【稽古場レポート】大人の麦茶ラストオーダー公演「ネムレナイト」。桜の散る季節に、パッと咲いて華やかに散る。大団円のラストは必見!

【稽古場レポート】大人の麦茶ラストオーダー公演「ネムレナイト」。桜の散る季節に、パッと咲いて華やかに散る。大団円のラストは必見!

そして台本の読み合わせは、寺の住職宮坂悦生(辻久三)の妹、椿(浅田光)が帰ってくるシーンから始まった。そこに熟練刑事の田辺(並木秀介)と若手の春日部(岩田有弘)が椿に絡んでいく。

霊が見える鬼姫という触れ込みの椿。いかがわしいものでも見るかのような目を向ける刑事。しかし椿は兄の無実を晴らすためにやってきたと言う。 
兄の悦生に未亡人殺しの嫌疑がかかっているのだ。

一見粗暴に見えるが人の良い田辺刑事、優男の春日部刑事、気が強く正義感溢れる椿。その様子を伺っている幽霊たちのなかでも、未亡人の宝子(山村紘未)の関西弁が色っぽくて魅力的だ。椿のセリフも滑舌が良く、聞いていて清々しいほど。この時点では、まだ時代はわからない。

「ファンシーショップ」というセリフが出てくることから80年代の片鱗は感じるが、寺が舞台なことといい、まるで落語のような世界観だ。
粋でテンポの良いセリフに、ぐいぐいと引き込まれてしまう。

塩田の演出も「新米刑事の春日部は、キラキラしていることを最重視して、二の線を崩さずに。さわやかな風で面白くして」や「椿は、お兄さんに疑いがかかってることに怒りを込めて話して欲しい。お兄さんと会って話している時は穏やかなんだけど、田辺刑事に対しては怒りの滑走路に持っていって欲しい」など内面を表現し、漫画のようなキャラクターに人間としての深みを出していく。
この言葉まで、すでに面白い。

ここで同じシーンをダブルキャストの田辺役池田稔と春日部役菊地賢太に変えて再度、本読み。今回は悦生役も辻久三宮原奨伍とのダブルキャストだ。

美治、悦朗、うさ吉(髙﨑俊吾)の幽霊たちは椿には見えているという設定らしい。幽霊たちに対してあくまで強気にふるまう椿、タジタジになる幽霊たち。悦朗は椿の実の父親だ。新人幽霊の宝子はなぜか楽しそうだ。

椿が去った後は「私、こうして死にました」の不幸自慢が始まった。それぞれ亡くなった時の状況をエピソードトークよろしく、各人が話すという趣向だ。その昔、お昼のテレビ番組ライオン「ごきげんよう」のサイコロを転がすシーンで流れる曲を、口三味線で「トゥルルトゥルルル〜♪」と口ずさむうさ吉と美治。

このシーン、世代でない二人に「ごきげんよう知ってる?」と確認が入り、役者全員でこのイントロを口ずさんでみる。他にもバイクのカワサキZⅡ(ゼッツー)がセリフに出てくるシーンでも「最近ショウちゃんっつーのがZⅡ買ったんで『カッチャン』って音録れますよ!」と役者がいうと「それいいですね、最高です」と、すかさず塩田が返す。
このやりとりを含めて劇中劇のようで、これまで劇団が培ってきた風通しのよい雰囲気を感じさせた。

ここから先は、ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、うさ吉と美治の死の真相は衝撃的だった。椿の最初の恋人だったうさ吉。その死の描写の鮮やかさ。恋に浮かれたまま散ってしまう様子が悲劇的だけれど美しく描かれている。そんなことを語るうさ吉に、合いの手を入れる宝子も絶妙だ。うさ吉のカラオケの「オハコ」は、スピッツに槇原敬之だった。90年代に青春期だった筆者にはツボにはまるヒット曲だ。

ミハルの死を描いた一連のシーンも圧巻だ。恋愛、友情、畳み掛けるような会話劇に疾走感あふれるアクションの描写。話だけを聞いていても、映像が眼に浮かぶようなグルーヴ感だった。衝撃的で少しグロテスクだけど、どこか滑稽。そして鮮やか。切なさも滲む一陣の風のようだ。幽霊だけれども、確かに青春真っ盛りの青年たちの姿が浮かび上がってくる。

立ち会ったのはここまでだが、あまりに面白くて続きが気になり、帰り道で台本を読んでしまった。はたして悦朗お父さんの死に方も想像を超えていた。死に様という言葉は好きではないが、死に方にその人のパーソナリティーの全てが詰まっている。そして、それがたまらなく愛おしいのだ。そして「大人の麦茶」の「大人」の部分、色っぽい要素もまたかわらしい。存分に味わいたい。
そしてラストの大団円へ。全ての符牒が合ったところで寂しくも晴れやかな最後を迎える。天晴れというしかない。さらに、ここに無垢な新人幽霊、都蘭(山岸理子)が加わるとどうなるのだろう。開幕まで楽しみだ。

(取材・文・撮影/新井鏡子)

大人の麦茶 ラストオーダー『ネムレナイト』

公演期間:2024年4月10日(水)〜4月21日(日)
会場:下北沢ザ・スズナリ(東京都世田谷区北沢1-45-15)

■出演者
奥谷知弘
山岸理子
髙﨑俊吾

並木秀介(大人の麦茶)[人組、麦組]
池田稔(大人の麦茶)[大組、茶組] 
辻久三(大人の麦茶)[人組、茶組]
宮原奨伍(大人の麦茶)[大組、麦組]
岩田有弘(大人の麦茶)[人組、麦組]

菊地賢太[大組、茶組]
浅田光
山村紘未

杉本凌士

[生演奏]
石澤瑤祠

杉山章二丸 from.MOJO CLUB,ザ・タイマーズ 19日/20日昼/夜
五十嵐あさか 10日/11日
阪本稔英 from.しげとよ 13日昼/夜
大山克幸 17日昼/夜
肥後朱音 19日/20日昼
燐-Lin- 18日


■スタッフ
脚本・演出:塩田泰造
音楽・宣伝美術:石澤瑤祠

美術:田中敏恵
照明:菅橋友紀(balance,inc.DESIGN)
音響:木下勝哉
舞台監督:HiRoE/鈴木克彦
演出補佐:望月麻里
衣装協力:黒田匡彦
ヘアメイク協力:伊藤有香
イラスト:Noor
票券:加藤七穂
映像収録:水野博章

製作:ISIプロダクション
主催:大人の麦茶

<協力>(五十音順)
アップフロントクリエイト/エンターテインメント風集団秘密兵器/Candy Boy/銀岩塩/KUMSTYLE/THE SHOJIMARU/SHIN ENTERTAINMENT/椿組/テレビ朝日ミュージック/ハッチ/balance,inc.DESIGN/ブラッドブラザーズ/本多企画/Mensoul流/model agency friday/ロングランプランニング

■公演スケジュール
4月10日(水)19:15[大組]
4月11日(木)19:15[人組]
4月12日(金)19:15[麦組]
4月13日(土)14:00[茶組]/18:00[人組]
4月14日(日)14:00[麦組]/18:00[人組]
4月15日(月)休演日
4月16日(火)19:15[茶組]
4月17日(水)14:00[大組]/19:15[麦組]  
4月18日(木)19:15[茶組]
4月19日(金)19:15[人組]
4月20日(土)14:00[大組]/18:00[茶組]
4月21日(日)14:00[麦組]
[45分前受付開始30分前開場]

大組[池田、菊地、宮原]
人組[並木、岩田、辻]
麦組[並木、岩田、宮原]
茶組[池田、菊地、辻]

■チケット料金
<チケット>(全席指定席)
【前売】5,000円(税込)
【U-30】4,000円(税込)
【学割】3,000円(税込)(要学生証)
【当日券】5,500円(税込)

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