世田谷パブリックシアターのシアタートラム・ネクストジェネレーション vol.16-演劇-にて上演される、くによし組『ケレン・ヘラー』の出演者が決定した。
本作のプロジェクトは、次代を担うアーティストの発掘と育成を目的として、2008 年より実施され、白井晃芸術監督が就任した 2022 年以降、「演劇」と「フィジカル」の 2 ジャンルに分け、隔年での交互募集と審査が行われてきた。リニューアル後、初の演劇部門のアーティストとして選出されたのが「くによし組」であり、『ケレン・ヘラー』は、くによし組主宰・國吉咲貴の作・演出により、2018 年に初演され、佐藤佐吉賞最優秀作品賞を受賞した作品だ。
解散の危機に陥ったお笑い芸人が、お喋りロボットを相方に起死回生を図るという奇想天外な設定で面白いと不謹慎の境目は一体どこなのか、面白さを追求するあまり、禁断の領域に踏み込み、転がり落ちていく様を描く作品となっている。
上演にあたり、國吉は「主人公を過激な行動に走らせたのは何者か、盲目なのは誰なのかを新たなるテーマに据え、物語を改訂しました。コンテンツの発信者だけではなく、受け取る側の判断や反応により、時に美しいものを醜く、醜いものを美しくも変えてしまう社会や、その中で奔走する主人公の姿を描きたい」と語っており、初演から 6 年を経て、表現の過激さが増していく現代社会のひずみを鮮明に映し出す。
出演者には、主人公でお笑いコンビのネタ担当・アフロ子を演じるのは中井千聖、アフロ子が過激化した姿の悪アフロ子を名村辰、アフロ子の相方・ケイト役には、大場みなみを迎える。
他にも、くによし組の立ち上げメンバーの一人である永井一信を筆頭に、これまでにもくによし組の作品に出演してきた花戸祐介、佐藤有里子、てっぺい右利き、柿原寛子、谷川清夏が名を連ねた。
公演は2024年12月より、シアタートラムにて上演。
世田谷パブリックシアター芸術監督・白井晃 選出コメント
國吉さんの作品は、いつも虚実が隣り合わせにある。隣り合わせと言っても、普通の距離感の隣り合わせではなく、本当に隣接していてくっつくように存在している。むしろ虚実がめり込んで存在していると言っても良い。だから一見不条理劇のようにも見えるが、不条理劇ではない。むしろ、國吉さんの世界の登場人物はとても条理にかなっているものだから、これが今の私たちの現実だと思い知らされる。そして、彼らの会話を通して、私たちを取り囲む不条理な世界が浮き上がって見えてくるのだ。
上演予定の、コロナ禍の前に書かれた作品が、改めてシアタートラムの空間の中でどのように現出されるのかとても楽しみだ。もしかしたら、私たちはもっともっと不条理になった世界の中で、國吉さんの世界の清々しさを感じることなるかもしれない。
くによし組
國吉咲貴(主宰・脚本・演出・ときどき出演)を中心に2015年に設立、以降25作品を上演。コンセプトは、「異常で、日常で、シュール」。トランポリンを飛び続ける不思議な人間、コンプレックスを抱くサバンナモンキーが人間になって恋をする作品など、非日常の中で日常を描き、世の中に浮かんだ疑問や、口に出すことが憚られるようなことを、コメディとして上演。
これまでに佐藤佐吉賞(最優秀作品賞、優秀脚本賞ほか)、関西演劇祭2020(脚本賞・演出賞)などを受賞したほか、せんだい短編戯曲賞、劇作家協会新人戯曲賞、北海道戯曲賞などで最終候補に選ばれるなど、その劇作が高く評価されている。
シアタートラム ・ネクストジェネレーションvol.16 では、戯曲の執筆力に注目し、これからの飛躍が期待される団体として、選出された。
シアタートラム・ネクストジェネレーション vol.16 -演劇くによし組『ケレン・ヘラー』
■作・演出:國吉咲貴
■出演 中井千聖、名村辰、大場みなみ
花戸祐介、佐藤有里子、てっぺい右利き、柿原寛子、谷川清夏、永井一信
■世田谷パブリックシアター芸術監督:白井晃
■会場:シアタートラム
■日程:2024 年 12 月
■主催:くによし組/公益財団法人せたがや文化財団