あるアパートの一室を舞台にさまざまな人間模様をオムニバス形式で描き、話題を集めた『富士見町アパートメント2010』。12年ぶりとなる今回は二部作での上演で、中村雅俊はマキノノゾミ作『フーちゃんのこと』の主人公・フーちゃんを演じる。
「まず台本を読ませてもらいましたが、設定といい話の展開といい本当に面白い。俺自身こういう舞台はあまり経験がないけれど、これはきっと良い作品になるだろうと直感し、チャレンジしてみようと決めました」
アパートで隠居生活をする男・秋山実智の元に、ある日旧友のフーちゃんがやってくる。2人はかつての詐欺師仲間で、フーちゃんはまた一緒に組もうと秋山を誘うが――。
「フーちゃんの話はどこまでが真実で何が噓かわからない。いろいろな面を持っていて、チャーミングに見える時もあれば、いい加減な奴だなと感じる時もある。俺自身若い頃はフーちゃんのようなキャラクターを演じることが度々あって、それを活かしつつ自分の中にあるものを如何に絞り出していくか。稽古の中で試行錯誤しながら、最終的に自分なりのフーちゃん像を見つけられたらと思っています」
かつての詐欺師仲間・秋山を演じる半海一晃とは初共演。しかし実は、浅からぬ縁があるという。
「半海くんと俺は同じ宮城県の石巻高校出身。俺の方が年上で時期は重なってないけれど、共演できてすごく嬉しいですね。彼はとても味のあるお芝居をされる。同じ世界にいても彼とは歩んできた道が違って、そういう意味でもどんなコンビネーションになるか今から楽しみです」
登場人物は秋山とその孫の亜美、そしてフーちゃんの三者のみ。アパートの一室という限られた空間で、軽妙な会話劇を繰り広げていく。
「今の目標は稽古初日までに台詞を覚えること(笑)。台詞が先に入っていれば、それ以外のディテールの部分で“ここはこうしてみよう”とアイデアがいろいろ生まれやすい。台詞量は膨大だけど、何とかなるだろうという根拠のない自信もあって、楽観的に取り組んでいます(笑)」
上演を心待ちにするファンに、メッセージを聞いた。
「詐欺師の話ではあるけれど、なぜか憎めずいつしか素敵に思えてくる。そんな男たちの姿を半海くんと演じたい。どこか心の片隅がポッと温かくなる物語です。みなさんに観て良かったと感じてもらえたら嬉しいですね」
(取材・文:小野寺悦子 撮影:間野真由美)
プロフィール
中村雅俊(なかむら・まさとし)
1973年、慶應義塾大学在学中に文学座附属演劇研究所に入所。1974年『われら青春!』の主役に抜擢されデビュー。自らが歌う挿入歌「ふれあい」で歌手デビューし、CD売り上げが100万枚を超える。今までに連続ドラマ34本を含め、主演作品は100本以上。歌手としてもコンスタントに曲を発表し、現在シングル55枚、アルバム41枚をリリース。デビューから毎年行う全国コンサートも1,500回を超える。
公演情報
舞台『富士見町アパートメント2022』
日:2022年4月28日(木)~5月8日(日)
場:俳優座劇場
料:9,000円(全席指定・税込)
HP:https://sma-stage.com/fujimiapart2022/
問:ソニー・ミュージックアーティスツ https://contact.sma.co.jp/s/smainq/form/inquiry