ドラァグクイーンを夢見る高校生の、差別や偏見と闘いながら自分らしく生きていく姿がやがて周囲の価値観までも変えていく様を描き、2021年の日本初演で大きな感動を届けたミュージカル『ジェイミー』が、今年7月再演の幕を開ける。
この作品は、英国の公共放送局BBCで放送されたドキュメンタリー番組を基に、2017年に英国で生まれ、英国最高峰の演劇賞 ローレンス・オリヴィエ賞に5部門でノミネートされるなど、一大旋風を巻き起こしたミュージカル。疾走感あるポップなメロディやダンスとともに、家族や級友たちの応援を得てジェイミーが成長していくビルドゥングス・ロマンとしての一面も持つ作品は、親子の愛、友情、仲間との絆、何より「みんな違っていていい」という心に響くメッセージが深く心に刻まれる作品となった。
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そんなミュージカル『ジェイミー』のジェイミー役に新キャストの三浦宏規、初演からの続投となる髙橋颯を中心とした2025年版の稽古場お披露目が行なわれ、歌唱披露と質疑応答などで、新たな『ジェイミー』の熱気あふれる稽古場の様子が公開された。
稽古場に一歩足を踏み入れると、そこには懐かしい日本版独自の美術である、箱型のセットを三層に組み立て、また時に椅子、時にテーブル、時にカウンターに姿を変えていく、やはり箱型の出道具などが目に飛び込んできて「あぁ『ジェイミー』の世界に帰ってきた!」という実感がある。
更に見回すと、公開稽古を前にした生徒役の面々が稽古場の隅に固まって談笑していて、演出のジェフリー・ペイジが彼らに声をかけに行き、生徒役キャストが大きなリアクションで応える様が賑やかだ。
そんななかで三浦宏規は舞台面で、髙橋颯はセット上階でそれぞれに動きをチェックしていたが、開始が5分押しになるとアナウンスされると、生徒役のキャストたちと合流。和気藹々に全員と交歓しつつ、やや緊張の見えるジェイミーの親友プリティ役のWキャスト、唯月ふうかと遥海とハイタッチして深呼吸をしあうなど、もう既にそこにジェイミーがいると感じられる。早速スマートフォンで自撮りの記念撮影がはじまり、こうした公開稽古前の一種独特の緊張感とは少し違う若いエネルギーがあふれてくる。特に3時のヒロインのかなでがクラスの担任教師、ミス・ヘッジ役の扮装で現れた瞬間、生徒役のキャストたちは「カワイイ~!!」を連発して大拍手。もう完全にクラスメイトにしか見えない!という光景が広がったところで、いよいよ歌唱披露のスタートが告知される。髙橋が1曲目に出演しないキャストが待機する方にキスを投げて舞台に向かう姿が鮮やかに目に残るなか、1曲目の歌唱披露がはじまった。
歌唱披露・1「誰も知らない」
クラス担任のミス・ヘッジ(かなで)が生徒たちに進路指導をしている。階級制度が厳しいイギリスでは、労働者階級には相応しい「分」があることを理解させようとするミス・ヘッジの話をうわの空で聞いているジェイミー(髙橋颯)に、ヘッジが「あなたに向いてる職業はフォークリフトの運転手」と適正検査の結果を伝えると「ありがとう先生、夢のようです」と答えながら、実はジェイミーは「ドラァグクイーンになりたい、それに相応しいものを自分は持っている」とまだ見ぬ輝かしい未来への確信を語る。ミュージカル『ジェイミー』にとって非常に大きな意味のあるナンバーだ。
かなでヘッジの雰囲気が、きつすぎないのも新鮮だし、ジェイミーの心のうちにあふれる希望や自負とは裏腹に、言葉にできない強い想いをまだ「誰も知らない」という現実を、親友のプリティ(唯月ふうか)、クラスで1番目立つ存在でいないと気が済まないディーン・パクストン(神里優希)、ベックス(小向なる)、ファティマ(澤田真里愛)、ミッキー(東間一貴)、サイ(星野勇太)、サイード(里中将道)、リーバイ(MAOTO)、ベッカ(元榮菜摘)、ヴィッキー(リコ)のクラスの面々が、出道具を駆使してマスゲーム要素も感じさせる振付をダンサブルに歌い踊る、これぞミュージカル!の展開にワクワクさせられる。初演から引き続いてジェイミーを演じる髙橋の歌声が、オンマイクでない稽古場の環境でも力強さを増しているのが伝わってきた。
ポーズでバシッと決まると待機席からヒュー、ヒューと大きな掛け声が飛ぶ。今回の公開稽古、歌唱披露では通常の稽古と同様に1曲、1場面が終わるごとに演出のジェフリーのノート(いまの場面で良かったこと、また改善して欲しいことなどをキャストに伝えること)が入り、稽古場公開でありつつ、臨場感にあふれている。
「全体にはとても良かったです!」と絶賛しながら、振付も自身で行っているジェフリーは、腰の位置、細かい踵の位置、移動のスピード、全員が作るラインの統一、「腕はきちんと伸ばして、顔は正面」等々を細かくチェックしていく。カウントで返しながら、修正を入れていくことで振りの意味がより明確になっていくのが目に見えてエキサイティングだ。
「お疲れ様、みんな魅力的です!」と締めくくられると生徒たちから拍手がわき、次の場面へと準備が進んだ。
歌唱披露・2「乗り越えるの」
続いたのは、ジェイミー(三浦宏規)が意を決しドレスショップを訪れたことから交流がはじまったヒューゴ=伝説のドラァグクイーン、ロコ・シャネル(石川禅)と、ドラァグクイーンズのサンドラ(岸祐二)、ライカ・バージン(泉見洋平)、トレイ・ソフィスティケイ(渡辺大輔)が、クラブ“レッグスイレブン”での初ステージを直前にして、怖気づくジェイミーを鼓舞する1幕最後の大ナンバー。
石川禅を筆頭に、クイーンズたちが登場した途端キャストたちから大歓声があがる。「久しぶりなの~」とポーズを決める石川ロコ・シャネルの、至言に次ぐ至言のオンパレードで、マイノリティとして厳しい道を歩みながらプライドを持ち続けて生きてきた、ジェイミーの指針となる初演時の名演がよみがえってくる。ジェイミーを受け入れられない父親役を演じる岸が、サンドラ役を兼ねることで生まれるどこかホッとできる構成。ベイビードール型の衣裳が変わらず抜群に似合う泉見。初登場のトレイ・ソフィスティケイの渡辺大輔の思わず二度見した美しさ。そして、常にのびのびと舞台に躍動している印象が強い三浦宏規ジェイミーが、心もとない、どこかおどおどとした雰囲気を醸し出していることに目を引かれるなか、歌唱披露がはじまった。
このナンバーで印象的なのは「あなたが誰になりたいのかだけを考えなさい」というサジェッション。これはおそらくドラァグクイーンになりたい高校生、というジェイミーの想いを越えて、性別はもちろん年齢も問わずどんな人にでも届くキーワードだと思う。誰になりたいのか、どんな人で在りたいのか、そう考えることで自分自身がわかっていく。そこに至る為の困難がどれだけあっても心強い仲間がいるよ、という旧き良きミュージカル作品には必ず用意されていた「人生の応援歌」としての側面ももったナンバーが、ロコ・シャネル、そしてレディースたちによって華やかにパワフルに歌われ、ジェイミーの背中を、つまり観る者の背中を押す熱いナンバーが展開される。石川はもちろんレディースたちは三者三様それぞれに個性が際立つし、そのなかに2幕に向かう重要な鍵も込められているのが作劇としても周到。それによってはじめて明るい笑顔を見せた瞬間の、三浦ジェイミーの放つオーラにも目を奪われた。
大きな拍手が沸き起こったあと、ジェフリーからも「大変良かった!」という讃辞があり、ジェイミーにドレスを渡すところで、二人が重なってしまうから、もう少し身体を開いて、などやはり細かい修正が入る。特に印象的だったのが、「ちょっと座ってみられる?」と指示して、キャストがやってみると、「やっぱりやめましょう」とジェフリー自らが即座に判断したこと。トライ&エラーをためらわない、柔軟な演出姿勢が作品を豊かにしていく過程が見える思いがした。
歌唱披露・3「限定モノ」
ジェイミー(髙橋)が母のマーガレット(安蘭けい)と、その親友レイ(保坂知寿)に、ヒューゴのドレスショップで手に入れたドレスを、プロムで再び着る為に自らアレンジを加えたと颯爽と披露するナンバー(公開稽古ではドレス披露はなく、本番のお楽しみになっている)。
髙橋ジェイミーの、ドラァグクイーンデビューを果たし、自信を得たからこその、少し前のめりになっている若さ故の自意識がよく伝わってくる。「同じドレスを着る訳にはいかないからレベルアップしなきゃと思って」と意気揚々のジェイミーに対して、それはやり過ぎだと諫めようとする安蘭マーガレットの、そんなジェイミーの心持ちを案じる姿と、完全に肯定はしていないものの、ジェイミーのアレンジ力を面白がってみせる保坂レイの、ベテラン俳優らしい決して一面的ではないものがにじむやりとりが素晴らしい。生徒役の面々がここではコーラスも務めている姿が見えるのも公開稽古ならではだ。
ジェフリーのノートも、手をとって踊りだすジェイミーとレイが踏むステップの確認や、歩き出すタイミングなどの修正を数回繰り返す、やはりとても丁寧なものだったが、特に耳に残ったのが「ここはジェイミーが一番頭でっかちになっているシーンですからね」という言葉。あぁ、まさにそれだ!という的確な表現に感心させられる。髙橋、安蘭、保坂と、それぞれ出自も違い、芸歴も違う面々が、全くフラットな同じ姿勢で、ひとつ一つの指示や提案を確認している様も清々しいし、振付確認になった時に、三浦がごく自然に入ってきて一緒に踊り出したのも普段からこうして、Wキャストへのノートも自分のこととして受け止めているのだろう真摯な稽古の様子が感じられる瞬間だった。
歌唱披露・4「噂のジェイミー」
舞台上の時系列としては少し戻って、次に披露されたのは2幕最初のナンバー「噂のジェイミー」。ドラァグクイーンとして舞台に立ったジェイミーの噂話で持ち切りの生徒たちが、自分たちの見聞きしたことが信じられない、と話しながらどんどんエキサイトしていく様を歌い踊るエネルギッシュなナンバー。
全体で見ても、1幕の最後にあっと目に残るシーンでカットアウトして終わった舞台の、休憩後の展開なので、1幕ラストの衝撃を観客も生徒たちと共有し、反芻できるのが興趣を深める。生徒たち一人ひとりの個性がよく見える上にWキャストの遥海プリティ、吉高志音ディーン、栗山絵美ミス・ヘッジの、「誰も知らない」とは全く違う存在も気になり、目が足りない!という気持ちになった。
ジェフリーは、プリティが入ってくるタイミングを入念にチェック。生徒たちのジャンプでは大きく膝をあげて、など自らも動きながら「もう1回見せてください」「今の形がいいですね、みんなでこうやることを忘れないで」などのやはりアグレッシブなノートが続いた。
歌唱披露・5「我が子、あなたの子」
歌唱披露の最後は、三浦ジェイミーと安蘭マーガレットによる「我が子、あなたの子」。大きな壁にぶつかり、心が折れかけるジェイミーに何があってもあなたが一番だとマーガレットが伝え、ジェイミーも母への想いを伝える作品のクライマックスのナンバー。
ここでは「僕が普通だったら良かったと思ったことある?」というジェイミーの問いに、マーガレットが間髪を入れず一度もないと断言し、そもそも普通って何?あなたがあなたらしくいられればいい、と答える、こうして書いていても涙腺があやしくなる、我が子をまるごと全て肯定してくれる母親の尊さと愛情の深さを、三浦と安蘭が繊細に緻密に届けてくれた。
稽古場が熱い拍手で包まれたあと、ジェフリーからも「非常に美しかった」という讃辞が。その後「二人の目があったら、あとはずっと一緒に行きましょう」ということと、涙をぬぐう動作をなるべくシンプルに、という非常に短いノートで、もう場面が固まりつつあることがよく伝わってきた。役と楽曲に入り込んだ安蘭が自然に涙を流していたのも目に残り、感動のなかで歌唱披露は終了。全員、そしてジェイミー二人によるフォトセッションののち、三浦、髙橋、安蘭、石川、保坂、泉見、渡辺、かなで、栗山による質疑応答が行なわれた。
質疑応答
──ジェイミー役のお二人、稽古も中盤にさしかかって、改めてジェフリーさんやカンパニーの皆さんとのクリエーションはいかがですか?
三浦「いまの段階で実はほぼ全幕芝居がつけ終わりまして、ジェフリーのスピードにも驚愕するばかりです。本当に皆さんの覚えるスピードの速さも含めて、この早い段階で全部お芝居がついたからこそ、ここからより深めていくことができるんだろうなと思っています。あとはやっぱりこの『ジェイミー』というカンパニーの一番の特徴としては、ダンスのワークショップがありまして。毎朝ジェフリーが考えた「考案・ジェフリーステップ」のワークショップを30分ぐらい毎日やっているんです。最初はそれで疲れちゃって「あ、もう駄目かもしれない」と思っていたのですが、やっぱりコツコツと積み重ねると、本当に体力もつくし、実際の振り付けでも使われるような動きを練習していたりもするので、ナンバーの中でも躍動感が出てきて、皆さん上手になっていくんですね。それを見ていると、わたしたちは最後までジェフリーについていかなければ、ついていこう!と思っております」
髙橋「本当に毎日楽しくて、和気藹々とさせてもらっています。演出家のジェフリーさんが最近日本語をよく覚えられて、このシーンを頭からやりましょうと言う時に「アタマカラ、オネガイシマス」とおっしゃるのがすごく可愛いです」
──安蘭さん、保坂さん初演から引き続いてのご出演となりますが、今回稽古を進めて二人のジェイミーとの関係性や、マーガレットとレイとしての関係性をどのように感じていらっしゃいますか?
安蘭「ジェイミー二人は、颯くんは二回目で宏規くんは初めてなんですけれども、宏規くんは初めてとは思えないし、颯くんは良い意味で二回目とは思えない新鮮さがあって、二人共フレッシュなんだけれども、全然違うジェイミーが居て、我々大人も毎回楽しくお芝居をさせていただいています。これから本番に向けて二人がどんなジェイミーを創っていくのかを母親としてもとても楽しみにしているところです。レイとは前回以上にとてもいい関係が作れているんじゃないかなと思うんですけど、(保坂に)どうですか?」
保坂「そう思います。本当にすごい良いお母さんで、ジェイミーの1番の味方だし、応援団だし、それを一緒に応援できるのがね。二人のジェイミーが本人たちもそうだし、ジェイミーとして演じている彼らがすごく応援したいと思わせてくれるので、私たちもそのままできるという感じで、なんの苦労もないです」
安蘭「新鮮な彼らによって私たちも変われるんですよね。(ジェイミー二人に)私たち親子にとってもレイは頼もしい存在だよね」
三浦「本当にパパよりパパです」
──石川さん、泉見さんも初演から引き続いてのご出演ですが、ドラァグクイーン同士でのお芝居のやり取りや、今回さらに深めていきたいことなどはございますか?
石川「初演の時にすごく記憶に残っているのは、スタッフさんたちが二階建てのロフトを作ってくれて、そこに役者が待機する場所があって。そこでみんながマスクをしながら稽古をしているという、大変な4年前の稽古だったんです。それが今回こんなにオープンな稽古場で、みんなマスクを外して楽しく稽古ができているのですが、世の中は4年前よりももっと怖いことになっているような気がして、不安の中でみんな稽古にいそしんでいます。私たちがやる役というのは少数派の役なんですが、その多数派と少数派が争うような時代になってしまって、どんどん恐ろしいことになっている……というようなことも考えつつ、今回わたしはこの役どころもそうですし、とても素敵なお話を4年前華美にドラマチックに演じてしまった気がする。でもいまだからこそ、もっとリアルにリアルに演じていけたらなと思っております」
泉見「4年前、さっき禅さんおっしゃいましたけれども、大変な状況下で、稽古、本番とやらせてもらっていたんですが、ドラァグクイーンということで、この物語の中では賑やかし、華やかさ、そういう陽か陰で言えば陽の部分を担う役柄だと思うんです。多様性の時代が叫ばれて久しいですし、風通しはすごく良くなったと思うんですよね。LGBTQなどの問題に関しては。でも実際に身近な人だったり、家族だったりと考えた時には、まだまだ越えなければいけない壁というのはあると思うんです。僕自身もこの役をやらせていただくようになって、こういう女装をした時に、男性トイレに入ると驚かれたりするんじゃないかと思いますし、じゃあ女性トイレに行ったら「キャー!」と言われるんじゃないか?だとしたらどこに行けばいいんだろうと、この役をやるまでは考えもつかなかったことを考えたり、色々4年前よりも、ちょっと深くなったところがあります。またショー部分でも振りが増えていますし、バージョンアップしたものを華やかに楽しくお届けできるかなと思います」
──岸さんはジェイミーの父とサンドラの二役、渡辺さんもドラァグクイーン役ということで、これまで演じられてきた役どころとは異なった印象の役かと思いますが、ドラァグクイーンの衣装を身につけ、演じてみてどのように感じていらっしゃいますか?
岸「……おはようございます」
石川「(笑いが起こるなか)綺麗よ!」
岸「いやいや、この格好でいる時にジェイミーの父役で紹介されると思っていなかったから…(笑)ジェイミーがドラァグクイーンになることを猛反対する父親もやるので、この格好だとちょっと意見がしにくいです。みんなの嫌われ者にならなくてはいけないですね。この格好をさせていただくのはパンフレット撮影の時以来だったんですけれども、それから世界的に有名なル・ポールさんの映画やドキュメンタリーなどを観て、共感できる部分がたくさんあり、エンターテイナーとしての彼女の生き方に憧れました。ル・ポールさんをこれから目指すことになります」
石川「マジか?」
岸「嘘です(笑)でも、それぐらい自分の気づかなかったエンターテイメントへの明るいアプローチの仕方とか、ドラァグクイーンならではの楽しいエネルギーみたいなものを創れることを、日々すごく幸せに感じています。ジェフリーとのセッションはすごく刺激的な勉強になっておりますし、新たなアプローチで芝居ができることが日々楽しいです」
渡辺「前回もとても素敵なソフィスティケイでしたから、それに負けないように、また前回ドラァグクイーン役のなかでは(泉見)洋平さんが一番若かったのですが、今回は自分が一番若手なので、この年齢でこの役を演じられるのがすごく幸せです。はじめてドラァグクイーンの扮装をして、普段、役の世界で生きていると強くなった気分になるのですが、ドラァグクイーンではより一層強くなった気がすることに気づきました。事前にみんなで顔合わせからのセッションをした時のジェフリーのレッスンで「自分が家族をチョイスする」というお話があったんですね。そこがすごく考えさせられて。色々な意見があると思いますが、個人的に思ったのがやっぱり素っ裸になれることって一番の強みかなと思うんです。自分たちは役者として、それを如何にお客様に見せていくかというのがあると思います。今回まだ本番を迎えてないのにひと皮剥けたくらい強くなってる自分がすごく愛おしい。(記者たちに)わたし綺麗だと思いません?」
石川「綺麗よ、わたしは認めるわよ」
渡辺「自分でもそう思うんです(笑)なので綺麗って書いておいてくださいね(笑)。とにかく多くの方に見ていただいて、今悩んでる方々に一歩を踏み出す勇気を届けられれば、すごく嬉しいですし本望です。ですからぜひ多くの方々に観ていただきたいので、来てくださいね、皆さん待ってます」
──かなでさん、栗山絵美さん、生徒たちと演じてみて感じることや、作品の魅力でお客様に特に伝えたいことはありますか?
かなで「先生役が自分に務まるのかという不安があるんですけれども、私声量がすごくあるんです。大きな声が出るので、生徒たちを怒ったりするシーンもあるんですけど、この声量を糧に生徒たちまとめられたらなと思います。あとはこういう靴(※劇中ミス・ヘッジはジミー・チュウのハイヒールを履いている)を普段履かないので、稽古がはじまる3~4ヶ月前からパーソナルジムに通い始めたんです。それでピークからは5キロぐらい徐々に徐々に痩せたんですが、稽古に入ってあんまり行けなくなっちゃって、2キロ増えちゃったので、本番までに追い込みをかけてみたいです。作品のいいところは、ミュージカルということで、歌とダンスも素晴らしいんですけれども、皆さんの演技、そしてストーリーもすごく心動かされるものがいっぱいあると思うので、注目して観ていただきたいなと思います」
栗山「今日披露した曲もそうなんですけど、生徒たちに「私の声聞こえてる?」っていう台詞もあるんですが、誰も話を聞いてくれないんですよ(笑)。昨日最終シーンのお稽古があったんですけど、「静かにして」って言ったら、大体みんな一旦静まってくれるはずが全く誰も聞いてくれないという瞬間がありまして、すごく孤独を感じました。舞台上でこんなに嫌われる、99%私の敵という状態になったのは初めてだったので、これはもう強靭な喉と強靭な精神を手に入れて、なんとかヘッジ役を演じ抜かなければならないなと改めて決意した次第です。頑張ります。作品の魅力としては、やっぱりそのラストシーンに、私たちがジェイミーの巨大な壁と敵となり立ちはだかるので、どう闘ってくれるのか?に注目してください」
その後、ジェイミーの履くヒールなどについての話題が盛り上がったあと、演出のジェフリーも作品について語った。
ジェフリー「昨日、ディーンがジェイミーの手を取るというシーンの稽古をしたのですが、この作品の中でもパワフルな瞬間だと思うんです。なぜならこの瞬間は自分に対して一番対立していた人間、自分に一番痛みを与えてきた人物が、何かの落としどころを見つけて手を差し伸べる、手を取り合うという瞬間を象徴している。作品の中でとても重要な場面になっていると思います。昨日、その場にいたキャスト全員に、なぜディーンはジェイミーの手を取るのか、また何があればジェイミーの手を取れると思う?というディスカッションをさせていただいたんです。その瞬間というのは、今現代の社会を比喩的に象徴しているんじゃないかというふうに僕は感じています。我々は自分たちがおかしてきた間違いを自ら正すことができるかどうか、そして誠実に自分自身の心と向き合うことができるか、なおかつ自分がやってきた間違った行いを正すことができるかどうか。そういう普遍的な問いかけにつながると思います。ですからお客様にはこの作品が、ただ女の子の格好がしたい男の子の話だけではないということを理解していただきたいです。この作品はリアルな意味で、愛についての物語だと僕は考えています。こういう社会の中でも他者に手を差し伸べられるかを問いただしている。多様性公平性についての正しい知識を持ち、正しい目で見ることができるかどうか。是非お客様にこの作品の中から見出していただきたいです」
質疑応答はここで時間となり、最後に代表してジェイミー役の二人からのメッセージが送られた。
三浦「僕はこのジェイミーという役を演じていて、すごく楽しい瞬間もあれば、すごく苦しくつらい瞬間もあって。それはやっぱりジェイミー自身がそうなっているからなんですけど、この作品に出てくる登場人物全員に色々なバックグラウンドがあり、人ってやっぱり完璧じゃないし、その分成長していかなきゃいけない。様々な人の力を借りて、間違いもおかすけれども、それを認めて乗り越えて強くなるんだ。そんなメッセージをジェイミーとしてもですし、演じながら僕自身としてももらっているような感覚になります。この作品をお客様にどう受け取っていただくかは我々が決めることではないと思うので、こう受け取ってくださいとは言いませんけれども、ただこの作品を見終わった後に、ちょっとだけ自分の人生を見つめ返すような、そんな機会になる作品なのかな?と、僕は思っています。でも、とても明るくて、楽しいミュージカルでもあるので、何も考えずに楽しみにお越しいただけたらなと思っております」
髙橋「毎日楽しく稽古させていただいていて、時に苦しいシーンもあったりするので、厳しさを失わずに稽古に取り組んできて、自分を奮い立たせたり、焦りを感じたりすることもあって、本当にここで踏ん張らないと、と、そのくらいの気合いを入れてやっていきたいなと思っています。キャストの皆さんひとり一人が輝いていて、勇ましくて、すさまじくて、めちゃくちゃパワフルで、エネルギッシュで、そして愛に満ちている。自分が出ていないところでも、それぞれの人生の中で共感したり、ぐっとくるものが色々な場面にたくさんあるので、その相乗効果とエネルギーをお客様とも交感し合えたらなと思っています。本当に初日を明けるまで気を抜かずに、ストイックに頑張っていきたいです」
石川「初日まででいいの?(笑)」
髙橋「あ、いえ、千秋楽まで、更に千秋楽が終わっても再演できるように頑張りたいと思います。よろしくお願いします!」
エネルギッシュで多彩な歌唱披露、作品に対しての、非常に深い示唆に富む言葉が続いた稽古場お披露目は、熱い拍手と共に終了。ミュージカル『ジェイミー』再演への期待が大きく膨らむ時間となっていた。
取材・文・撮影/橘涼香
◆【カンフェティ限定】クリエイティブスタッフ公開インタビューイベント開催!
ミュージカル作品を支えているクリエイティブスタッフにスポットを当てた公開インタビュー実施!
本作の翻訳・訳詞担当の福田響志さんにお話を伺います!
英国発のミュージカル『ジェイミー』を日本語で上演するための翻訳作業にはどんな悩みがあったのか?など、普段は聞けない貴重なお話を深堀りしていきます。
開催日:7月19日(土)13:30公演 終演後すぐ
登壇者 :福田響志(翻訳・訳詞)
インタビューアー:橘涼香(ライター)
【対象者】
カンフェティにてミュージカル『ジェイミー』の7月19日(土)13:30公演をご購入の方
公演概要
ミュージカル『ジェイミー』
公演期間:2025年7月9日 (水) 〜 2025年7月27日 (日)
会場:東京建物 Brillia HALL(東京都 豊島区 東池袋 1-19-1)
■東京公演
期間:2025年7月9日(水)~7月27日(日)
会場:東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
■大阪公演
期間:2025年8月1日(金)~3日(日)
会場:新歌舞伎座
■愛知公演
期間:2025年8月9日(土)~11日(月祝)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
■キャスト:
ジェイミー・ニュー:三浦宏規/髙橋颯(WATWING)
マーガレット・ニュー:安蘭けい
プリティ:唯月ふうか/遥海
ディーン・パクストン:神里優希/吉高志音
ベックス:小向なる
サイード:里中将道
ファティマ:澤田真里愛
ミッキー:東間一貴
サイ:星野勇太
リーバイ:MAOTO
ベッカ:元榮菜摘
ヴィッキー:リコ(HUNNY BEE)
(五十音順)
ライカ・バージン:泉見洋平
トレイ・ソフィスティケイ:渡辺大輔
ミス・ヘッジ:かなで(3時のヒロイン)
ミス・ヘッジ(女性役U/S):栗山絵美
ジェイミーの父/サンドラ・ボロック:岸祐二
レイ:保坂知寿
ヒューゴ/ロコ・シャネル:石川禅
学生スウィング:山村菜海、増山海里
※ミス・ヘッジ役のかなで(3時のヒロイン)が出演しない回がございます。該当回はアンダースタディの栗山絵美がミス・ヘッジ役で出演いたします。
■スタッフ:
音楽:ダン・ギレスピー・セルズ
作:トム・マックレー
日本版演出・振付:ジェフリー・ペイジ
翻訳・訳詞:福田響志
音楽監督:前嶋康明
美術:石原 敬
照明:奥野友康
音響:山本浩一
映像:石田 肇
衣裳:十川ヒロコ
ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:吉田純也
演出補:元吉庸泰
稽古ピアノ:太田裕子
演出助手:宗田梁市
振付助手:隈元梨乃
舞台監督:幸光順平
企画制作:ホリプロ
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S席当日引換券(平日) :13,000円 +4,000Pゲット!
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