の代表作として広く愛され、さらに映画やアニメ・コミックへの展開や、大人版・男性版での舞台上演、他の物語とのコラボを果たすなど、ジャンルを越えた拡がりをみせている作品。
 これまでに数多くの若手女優やアイドルを卒業して女優への第一歩を踏み出した才能たちがキャスティングされ、物語の舞台となる“屋上”でしのぎを削ってきたが、2020年に上演された『アリスインデッドリースクール 永遠』はコロナ感染症の影響で公演3日目に中止を余儀なくされた。しかしながらファンの熱望の声に推されて2021年には再起動。そして今年『アリスインデッドリースクール 永劫』として完全復活を目指している。
 主人公の墨尾優役には、2020年の『~永遠』で公演中止という悔しい幕切れを体験した平瀬美里が再登板。その相方となる百村信子に、元AKB48の後藤萌咲。そして血染めのバットを肩に強烈な印象を残す紅島弓矢には、元ラストアイドルの相澤瑠香がキャスティングされた。公演に向かって走り出した今、3人がどんな気持ちでいるのかを聞いた。

―――平瀬さんは2020年の『アリスインデッドリースクール 永遠』で主役の墨尾優を演じられていますが、あの時は数日で公演が中止になり、翌年の『~邂逅』では青池和磨役でした。今回、再び墨尾優役での出演ですね。

平瀬「2年前の『~永遠』で墨尾優を演じたときは、もう自分のことをするのが必死すぎて、周りが見えていない状態でしたが、昨年の青池和磨役で色々な視点から墨尾優というキャラクターを見つめることが出来るようになったと思います。ですから今回はより成長した優を見せたいし、それができれば良いなと思っています」

―――相澤さんと後藤さんは初参加ですね。抱負を聞かせてください。

相澤「この作品について以前参加された方にも沢山話を聞いていて、関わった人や応援してくれている皆さんにとって大切な舞台だと感じていました。今回の上演にあたって、コロナ感染症の流行が起こる以前とは人々の生き方や考え方が変わっていることから、同じ作品でも全く違ったものになるのでは無いかと思ってます。これまでの想いをしっかり引き継ぎつつ、自分たちなりの舞台に仕上げていきたいです」

後藤「以前どこかの劇場……確か六行会ホールだと思いますが、そこの楽屋口に最初のアリスインデッドリースクールのポスターがまだ貼ってあったんです。それを見たときに、自分がこれに出るんだ、自分も作品の歴史の1人として刻まれるんだと思い、なんとも言えないプレッシャーを感じました。今回は百村信子という大役を任されましたが、キャストやスタッフの皆さんの中に入ると不思議と安心します。とにかく頑張りたいと強く思います」

―――世界的なコロナ禍で行動もずいぶん制限されました。皆さんはいかがでしたか。

平瀬「最初の頃は周囲にコロナ感染した人がいなかったので、本当にそんな流行が起こっているのか想像しにくい状態でした。この作品で屋上に集まった生徒たちが、他の生徒が実際に襲われている現場を見ておらず、今ひとつ信じられ無かったことと似ていますね。それと私自身は自宅で楽しく過ごそうと心がけましたが、優もまた『漫才しよう!』と言って、前向きに生きようとする。そこも似ているところだと思います」

後藤「私もSHOWROOMでの発信をまめにしていたので、結構忙しく過ごしていましたし、その時はいつもファンの皆さんと前向きに過ごすことを考えていました。だからやはり実感はなかったんです。幸いなことに舞台の中止もほとんどありませんでした」

相澤「私は丁度アイドル活動をしていた最中でしたが、ライブが中止になり急にファンの皆さんに会えなくなったことで、世界が変わっている実感を持ちました。でもそのうちオンライン・トーク会とか、新しい方策を探っていくようになったんです。こういったところは優と信子の2人が漫才をやろうという前向きな精神に似ていますね。希望を忘れず、未来を拓く。その気持ちで演じたいです」

―――皆さんそれぞれアイドル・グループの一員として活躍されてきたわけですが、この舞台も女性ばかりのキャストです。女性ばかりということでは同じですが、雰囲気とかは違うものですか。

後藤「AKBはメンバー数がギネスに載るくらい多かったので比較にならないかも知れませんが(笑)。役者はグループの中でもそれぞれの役割がハッキリしていますが、AKBだと大人数の中でセンターになりたいとか選抜に入りたいとか、皆が持っている意識や目標が全員一緒、狙いが一緒なんです。だから楽屋での雰囲気は凄く違います」

相澤「そうですね。私達の場合は1期生2期生で楽屋も分かれていたりしましたが、そのなかでさらに少人数で集まっている事が多かったです。私自身、あまり大勢でワイワイ出来るタイプなかったですし。でもアリスインの『ダンスライン』に出演したときに思ったのは、まるで学校みたいに皆で教え合う雰囲気があって、舞台で自分とは絡まない人とも仲良くなりました。共同体のイメージですね」

平瀬「私達は26人で事務所の中ではメンバーが多い方でした。その中でさらにグループに分かれていて、それぞれ競い合っていましたがそれほどギスギスはしていませんでした。演劇の現場だと世代も離れているし、幅があります。そんな皆さん、色々な方と話すことが出来て凄く勉強になりました。成長できるし心に余裕も生まれてきます。それで自分の未熟さも思い知りました」

―――では皆さんが舞台で活躍することを心待ちにしている方へ、さらにこの舞台に興味を持つ方にメッセージをお願いします。

平瀬「2020年の『~永遠』では私が演じた墨尾優はお客さんの前に2回しか出られませんでした。だから応援してくれていても観てもらえなかった方もいます。だから今度は皆さんに観て頂きたいし、『~永遠』を観た方にも成長したねと思ってもらえるような演技をしたいです。さらに作品についているファンの皆さんの期待を良い意味で覆したい。こんな優もいるんだ、と思ってもらいたいです」

相澤「何度も上演されていてファンも多いこの作品ですが、今回演じる紅島弓矢は私にとって初めてのタイプの役柄なので、そこを観てもらいたいです。そして素敵だなあ、また見たい、と思ってもらえるように頑張りたいです。作品の軌跡、歴史を受け継ぎ繋いでいきたいです。是非お越し下さい」

後藤「まだまだ落ち着かない情勢のなかですが、それでも私達は歴史あるステージで歴史ある作品を上演します。作品を引き継いでバトンを渡すことにはプレッシャーがありますが、私達しか出来ない『アリスインデッドリースクール』を作り上げたいです。百村信子という大役を仰せつかり不安な気持ちもありますが、皆で頑張りましょう!!」

平瀬・相澤「ハイッ!」

(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

平瀬美里(ひらせ・みさと)
千葉県出身。2011年にスターダストプロモーションに所属。みにちあ☆ベアーズ、3Bjuniorを経て、2016年ロッカジャポニカとしてキングレコードからメジャーデビュー。ロッカジャポニカの活動終了後はB.O.L.Tに加入、2019年11月脱退。2020年の『アリスインデッドリースクール 永遠』では主役の墨尾優役に挑むも、3回で公演中止となったが、翌年の『アリスインデッドリースクール 邂逅』で青池和磨役で登板。そして今回、墨尾優役に復帰となる。

後藤萌咲(ごとう・もえ)
愛知県出身。2013年、小学校6年生で参加した「AKB48グループ ドラフト会議」候補者オーディションで最終審査合格者29名の1人に選ばれる。その後、AKB48 チームKに所属してデビュー。2019年に18歳で卒業し、ファッション雑誌「JELLY」のレギュラーモデルに登用される。また舞台女優や音楽アーティストとしても精力的に活動し、あらゆるジャンルの枠を超えた新しいアイコンとしての活躍が期待されている。

相澤瑠香(あいざわ・るか)
宮城県出身。15歳で宮城県のローカルアイドルユニットsendai☆syrupに加入しインディーズ・デビュー。2017年にテレビ朝日「ラストアイドル」のオーディションで初期暫定メンバーに選ばれ、その後、セカンドユニットGood Tearsのメンバーとしてデビュー。2022年5月のグループ活動終了まで活躍する。活動終了後、アリスインプロジェクト『ダンスライン!』に出演。本格的に女優としての道を歩み始める。

公演情報

アリスインプロジェクト
『アリスインデッドリースクール 永劫』

日;2022年11月23日(水)~27日(日)
場:新宿村LIVE
料:S席[最前3列]8,800円
  A席[4列目以降]6,800円
  (全席指定・税込)
HP:http://alicein.info
問:アリスインプロジェクト
  mail:n_hatsue@nifty.com

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