【稽古場レポート】『Withered Life 苛烈玖州事変』 ダイナミックな殺陣が作品の大きな魅力

【稽古場レポート】『Withered Life 苛烈玖州事変』 ダイナミックな殺陣が作品の大きな魅力

“どこまでも続く旅を、景色を、作品として届ける” をコンセプトとする演劇プロデュースユニット Charm(シャルム)。2月14日から上演される最新作『Withered Life 苛烈玖州事変』は、Charmが上演したダークサスペンスファンタジー『Withered Life』の続編だ。

1作目に引き続き、主人公の工藤春を演じるのは笠原織人。玖州チームのリーダー・慶悠二を五十嵐拓人、関西チームの芥川薫を竹迫祐貴が演じるほか、澄華あまね、青柳伽奈、井本涼太、斉藤秀翼、古畑恵介らが顔を揃えている。

<あらすじ>
かわりばえのしない生活に飽き飽きしていた高校生・工藤春は、些細なことから恋人である高橋友希葉と喧嘩をしてしまう。仲直りのため彼女の家に向かった春は、途中で交通事故に遭って死んだはずだった。しかし、目を覚ますと友希葉たちとともにWithered Lifeと呼ばれる「現世と冥界の狭」に、記憶をなくした状態で存在していた。

そこでは、決められた敵を倒すと生き返って現実世界に戻ることができる。

与えられた任務を順調にこなしていく春たちだったが、突如ルームメンバー内でのバトルロワイアルが発生。上林美樹が友希葉を殺してしまう。仲間を失い、精神的に疲労しながらも進んでいくことを決意する生き残ったメンバー。

そんな中、春たちの前にWithered Life最強と呼ばれる慶悠二が率いる玖州チーム、芥川薫が率いる関西チームが現れる。彼らとの出会いで実力不足を痛感し不安を抱く春。

さらに、ヴァンパイアの王ウラド・ツェペシュが彼らの前に立ち塞がる――。


本番まで約10日のこの日は、殺陣稽古が行われていた。作中で各チームによるバトルロワイアルが繰り広げられるため、参加しているキャストが入れ替わり立ち替わり殺陣の確認を行う。

日本刀や西洋剣、鎌など大きな武器を扱うキャラクターが多いのに加え、両手に武器を持って戦うキャラクター、トリッキーな能力を持つキャラクターも。バトルが華やかになる一方で、強さや能力の高さに説得力を持たせるためには滑らかな動き、力強さが必要不可欠だ。

ストーリーやセリフ、キャラクターの感情に合わせて無理なく動けるか、迫力があって綺麗なアクションになっているか。Charm主宰で殺陣師も務める吉田健児を中心に、キャスト一人ひとりが主体的に殺陣を確認していた。

アクション経験が少ないキャストに対しては、吉田が「遠慮しなくていいから思い切り(刀を)振ってみて」と声をかける。何度か繰り返して感覚を掴むと、次は芝居の中で自然に動けるように、バトル相手と息を合わせて形を作っていく。

地道で丁寧な調整や表情・動きの追加によって一つひとつのアクションがグッと洗練されていくため、同じシーンを繰り返していても単調に感じることなく楽しめた。

この日はセリフがほぼない状態での稽古だったが、扱う武器や立ち回りの様子からキャラクターの性格や個性が見える。詳細が明らかになっていないキャラクターを含め、性格や背景への想像が膨らんでワクワクした。

バトルロワイアルに対する向き合い方もそれぞれ。積極的に仕掛ける者もいれば、誰かや何かを守るために強さを発揮する者、コミカルな言動で笑わせてくれる者もいる。

日本刀を使うという点は同じでも、端正な立ち姿が印象的な春(笠原織人)、鋭さを感じさせる慶(五十嵐拓人)、パワフルな芥川(竹迫祐貴)と、個性豊かな戦い方が楽しい。

関東・関西・玖州チームが三つ巴の戦いになったり、強敵を前にライバルが共闘したりと、熱い展開も多数。ウラド率いるヴァンパイアチームは、殺陣稽古の時点で圧倒的な強さを感じさせる佇まいだ。見ているだけで息が切れそうな熾烈なバトルに、慣性系への期待が高まった。 

緊張感があるシーンではあるが、手数の多い部分は斉藤が笠原たちと声を掛け合い、全員でカウントを取りながら進めていくなど、和気あいあいとした雰囲気。迫力満点の殺陣はカンパニーのチームワークあってこそだと改めて感じる。

殺陣だけでも見どころ十分な本作。ネタバレになるため詳細は伏せるが、個性豊かなキャラクターたちが繰り広げる人間ドラマも魅力に溢れている。音楽や衣装、照明も加わり、重厚なダークサスペンスファンタジーの世界が劇場に現れるのが楽しみだ。

<公演概要>

『Withered Life 苛烈玖州事変』
2024年2月14日(水)~18日(日)
シアターグリーン BIG TREE THEATER

作・演出 吉田健児

キャスト
笠原織人 五十嵐拓人 澄華あまね 斉藤秀翼 松原凛 古畑恵介 登野城佑真 神村風子 菅野勇城 樫村みなみ 松川大祐 河野凌太 竹迫祐貴 青柳伽奈 結城さと花 入倉慶志郎 井本涼太 鷲見亮 円田はるか 愛須唯 梅村真理奈 小室龍 田辺レオ 坂本翔太郎 吉田健児 田中香子

チケット
S席 10,000円 A席8,000円 一般席6,000円
(全席指定・税込)

HP:https://twitter.com/charmcharm2019
問い合わせ:Charm 
mail:unitcharme@gmail.com

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