KAAT神奈川芸術劇場、2024年度ラインアップを公開!

KAAT神奈川芸術劇場、2024年度ラインアップを公開!

能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げますと共に、1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
2024年は胸の痛む年明けとなりました。
こうした時、芸術に何が出来るのかと苦しむことがあります。しかし人間の営みに、文化・芸術は欠かせないものです。皆様の暮らしの一部である公共劇場として、心を動かす作品をお届けしていきたい、そして豊かな未来へ向けて、才能あるアーティストに多くの機会を生んでいきたいと考えています。これからも、神奈川県の皆様を始め、日本、そして世界へ発信する劇場として、KAAT 神奈川芸術劇場は、ますます「ひらいて」いきます。
今年度のメインシーズンのタイトルは、「某〜なにがし〜」。シェイクスピア作品から日本文学の舞台化、現代のテクノロジーと身体を問う実験的なプログラムなど、ずらりと刺激的な作品が揃います。またプレシーズンにはあの話題作の再演。キッズ・プログラムは気鋭の作家が書き下ろします。
本年もKAAT神奈川芸術劇場の魅惑のラインアップをご堪能くださいませ。

KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督
長塚圭史


撮影:加藤甫

2024年度ラインアップ発表会にて
スクリーン内(敬称略)
上段左より 兼島拓也 、田中麻衣子 、アンディ・マンリー、加藤拓也
中段左より 藤田俊太郎 、南条嘉毅 、山田うん、池上高志
下段左より マシュー・レントン、下島礼紗、山本卓卓
スクリーン手前中央:長塚圭史

◆KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『ライカムで待っとく』

作:兼島拓也
演出:田中麻衣子
5月24日(金)~6月2日(日) <中スタジオ>

KAAT キッズ・プログラム 2024
『ペック』

作・出演:アンディ・マンリー
7月上旬 <大スタジオ>

KAAT キッズ・プログラム 2024
『らんぼうものめ』

作・演出:加藤拓也
7月下旬 <大スタジオ>

◇KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
『リア王の悲劇』

作:W.シェイクスピア
翻訳:河合祥一郎 演出:藤田俊太郎
9月 <ホール内特設会場>

◇KAAT EXHIBITION 2024
南条嘉毅展|地中の渦

9月22日(日・祝)~10月20日(日)(予定) <中スタジオ>

◇KAAT×山田うん×池上高志
『まだここ通ってない』(仮)

企画・構成:山田うん、池上高志
10月中旬 <ホール内特設会場>

◇日英共同制作 KAAT × Vanishing Point
『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』

原作:村上春樹
演出:マシュー・レントン
11月29日(金)~12月8日(日) <大スタジオ>

◇KAAT×ケダゴロ×韓国国立現代舞踊団 国際共同制作
『黙れ、子宮』(仮)

振付・演出・構成:下島礼紗
12月13日(金)~12月15日(日) <大スタジオ>

◇新ロイヤル大衆舎×KAAT vol.2
『花と龍』

原作:火野葦平
脚本:齋藤雅文
演出:長塚圭史
2025年 2月中旬~下旬 <ホール>

◇KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
新作 書き下ろし演劇作品

作:山本卓卓
演出:益山貴司
2025年 2月~3月 <中スタジオ>

◇YPAM ‒ 横浜国際舞台芸術ミーティング 2024
12月 <大スタジオ>等(予定)

◆提携公演
Baobab  :
4月27日(土)〜5月6日(月・祝)(予定)<大スタジオ・アトリウム>
CCCreation:6月 <大スタジオ>
KUNIO  :6月 <中スタジオ>
横浜夢座 :9月13日(金)~9月16日(月・祝) <大スタジオ>
劇団た組 :2025年 1月上旬 <大スタジオ>
Co.山田うん:2025年 1月24日(金)~1月26日(日) <大スタジオ>
ほか

作:兼島拓也
この作品を再演することができ、とても光栄です。
初演から2年、ウクライナでの悲劇は未だ収束せず、あらたにガザ地区でも見るに堪えない事態が勃発し、心が苦しくなるばかりです。
私が住むここ沖縄は、相変わらず「決まり」が覆ることもなく、粛々と、そして堂々と、物事は進んでいきます。先日屋久島沖でオスプレイが墜落した後、同じ機体たちは1週間ほど何事もなく飛び続け、休憩に入りました。この文章が公開される頃には、優雅に、気持ちよく飛び回っているでしょう。
本土復帰50年というお祭りも終わり、変わらず嫌な方へと変わり続ける世界の中に、この作品が何かしらの影響をもたらしてくれたらと願いますが、まあ、どうなんでしょう。

◆演出:田中麻衣子
沖縄本土復帰50年の冬に上演した『ライカム〜』の再演です。兼島さんのセリフを先頭に、皆で、一層、熱気を帯びたものにしたいと思っています。歌って踊ってお酒を飲んで三線弾いて、集まっておしゃべりすることが大好きな登場人物たちを、ぜひ観に来てください。沖縄と神奈川、1964年と2024年、あっち側とこっち側、突きつけられる現実を、劇場で体感してください。

作・出演:アンディ・マンリー
こんにちは。私はアンディで、『ペック』のパフォーマー兼クリエイターです。
友人のイアン、ショナ、ウィル、エル、アバロン、アリスと一緒にスコットランドで舞台を作ってきましたが、日本に行ってみなさんにお会いできることを本当に楽しみにしています。
私は何度か日本を訪れたことがありますが、あなた達の国が本当に大好きです。『ペック』は、2019年に訪れたときに聞いたり見たりした音やモノからインスピレーションをもらったところがあります。想像力豊かな遊びや私たちが楽しんで作ったおもしろいオブジェクトがいっぱい登場します。ぜひ楽しんでいただき、自分も遊んでみたいという気持ちになってほしいです。

作・演出:加藤拓也
神様がらんぼうに振舞っていると思う事があります。どんなできごとを神様のしわざと思うか自由だけれど、言い伝えの神様も、自分に降りかかってきたことも、これが神様のしわざなら、非常にらんぼうです。と同時に、そのような自覚も彼らには無く、それもまたらんぼうです。そんなことが今回の劇の出発点になっています。去年、偶然にも国外でキッズ向けのプログラムを体験する機会がありました。目線は確かにキッズで作られていつつも大人も楽しめる時間で、今回の『らんぼうものめ』もキッズ・プログラムでありつつも、そのような作品になるように取り組んでいきます。

演出:藤田俊太郎
この度、長塚圭史芸術監督の掲げるシーズンテーマ「某」にて、『リア王の悲劇』の演出を担わせていただきます。時代を超えて支持され愛される文学の最高峰に挑戦できることを心から幸せに思っています。老い、寛容、分断、支配、ルーツ、愛。2024年に問うべき作品の主題を多義的に豊かに、リアの存在・言葉を通して創作したいと考えています。演出するにあたりフォーリオ版での上演、時代を戯曲の設定である 3~5世紀にしました。舞台であるブリテンに、キリスト教の考え方や概念が入る前の、人間としての在り方、尊厳と向き合いたいと思っています。台本の言葉が今を生きる私たちに多くのことを与えてくれると思います。魅力的な人物たち、特に女性の生き様に光を当て、この物語を通して、ジェンダーレスな物事の捉え方と、あらためて女性の価値観を見つめる’眼差し’を大事にしたいと考えています。素晴らしいキャストの皆様、プランナー、スタッフ、カンパニーの皆様と、シェイクスピア作品、演劇の喜びに溢れた仕事をし、お客様にお届けしたいと思っております。なにとぞ宜しくお願い致します。

作家:南条嘉毅
私は、制作対象の場所に赴き、取材や調査を繰り返し、現在だけではなく歴史的・地理的側面からもその土地を考察し、複層的な表現方法をとっています。今回私が注目したのは、大都市横浜に積み重なった地層です。会場となるKAAT神奈川芸術劇場が位置するエリアは、古くは縄文・弥生に人が住み始め、明治には開港地の外国人居留地として多くの人々が行き交う重要な場所でした。現在でも、地層の中からその痕跡が発掘されています。
本展では、横浜の地中へと潜り、地層の中に埋もれた時間の流れと人々の痕跡をたどりながら、現在私たちが見ている景色や暮らしを再認識します。

企画・構成:山田うん
このたびKAAT神奈川芸術劇場で、池上高志さんと舞台作品を製作します。 2022年からスタートした共同クリエイションの中で、様々なトライ、エラー、チャレンジ、ディスカッションが生まれました。人工知能(AI)や人工生命(Alife)と、人間との間にどんな関係ができるだろうと考えることは果てしない問いです。機械と人間の相互作用によって新しい知性が誕生したり、振る舞い方が湧き上がってきたりするとしたら、どんな仕掛けと自然の力を融合させたらワクワクするのだろうか。
新しい時代の中にユーモラスに機能するような何か、「作品」というよりも「場」を創造し、摸索しています。今回KAATで次なる一歩を展開できることで、これまでより先に進んだ面白いものをご覧いただけるかと思います。楽しみにしています。

企画・構成:池上高志
前回ロボットやAI、VRを使って山田うんさんと創作した作品がとても面白くて、研究で普段やっていることとは違い、人工知能を現実世界に降ろし、もっとAIやロボットの可能性を設計できると感じました。
今回のテーマについてですが、日常生活には常に新しい発見があり、AI、特に言語モデルのLarge Language Modelを使うことで、一挙に人間の知覚や認識が広がり、同じ風景でも今まで見なかったことが見えてきます。そういうことをテーマに、新しい芸術作品や表現が作れるのではないかという期待をもっています。AI、特に Large Language Model は言葉だけの世界ですが、それに身体が加わることで、人間世界に降りてくると考えられます。うんさんの身体表現や身体を使って世界を、動く空間をどう見ていくかということが、言葉だけに頼りがちなAI に欠如をしている部分を補えると考えられるので、その点に関しても、うんさんとの試みは非常に面白いと期待しています。

演出:マシュー・レントン
こんにちは、皆さん。 劇団ヴァニシング・ポイント芸術監督、マシュー・レントンです。
今回、KAAT神奈川芸術劇場と共同制作する『品川猿の告白 Confessions of a Shinagawa Monkey』は、村上春樹さんが約14年離れて書かれた「品川猿の告白」と「品川猿」という2つの物語で構成されています。1999年、私が青年時代に「スプートニクの恋人」を読んで以来、大ファンである村上さんの二つの物語をまとめて、彼の世界を掘り下げることができることに興奮しています。
そして、スコットランドと日本のパフォーマーやアーティストが集まり、本当にユニークで美しく面白い作品を創作できる機会だと信じています。村上さんの小説は、私たち全員にとって非常に普遍的な方法で語られていると思います。そして、私たちが彼の物語を正しく表現できることを願っています。

振付・演出・構成:下島礼紗
私には生まれつき子宮がありません。子宮が形成されなかったのではなく、この世に子宮を持ち込まないことを私が選択し、母の胎内で自ら子宮を取り外して産まれてきました。「胎内で自ら選択した」ということ。これは韓国の数え年の文化にインスピレーションを得て後から発見したのです。
2011年3月、18歳の私に医者は言いました。「あなたにはキンタマがあるかもしれない」。震災の真っ只中、私の身体の中でキンタマが大きく揺れていました。
“あると思っていたものがなく、ないと思っていたものがある” 。この<欠落>と<余分>の感覚が、「私は女である」ことをなぜか強く自覚させました。
今回、2021年に韓国国立現代舞踊団(KNCDC)から委託され制作した作品『黙れ、子宮』を土台とし、私が、私の身体をめぐって韓国・日本で体験した出来事を題材に再創作します。

◆脚本:齋藤雅文
『花と龍』…なんと美しいタイトルでしょう。原作は日本文芸史上に燦然と輝く大衆小説の白眉であるとともに、波乱の人生を生きた作者の父母たちの魂のドキュメントでもあります。
たった百年前の物語ですが、コレラに翻弄され日露戦争に狂奔する時代を身体一つで必死に、かつ痛快に奮闘する主人公たちの姿は、混沌とした現代の我々に大きな勇気と夢を与えてくれます。
当時の九州の港を舞台に、まるで西部劇のような血沸き肉躍る展開!しかも堂々のラブロマンス!本作は「まっとうに生きる」とは、「人としてあるべき生き方」とは、という本来的な真実を示してくれます。この情熱の物語の劇化にかかわることが出来る幸せ。劇作家冥利に尽きると申せましょう。

◆演出:長塚圭史
火野葦平の傑作『花と龍』を新ロイヤル大衆舎×KAATで上演します。『花と龍』は1952年に読売新聞で連載された大河小説です。その圧倒的人気ゆえ何度も映画化されています。四国からの流れ者・玉井金五郎が、北九州で沖仲仕として歩み始め、広島から南米を夢見て流れ着いた肝っ玉の妻・マンと共に、争いを嫌い、情に厚く、信念を持って突き進みます。やがて多くの信頼を集め、地域の非道な権力者たちと渡り合い、やがては労働環境改善のために政治家へと身を転じていくのです。驚くべきはこの痛快な物語が実話に基づいていることです。そしてその血はなんとアフガニスタンで用水路を開いた医師・中村哲氏へと繋がっています。名もなき男女が、厳しい労働環境の中で出会い、己の正しさに従って真っ直ぐに進み、思いがけぬほど多くの人々の心を動かしていきます。シーズンタイトル「某」と呼応する人情活劇であり、北九州の炭鉱が栄えた日本の経済発展の歴史の1ページでもあります。芸術監督に就任した2021年にこの組み合わせで劇場入口広場のアトリウムに仮設した劇場で上演した『王将』-三部作-はコロナ禍のため、予定していた劇場の賑わいを生み出すことは叶いませんでした。『花と龍』はホールでの上演ですが、この賑わいへの思いは今も失ってはいません。ホールとロビーが華やぐ仕掛けを生み出したいと考えています。日本の演劇を明るく照らす新ロイヤル大衆舎と、圧倒的な実行力を持つKAATの新作にご期待ください。

◆作:山本卓卓
2023年に上演した範宙遊泳『バナナの花は食べられる』の「人を助けたい」から、もう「人を助けている」人たちの話へ。人を助けることを諦めそうになるヒーロー。人を愛することをやめようとする人間。もうすでにそれをやめている怪物。戦うことは傷つけることとわかっているのに戦わなければならない立場。戦うことを放棄する者。死ぬ者。生き残る者。愛と正義が両立しない時人はどうするか。深い愛の正体は、闇深い狂気なのかもしれないという疑心暗鬼。現代の「争い」に言葉と物語と暗喩で応答する。
戯曲の企画書に書いたのが上記の通りです。KAAT神奈川芸術劇場の懐の深さに乗じて、戯曲としてたくさんの挑戦と挑発をすることになるでしょう。山本卓卓いいもん書きます!←最近このフレーズお気に入り。



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