【公演レポート】MAO WORKS 05『ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド』

田村真央が作・演出を務める演劇ユニットMAO WORKSによる、MAO WORKS 05『ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド』がインディペンデントシアターOjiで、3月18日 (水) から22日 (日)まで上演された。

田村真央が中心メンバーとなり2023年に旗揚げされたMAO WORKS。主宰の田村は文学座付属研究所で3年間学んだ後、串田和美率いるTCアルプに入団、現在はフクダ&Co.所属。映像作品の吹き替えなど、声優として活動する傍ら、舞台出演や創作を精力的に行なっている。

MAO WORKSと言えば、“POP”。まるで田村の脳内を覗いたような奇想天外で大胆な作風と、オリジナル音源によるラップを取り入れた演出が魅力。第5弾となる本作は、田村自身の長年の疑問であった、「私とは何だろう?」「何を持って、自分は自分であると言えるのだろう?」そんな苦悩をテーマに据えた。普遍的かつ壮大で悶々とした問いを、内向的に表現するのではなく、お得意のポップさを持ってポジティブに発信するのがMAO流。MAOワールド初体験の筆者が、観劇レポートをお届けする。

【STORY】
「パッカーン」。ワタクシの顎が割れ、女子高生、友達、おじさん、青年、女、院長ら7人の「ワタクシ」という自我が誕生するところから物語がはじまる。夢なのか、何なのか分からない世界線「韻ザ・ワールド」で、7名それぞれの視点で、“ワタクシとは? ”という大義に向きあい、思考をめぐらせていく……。

「パッカーン」という、かけ声で幕が開けた。劇団を象徴するかのような、ショッキングピンクの衣装に身を包んだ役者たちが板つきで現れる。「パッカーン」、「パッカーン」という声が続き、テンポのよいセリフをかけあい、出演者全員によるラップを響かせ、キレッキレのパフォーマンスで視線を釘付けにした。

インパクト抜群のプロローグも束の間、どこにでもいる女子高生たちのやりとりがはじまる。女子高生役の野村今日子(フクダ&Co.)は、友達役の石川なつ美(劇団イン・ノート)に、いつも遭遇するおじさんは「ワタクシ」なのだと打ち明ける。友達(石川)は「なんだかよくわからないけど」と反応しつつも、友達(野村)の発言を否定せず受け止める。本作が掲げるテーマの起点とも言えるシーンであるが、あくまでも“どこにでもいる女子高生間”の日常として描き、観る者に既視感を訴えかけるものを感じさせた。
女子高生たちの付近をうろつく、おじさん役で出演するのは、MAO WORKS劇団員であり本作で音楽を担当する・白神冴京。アクの強いおじさん役から一変、ラップのシーンになると白神から滑らかに発せられるフロウ捌きはひと際、印象的だった。

続いて、登場する男と女。岩田あや乃が演じる女役は、どこにでもいる黒のロングヘアー姿で、無個性の象徴として物語で扱われる。MAO WORKS所属の小谷俊輔は、そんな黒のロングヘアの女に惹かれる男役を演じ、スッカスカな「ワタクシ」を自負している役どころ。女の表面的かつアイコン的な要素に心奪われる姿は、男の情けなさを浮き彫りにすると同時に、憎めなさを感じさせる男のキャラクター性は観客である筆者へ親近感を抱かせ、私事として訴えかけるものがあった。

田村真央が演じる「ワタクシ」は、河野顕斗が演じるある男を神様として対話を続ける。ワタクシが抱えていた疑問、“ワタクシとは――?”。神や神の手を前にして、ひとりきりで悩み続けていた彼女は、徐々に感情を露わにし、蓄積された苦悩を吐き出していく。「ワタクシ」の自我が芽生えた場所、「ワタクシ」という原体験をさぐる旅。「ワタクシ」が最後に迎える結末は―――。

MAO WORKSの魅力は、ポップさとテンポの良さにあると感じた。セリフや音楽、舞台美術、空間、衣装……その全てを駆使した唯一無二のステージが存在する。演出的に制限のある環境下であっても、見る者を飽きさせないセット使いや小道具、出演者たちのステージングすらも舞台美術の一部かのように華麗に魅せていく。会場を余すことなく、全てを演出の一部とさせるアイディアの源流は田村の役者としてのキャリアが培ったのか、いずれにせよ観客を楽しませたいという田村のサービス精神や熱意を感じずにはいられない。

次にMAO WORKSに触れる機会があれば、迷わず体感してほしい。難しいことは考えず、飛び込んでしまえば大丈夫。きっとMAO ワールド炸裂で、ポップに楽しく、私たちに“新しい視点”を投げかけてくれるはず。

(取材・文/山田浩子)

公演概要

MAO WORKS 05『ワタクシ、そして韻・ザ・ワールド』

作・演出:田村真央

<出演>
田村真央(MAO WORKS)
小谷俊輔(MAO WORKS)
白神冴京(MAO WORKS)

石川なつ美(劇団イン・ノート)
岩田あや乃
河野顕斗
野村今日子(フクダ&Co.)

<東京>※公演終了
公演期間:2026年3月18日 (水) 〜 2026年3月22日 (日)
会場:インディペンデントシアターOji
チケット:一般 4,000円、U25 3,000円(全席自由)

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