【公演レポート】ワガママ姫がみんなの“命”を救う!? 舞台 『ティアムーン帝国物語~断頭台【ギロチン】姫 on The Stage~』

【公演レポート】ワガママ姫がみんなの“命”を救う!?  舞台 『ティアムーン帝国物語~断頭台【ギロチン】姫 on The Stage~』

舞台 『ティアムーン帝国物語~断頭台【ギロチン】姫 on The Stage~』が、11月9日(木) 昨年上野に新設された劇場・飛行船シアターにて幕を開けた。
10月からTVアニメが始まったタイミングでの3度目の舞台化となり、今回は2020年に上演された初演のアレンジ版として、キャストも一新されている。

原作は小説投稿サイト「小説家になろう」で生まれた『ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜』で、2019年よりTOブックスより刊行されている。

「小説家になろう」の小説、通称“なろう系”小説のトレンドの1つに“転生もの”と呼ばれる、文字通り1度目の生涯を終えた者が転生し、人生をやり直すストーリーを描くジャンルがある。本作もこれに当てはまるが、特徴的なのがヒロインのミーアが“自分自身”に転生し直しているという点だ。

崩壊したティアムーン帝国で処刑されたわがまま皇女・ミーアは、12歳の頃の自分に生まれ変わる。目覚めた彼女の手元には、過去のミーアが書き記した血染めの日記帳と、真新しい日記帳が存在していた。首を落とされて死んだトラウマから、今度こそはそんな人生を歩むわけにはいかない、とミーアはその日記帳を頼りにギロチン処刑を回避しようと躍起になって行動を起こしていく。

今回ミーア役を射止めたのは、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』に“悪のヒロイン”として出演し話題となった宮崎あみさ

高笑いがよく似合い、今にも「パンがないならお菓子を食べればいいじゃない」と歴史上の某王女の如く言い出しそうな雰囲気を醸し出しながらも、コロコロと変わる表情も相まってどこか憎めない愛らしさを併せ持つ彼女に、多くの登場人物たちがやがて魅了されていく。

物語はミーアの心の中の描写に加え、ストーリーテラーとして登場する謎の人物・クロノ(演・田上真里奈)の耳心地良い解説と歌声によって、原作・TVアニメ未履修の観客にも分かりやすく進行していく。

田上演じるクロノはどうやらミーアを含めて、登場人物たちからは見えていないようで……?その正体にもぜひ注目してご覧いただきたい。

2度目の人生で何が何でも処刑を免れたいミーアは、帝国が荒れる原因となった疫病や飢饉を未然に防ぐべく、“クソメガネ”こと自他ともに厳しい文官のルードヴィッヒ(演・株元英彰)に教えを乞うことに。

何かにつけて「(私の)命のために!」と豪語するミーアの姿に、周りの人物たちは国民たちの命を尊重する素晴らしい姫だと、勝手に勘違いをしていく。この頓珍漢なやり取りが何度も繰り返され、まるで奇跡のごとく、彼女の運命が変わっていく様は実に痛快であった。

また、前世からいつどんな時もミーアを支えたのは、おっちょこちょいだけど優しいメイドのアンヌ(演・湯本亜美)だ。

裏表なく献身的にミーアに尽くし、ミーアも前世で最後まで自分の味方でいてくれたアンヌを無条件で信頼している。主従関係を越えた2人の親愛が先の読めない展開でも安心感を与えてくれたように思う。

さてコミカライズの『ティアムーン帝国物語』には、一風変わった人気キャラクター”ギロちん”が存在する。ミーアの妄想内に登場するギロチンの擬人化キャラクターで、なんとオフィシャルの人気投票でも4位にランクインしたことがあるとか……。

舞台版ではアンサンブルキャストがこの“ギロちん”よろしく、何度もミーアの処刑シーンをフラッシュバックさせる。どうしたら未来は変わるのか四苦八苦するミーアだが、このコミカルなやり取りをもう少し見ていたくなってしまうのも舞台版ならではの魅力だ。

アンヌやルードヴィッヒの協力で、病院を建設し、小麦の定期便を契約するなど、疫病と飢饉に向けた基本的な対策をとることに成功したミーア。

その(一見すると)慈愛に満ちた(でも自分のための)行いは、徐々に国内外でも評判になる。前世ではミーアの死刑執行人を務めた百人隊の隊長・ディオン(演・樫澤優太)の耳にも、その噂は届き始めていた。

そんな中、ミーアは王族・貴族が集うセントノエル学園に通うことになるが、そこには前世でミーアを糾弾した革命の旗印・ティオーナ(演・鵜川もえか)、彼女と結託した隣国・サンクランド王国の第1王子・シオン(演・熊澤歩哉)の姿も。

なるべく2人とは接点を持たないようにしたいミーアだが、なかなかそうもいかないもので……2人に加え、シオンの従者・キースウッド(演・高士幸也)、ティオーナのメイド•リオラ(演・河地柚奈)らまで、いつの間にか行動を共にすることに。

さらにシオンに対抗すべく、レムノ王国の第2王子・アベル(演・吉田知央)に接触するミーア。

しかし、第1王子である兄とのいざこざや、従者・モニカ(演・奥村優希)とサンクランド王国の諜報部員グレアム(演・友常勇気)の内通など、アベルの周りは何やら不穏な雰囲気である。

とにかく首を切られたくないだけだったはずのミーアだったが、いつの間にか沢山の登場人物たちに囲まれ、彼女の未来は彼女1人だけの問題ではなくなってくる。自分の命が1番大事……だったはずのミーアが、仲間のピンチにどう立ち振る舞うのか、そしてそんなミーアのために周囲はどう動くのか、孤独だった前世との違いにきっと胸が熱くなるはず。

人はいつだって“やり直し”ができる。12歳のミーアがワガママに、しかし懸命に運命に抗う姿からは、明日を生きる活力を分けてもらえるはず。ぜひその2度目の生き様を目に焼き付けてほしい。

<取材・文・撮影:通崎千穂(SrotaStage)>

舞台 『ティアムーン帝国物語~断頭台【ギロチン】姫 on The Stage~』

■公演日程:2023年11月9日(木)~16日(木)
■劇場:飛行船シアター

■原作:餅月望『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』(TOブックス刊)
原作イラスト:Gilse
漫画:杜乃ミズ

■脚本:西瓜すいか
■演出:田中精(30-DELUX)

■キャスト:
宮崎あみさ
湯本亜美
熊澤歩哉(円神) /吉田知央/高士幸也/株元英彰/樫澤優太(IVVY)
鵜川もえか/河地柚奈/奥村優希(×純文学少女歌劇団)
三浦修/久野木貴士/神木祐希
大成翔輝/遠藤佑哉/栗林かすみ
森田凱斗/並木愁太郎/永易大空/唐沢朱音
友常勇気
田上真里奈

■STAFF:
映像:アズムプロダクション
音楽:中前”Timo”智彦
美術:荒川真央香(荒川デザイン)
ヘアメイク:成谷充未
衣装:黒田桃加(とわづくり)

■プロデューサー:神田明子
■製作:TOブックス企画製作部

■チケット情報         
最前列(S席) 15000円(全席指定/税込)
一般席(A席) 9000円(全席指定/税込)

© Nozomu Mochitsuki / TO Books.

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