大衆演劇から芸の世界に飛び込み、その後、歌舞伎、新派とフィールドを移す度に得た沢山の出逢いによって芸の幅を拡げてきた林佑樹。色々な舞台で積極的に出演する活動と並行して、令和4年からは自主公演「林佑樹の會」を開催してきた。そんな林が自らの芸能生活15周年を記念して「林佑樹の會」の四回目を開催する。演目は「通し狂言 東海道四谷怪談」。歌舞伎の演目でもある怪談物の名作。俗に「お岩さま」の物語と言えば顔がただれた女性の姿と共に誰もが思い出すことだろう。その稽古場に伺った。
物語は浪人・四谷左門の娘、お岩を軸に動いていく。お岩の夫、伊右衛門は陰で公金横領をしているが、それを知った四谷左門は任せておけぬとお岩を連れ戻してしまう。それを恨んだ伊右衛門は四谷左門を殺害。さらにお岩に対してその犯人を見つけて仇を討ってやると約束する。その後、二人の間に子供が産まれるが、お岩は産後の病に苦しんでいる。そして伊右衛門はそれを煩わしく思うようになる。そんな折、隣家の伊藤喜兵衛から薬が届くが、これは喜兵衛が孫娘を伊右衛門と一緒にさせる為に、お岩を追いやろうと用意した毒薬。そして薬を口にしたお岩の顔面は、醜く崩れていく。そして息絶えたお岩は亡霊となって伊右衛門に復讐を仕掛けていき……
恐ろしい形相で伊右衛門に襲いかかるお岩の浮世絵などは、このあたりの場面を描いた物だ。
歌舞伎、新派、大衆演劇など、様々な世界から俳優が集結
稽古はまだ序盤ということもあって最初から段取りの確認を進めていく。指示を出しているのは演出・振付・作曲を担当している藤間勘十郎。朗らかで柔らかい口調でサクサクと指示を出し進めていく。この作品で林は四役早替わりを披露するため、藤間と段取りを入念に打ち合わせていた。
今回のキャストについては、15周年を意識したのか、大衆演劇、歌舞伎、新派に関わりがある俳優が集まっている。しかもベテラン勢も多いので、それぞれの演技に隙がなく、バッチリと決まっている。例えば立ち回りの場面ひとつとっても実に美しい。稽古序盤でこれなのだから、ここから練っていったらますます良くなっていくことだろう。
女方としての実力を存分に発揮
感心したのは林の演技力。先述の通り林は四役を兼任する訳だが、幕開きすぐの口上はともかく、他の役(お岩/小仏小平/小汐田又之丞)の時は性別も演じ分けなくてはいけないのだが、その切り替えが見事だ。特に女方、つまりお岩であるときの林からは、なんとも言えない色気が醸し出されているようだった。さらにお岩が毒薬を飲み、途端に顔が腫れていくシーンでは、まだ特殊なメイクをしているわけでなく、ただ顔の半分を手ぬぐいで隠しているだけなのに、そこに醜いお岩の顔が隠れていることを想像してしまう。
日本の様式美を存分に生かしつつ、現代劇の感覚も採り入れている舞台は、歌舞伎とも新派とも違うスタイルを切り拓いていくことだろう。そんなことを感じさせる林佑樹の活躍に期待しつつ、この作品で思わず背筋が凍る体験もしてみたい。
(写真・文:渡部晋也)
公演概要
林佑樹 芸能生活十五周年 第四回林佑樹の會 自主公演
公演期間:2026年9月15日 (火) 〜 2026年9月17日 (木)
会場:日本橋劇場(日本橋公会堂 4階)
■出演者
口上・お岩・小仏小平・小汐田又之丞:林佑樹
佐藤与茂七:大沢健
四谷左門:田口守
医者尾扇:森本健介
秋山長兵衛:児玉真二
関口官蔵:五十嵐秀樹
乳母お槇:川上彌生
尼僧:如月 皐
下女お竹:早倉由莉
中間伴助:馬目羽琉
伊藤家孫娘お梅:石川桃
按摩宅悦・小平女房お花:高橋諒
民谷伊右衛門:博多家桃太郎
■スタッフ
演出・振付・作曲:藤間勘十郎
■スケジュール
2026年9月15日(火)17時開演
2026年9月16日(水)12時開演・17時開演
2026年9月17日(木)12時開演
※開場は開演の30分前
※上演時間は約3時間
■チケット料金
SS席:13,000円
S席:10,000円
A席:7,000円
B席:5,000円
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