昨年6月に初のミュージカルを成功させた、岡本一馬率いるACTMENT PARK。第二弾となるミュージカル『Written by…~恋のゴーストライター~』は、前作のブロードウェイの世界観から一転、大人っぽくオシャレな一作となっている。
岡本「主人公は、処女作が大ヒットした小説家・トニー。彼はラブストーリーの新作を書くため、恋愛指南をおこなうある女性のもとを訪れます。そこから、現実の世界と小説の中の世界をリンクさせながら、トニーが小説を書き上げていく様を描いています」
この主役のトニーを演じるのが、オーディションで選ばれた若手俳優・古田伊吹。
古田「トニーは脚本を読む限りは、あまり人に好かれるタイプの男ではありません。でも彼は小説を書き上げる過程でいろいろ学んでいく。観てくださる方には“嫌なヤツだけど最後は何か許せるな”と思ってもらえるよう演じたいと思っています。」
音楽監督を務めるのは、前作に続き、作曲家・シンガーソングライターとして活躍する津村友華だ。
津村「今回は、脚本制作と同時進行で楽曲も作っていったんです。だから音楽も、幅広いジャンルから彩られた内容で楽しめるのと、全曲を通して1つの物語になっている、という構成。ミュージカルというと、シーンごとに一つの音楽がドーンと印象に残ることも多いと思いますが、今回は1曲1曲が印象に残るというより、全曲を通してシーンごとの温度感を感じてもらえたらな、という作りになっています」
主演の古田は今作が初主演。一歩一歩実績を積み重ねている中、まさに大抜擢と言える。
岡本「正直に言うと、技術だけなら上手い人はたくさんいました。でも課題作のキャラクターを演じたとき、古田君の世界観が完璧で“うわ、すご……!”と圧倒されたんです。課題に出していたキャラクターが、前作で登場していたキャラクターだったので『前作を観て、このキャラクターを知っていたのか』と聞いたところ『観てないので知らないです』と言われて(笑)。“観てないんかい!”とは思いましたけど、逆にセンスを感じて、彼に賭けてみようと思ったんです。この作品が成功するもしないも、古田くんに大きくかかってますね」
古田「こわっ! めっちゃプレッシャーじゃないですか。でも、ありがとうございます。頑張ります!」
津村「古田君は、音符とサウンドから読み取ったキャラクター作りが、私が“こう演じてほしい”と思っているものとピッタリでした。今作の中で彼が歌うのは全部で8曲あるのですが、彼ならバラエティ豊かな表現をしてくれると楽しみにしています」
古田「経験もない新人の僕に賭けてくださったので、今は恩返しをしたいという気持ちが一番にあります。でもまわりには経験豊富な先輩たちがたくさんいらっしゃるので、そこに甘えて、僕はのびのび演じたいなとも思っています。ちなみに、トニーは嫌なヤツだと言いましたが、素の僕とは全く似ていないのでそれはご承知ください(笑)」
見どころは何といっても、現実世界と小説の中の世界が入り混じる、という舞台演出だ。
岡本「小説の中の世界は、大きな本の1ページからキャストが出てくる、という演出を予定しています。そのときは照明もファンタジーな雰囲気に変わるなど、非現実感があって観客の皆さんもきっと楽しんでいただけるんじゃないかと思っています。もちろん、演出家として、照明などの技術的な事、役者の導線、キャラ作り、衣装など、舞台上の全てを演出して最高の作品に仕上げるのは当然ですが、この作品に出てくれたキャストが、楽しいと思ってもらえるような作品になるよう、意識して演出をしています。
観に来てくださったお客様から、キャストがそれぞれ“あなた史上1番輝いてた”と思ってもらう事も、演出家の最も大きな仕事の一つだと思っていて、ベテランと呼ばれる役者から経験の少ない若手まで、その人自身の評価を高めてもらえる作品になれば、非常に嬉しいですね。」
津村「そういえば、ACTMENT PARKでは、アンサンブルという呼び方をしないよね。」
岡本「そうですね。どれだけ頭の中で空想の世界を描いても、実際に役を演じるのは、脚本家でも演出家でもなく、キャスト自身なんですよね。だから、作品の中ではメインキャストを彩るポジションだから……と”アンサンブル”という舞台における言葉の枠組みに収まってほしくなくて、その人自身の生き様や個性を舞台上に投影してほしいって思ってます。舞台上で演じているその瞬間ですら、本気で生きていて欲しいって。その役を通して、あなたの生き様を見せて!って。だって、実際の生活で、アンサンブル、なんて存在しないじゃないですか? 全員主役なんだから。そんな今作は”恋のスペシャリスト”達があらゆるシーンで大活躍します!」
最後に、読者に向けてメッセージをもらった。
岡本「前作のミュージカルは初めてということもあって手探りでした。でも想像以上に好評をいただいて、“今作も、きっと皆さんの心に入り込める作品を提供できる”と自信を持って作っています。押しの一手だった前作と違って、今作は客観性も持って作っていますので、より洗練された一作に仕上がっていると思います」
古田「今作は僕の初主演舞台になりますので、一人でもたくさんの方に観てもらえたら嬉しいです。そしていつか、『私は古田伊吹の初主演舞台を観たことがある』と自慢してもらえるような俳優になりたいと思っています!」
津村「こんなご時世ですから、足を運んで芸術に直接触れる、という機会が減っていると思うんです。今回のミュージカルはオンライン配信も行う予定ですが、やはり私たちのエネルギー、魂のようなものを生で体感してほしい。だから是非、会場でお待ちしております」
(取材・文:山本奈緒子 撮影:安藤史紘)
プロフィール
岡本一馬(おかもと・かずま)
1990年6月2日生まれ、奈良県出身。立命館大学卒業後、関西にて舞台公演プロデュースを始める。芝居や演出技法、芸術者としての心得を現場で学んだ後、2017年にACTMENT PARKを旗揚げ。海外作品の再演が多い昨今において、脚本・音楽・振付など全てをゼロから制作する完全オリジナル作品が人気を博している。今後の公演予定作に『Le Lien』、『あの鐘の音と共に-The Bell-』などがある。
津村友華(つむら・ゆか)
1987年11月3日生まれ、大阪府出身。音楽専門学校在学中に、ガールズバンド(後のNatural place)を結成。ピアノとコーラスを担当すると同時に、奥華子や清水ミチコなどの編曲家としても活躍。2019年にバンドを解散した後は、作曲/編曲家、ピアニストとしての活動を本格化させる。代表作にミュージカルACTMENT PARK『From Broadway with Love~ブロードウェイより愛を込めて~』、短編映画『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』内の「CHOSTING」などがある。
古田伊吹(ふるた・いぶき)
1998年10月10日生まれ、愛知県出身。高校時代にカヅラカタ歌劇団(男子高校生と中学生が宝塚歌劇に挑戦することで知られる、東海高校の劇団)に所属し、存在感を発揮する。慶応義塾大学に進学。在学中にミュージカル『新テニスの王子様』The First Stageにて本格デビュー。「演劇ハイキュー!!」や「ライブスペクタクルNARUTO」などの舞台に出演。9月には、ミュージカル「雪の女王」のカイ役として出演を予定している。
公演情報
ACTMENT PARK ミュージカル『Written by…~恋のゴーストライター~』
日:2022年6月1日(水)~5日(日)
場:新宿村LIVE
料:S席8,300円 A席6,800円(全席指定・税込)
ONLINE TICKET5,000円(税込)
HP:https://actmentpark.com/stage/WrittenBy
問:ACTMENT PARK tel.03-6276-1323(平日10:00~18:00)