新たな舞踊家・振付家がここから生まれる。
「Noism2」は、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する「Noism Company Niigata」の研修生カンパニー。
今回の定期公演では、Noism芸術総監督・金森穣がNoism2のために振付した作品『火の鳥』とNoism1メンバーが振付を手掛ける新作2本の、合わせて3作品を上演。
『火の鳥』は2011年の初演から、2012年、2016年、2022年と再演を重ねているNoism2の代表作。「シンパシー(共鳴/同感/同情)」をテーマにした本作には、今を生きる子どもたちに向けた想いが
込められている。
同時に、Noism1メンバー中尾洸太による『It walks by night』、樋浦瞳による『とぎれとぎれに』の新作2本を上演。2024年の「Noism2 定期公演 vol.15」で振付家デビューとなった中尾に続き、今回は新潟県出身の樋浦瞳が振付家デビューを果たす。
2人の振付家との新作クリエーションを通して、Noism2 のまだ見ぬ側面が浮かび上がる。
今を生きる新たな感性によって生み出される作品にどうぞご期待ください。
◆公演によせて
■『火の鳥』再演
2011年の初演以来、5回目の上演。Noism2の代表作ともいえる『火の鳥』は、音楽の素晴らしさと舞踊表現の様々な要素が相まって劇的な瞬間を創出し、後には心地よい余韻を残す力強い作品です。
初めての方にはもちろん、すでに観た方ももう一度見ていただきたいという思いがあります。舞踊は映像とは違い、名作を同じ形で上演することができません。出演者は時代と共に変わっていきます。しかし、そんな変化しつつ受け継がれていく出演者の「今」に注目してほしいと思っています。この作品の主要な役である火の鳥は、過去に何人もの舞踊家が挑戦してきました。既知の作品を新しい舞踊家がどう踊るのか。再演の楽しみはそこにもあります。
願わくは、観客にも受け継がれていく作品になってほしい。『火の鳥』には世代を超えて
生き残っていく、強く普遍的な力が宿っていると信じています。
■中尾洸太、樋浦瞳による新作2本の上演
(撮影:村井勇)
舞踊団として、過去のレパートリーだけでは先に進むことはできません。今を生きる集団には、今だからこそ生み出される作品を創造していくことが必要です。
まだ何もないところから、振付家と舞踊家が一緒に新たな作品を生み出していく。同じ空間で同じ時間を生きる。教える、教わるの関係とは離れて、互いに影響を与えながら一つのイメージを具現化していく。
言葉と身体を使ってのコミュニケーションは、時にすれ違いや摩擦を生み出すこともあります。それでも同じ時を濃密に過ごした体験は作品を生み出す上でとても大切で、特に舞踊においては、身体感覚の共有という「言外のコミュニケーション」にこそ、創作の核があるといえます。あらゆる可能性の中で選ばれた動きや形だからこそ、そこにいる舞踊家の身体がリアリティを帯び、今ここでしか生まれ得ない作品が生まれるのだと思います。
中尾洸太と樋浦瞳、彼らの身体言語が引き出してくれるNoism2の新たな魅力に期待してください。
新作とレパートリー。過去に習い、未来を望み、舞踊は「今」を映し出します。
Noism2 の今、若き舞踊家の躍動を、全身で感じてほしいと思っています。
Noism Company Niigata 地域活動部門芸術監督
山田勇気
新作『It walks by night』
演出振付:Noism1 中尾洸太 Kota NAKAO
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」今回創作を共にするメンバーの半分は去年から見知った顔であるが、新しいメンバーが加わりNoism2は集団としての様相をまた大きく変えたように思う。
集団は浴槽の壁で仕切られてはいないのだ。そんなことは当たり前だと思うかもしれないが、それぞれの人生の点が重なり合い今この瞬間に刹那的な集団として形を保っていられる奇跡があるように思えてならない。
普通であれば掬われないものの価値を社会に問いただすのも芸術家の役割のように思う。新たなメンバー、新たな Noism2 とのクリエーションを素直に楽しみつつ、個々人の魅力の発見とユニゾンとしての最大公約数を壮大な音楽と共に見出し、時代の河に簡単に溶け込んでしまわない作品を創りたいと思っている。
新作『とぎれとぎれに』
演出振付:Noism1 樋浦瞳 Akira HIURA
私が初めて観たコンテンポラリーダンスは、Noism2の『火の鳥』(2011年)でした。舞踊家の身体が奏でる物語に、目が耳が肌が、驚愕したのを覚えています。
今回私たちが挑む新作も、観てくださる方の身体に何かが刻まれる体験であってほしいと願います。
形には残らない踊りを創る者として、舞踊家たちと共有する一瞬一瞬を味わいながら創作に臨みます。
◆『火の鳥』2016年再演時の演出ノートより
この作品は2011年に私がNoism2のために、そして学校公演を視野に創作した作品です。
当時私は、体育館でこの作品を観劇した子供達が、やがて成人して社会人となり、一観客として劇場へ集ってくる白昼夢を見ました。私が見た白昼夢が現実のものとなるには、まだ数年待たなければなりません。しかし私はその実現を確信しています。それはこの作品が子供達の心に響くと信じる作者の、根拠のない妄想に過ぎないかもしれない。それでも私は、ネガティブな未来を凝視するのと同じだけのエネルギーを用いて、ポジティブな未来を信じていたいのです。そして排他的な言説や価値観が、まるでウイルスのように世界を覆い始めている現代だからこそ、私は(私にしては珍しく)子供達にポジティブなメッセージを届けたいのです。
作品のテーマは「シンパシー(共鳴/同感/同情)」です。自らの殻に閉じこもり、自分を信じることができない少年がいます。すると少年の周りに闇が押し寄せてきます。それは少年自らが引き寄せているネガティブなエネルギーの共鳴なのです。そこへ火の鳥が現れます。火の鳥は時に鳥獣のような野性的エネルギーで、時に菩薩のような慈愛のエネルギーで少年を殻の外へと導いて行きます。すると少年に嫉妬した 5 人の若者が現れ、火の鳥を少年から奪い去ろうと襲いかかります。それは同感の負の側面と言えるでしょう。火の鳥は激しく痛めつけられ、ついにその火は消えてしまいます。自らの不甲斐無さを悔い、悲しみにくれる少年が一人涙を流していると、それを見つめる若者たちの心に自責と同情の念が湧いてきます。若者たちが少年と共に涙を流し始めると……
本作品が皆様の感受性を刺激し、その“皮膚レベルの経験”が老若男女を問わず、価値あるものであることを信じています。
Noism Company Niigata 芸術総監督
金森穣
◆公演概要
Noism2 定期公演 vol.16
リハーサル監督 浅海侑加
■レパートリー『火の鳥』(演出振付:金森穣)
■新作『It walks by night』(演出振付:中尾洸太)
■新作『とぎれとぎれに』(演出振付:樋浦瞳)
【公演日程/会場】
2025年 3月8日(土) 17:00 / 3月9日(日) 15:00
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
※開演時間を過ぎますと、演出上の都合によりご入場を制限いたします。
◎アフタートーク(登壇:山田勇気×中尾洸太×樋浦瞳)
3月8日(土)の終演後に約30分間のアフタートークを開催いたします。
チケットをお持ちの方であれば、別日程でもトークのみの参加も可能です。ご希望の方はチケットの半券をお持ちください。
【チケット】
全席指定:2,500円
U25:2,000円
高校生以下:1,000円
※すべて税込
※U25は公演時25歳以下の方対象(未就学児を除く)。入場時に身分証をご提示願います。
※未就学児の入場はご遠慮いただいております。
◎チケットの取扱い、その他詳細は公式HPよりご確認ください
>https://noism.jp/npe/noism2vol-16/
主催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
製作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会
[この事業は新潟市から補助金の交付を受けて実施しています]
【各種公式】
Noism公式HP(公演詳細):https://noism.jp/npe/noism2vol-16/
りゅーとぴあHP:https://www.ryutopia.or.jp