
ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトと作曲家クルト・ヴァイルが1928年に書いた名作音楽劇をロンドンから新宿・歌舞伎町に舞台をアレンジした『三文オペラ 歌舞伎町の絞首台』が12月17日(水)より東京・新宿FACEにて上演。
本番を直前に控えた12月上旬、稽古場取材を行った。

差別や貧困を痛烈に風刺した本作には、聖児セミョーノフ、秋吉久美子、もも(チャラン・ポ・ランタン)、渡部豪太、星田英利、大谷亮介、エミ・エレオノーラ、安部聡子、真洋、梅垣義明、奥津裕也、松本実、トースティー、藤井レオナといった様々なカテゴリーで活躍する面々が出演。演出には劇団「地点」の三浦基、プロデューサー・音楽監督に著述家の湯山玲子がそれぞれ務める。



見どころを挙げるとすれば、やはり歌唱シーン。ユダヤ系ロシアのルーツを持つシャンソン歌手の聖児セミョーノフ、姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」のもも、ロックバンド「Demi Semi Quaver 」のボーカリストとしてデビューしたエミ・エレオノーラらといったアーティストをメインに活動するキャストが放つ歌唱力の高さは言うまでもないが、秋吉久美子、大谷亮介、渡部豪太らといった俳優陣の表現力豊かな歌声も見逃せない。




編曲を担当した大野由美子率いる演奏チームにもチェックして欲しい。決して派手さはないものの、ベースとドラムによるリズム隊が奏でる深みのあるサウンドは、独特の世界観を引き立てさせる。さらに“和”の音を取り入れたBGMや楽曲は、歌舞伎町を舞台にしたからこそ。何度も『三文オペラ』を観劇した人はきっと新鮮に感じるだろう。


また十字路をかたどった舞台セットをよく見ると、地面にごみくずが散らばっていた。日本だけでなく世界中の人たちが集まり、ごみ問題が尽きない「眠らない街」歌舞伎町が舞台ならでは細かい演出も印象に残った。この日は本番で使用するセットではなかったが、きっと本番ではより歌舞伎町色が色濃く出るセットになるはずだ。


ちなみに取材した日は、初めての通し稽古。ほどよい緊張感に包まれる中で始まり、途中セリフが出てこなかった場面ではすぐに周りのキャストがフォローするなど、座組のチームワークは抜群。大きなトラブルなく通し稽古を終えると、安堵の空気が稽古場を流れた。
好景気に湧いていたものの、排外主義が高まり、貧富の差が顕在化がしてきた1920年代のドイツの時代背景は、現代の日本とシンクロするものがある。観終わった後、共感できる部分がたくさんみつかるかもしれない。
通し稽古終了後、主人公のメッキース役で本作では翻案も担当する聖児セミョーノフに意気込みを伺った。

【聖児セミョーノフ コメント】
『三文オペラ』は、世界中で何十回、何百回、何千回と上演されている作品だと思うのですが、今回の公演は単純に娯楽として、エンターテイメントとして楽しめて、多分一番わかりやすい『三文オペラ』になっていると思います。
初めて『三文オペラ』を観劇される方向けの注目ポイントとして、今回の登場人物は悪人だらけですが、観客のみなさん含めて人間はみな“良いところ”も“悪いところ”もあると思うので、各キャラクターの“悪いけど愛らしかったりする部分”を感じてもらえれば嬉しいです。また『三文オペラ』何度もご覧になられている方向けの注目ポイントは、ヴァイルによる楽曲は余すところなく演奏します。そしてブレヒトの脚本は翻案によりいろいろなところを短縮して、小難しくなく、疾走感があって、爽快感がある『三文オペラ』になっていると思いますので、ぜひ体感してください。
キャストも様々なジャンルから個性的なメンバーが揃っています。今回、会場の新宿FACEは、360度全方位を客席が囲む円形ステージになっていて、まるで我々を“動物園にいる動物”や、舞台を“異種格闘技戦”を観戦しているかのように感じるかもしれません。
ご覧になられる方に「おもしろかった!」と思ってもらえるように稽古を必死に、そして楽しんで頑張っています。哲学的で思想的なセリフも出てきますけど、難しく考えず、年末楽しみにぜひ新宿FACEにいらしてください!

【あらすじ】
札つきの悪党メッキース(マック・ザ・ナイフ)は、乞食の元締めピーチャムの一人娘ポリーと結婚するが、娘を老後の頼みの綱にしていた夫妻は怒り心頭。彼らの奸計にかかり、かつての愛人である売春婦ジェニーにも裏切られて警察につかまるマック。警視総監ブラウンはかつての戦友であり、おまけに彼の妹ルーシーともねんごろになっていたマックは、軽々と脱獄に成功するが……。
(取材・撮影:冨岡弘行)
information
音楽劇『三文オペラ 歌舞伎町の絞首台』
■日程:2025年12月17日(水)~21日(日)
■会場:新宿FACE
■原作:ベルトルト・ブレヒト『 三文オペラ』
■翻案:聖児セミョーノフ
■演奏/編曲:大野由美子(Buffalo Daughter)
■演出:三浦基
■プロデューサー・音楽監督:湯山玲子
■出演
聖児セミョーノフ
秋吉久美子
もも(チャラン・ポ・ランタン)
大谷亮介
エミ・エレオノーラ
安部聡子
真洋
梅垣義明
奥津裕也
トースティー
藤井レオナ
松本実
星田英利
渡部豪太
■料金:SS席[特典付]18,000円 S席11,000円 A席7,800円 立ち見席4,000円
(全席指定・税込)
※S席・A席・立ち見席は別途ドリンク代600円
■公式X:https://x.com/sanmonopera2025
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