Noism Company Niigata 2023夏・新作公演「領域」

金森穣/二見一幸。二人の振付家による新作ダブルビル。

2022年秋よりりゅーとぴあの専属舞踊団Noism Company Niigataでは、新潟市が定めたりゅーとぴあのレジデンシャル制度に基づき、新たに二部門制での活動をスタートさせました。
設立から19年目のシーズン、新体制最初の公演では、1〜2月にかけてNoism0+Noism1による新作『Der Wanderer-さすらい人』を上演。メンバー1人1人のソロから紡がれる作品で、新生Noismとしての新たなスタートを切り、「パンデミックや戦争で先が見えない今だからこそなお共感を抱かせるもの」などと、カンパニーの再始動に相応しい作品として評価を得ました。

続く夏の公演は、金森穣二見一幸によるダブルビルです。
ダンスカンパニーカレイドスコープを率い、独創的な動きと構成で注目される二見一幸に、国際活動部門芸術監督・井関佐和子がNoism1のための新作を委嘱。 Noism芸術総監督・金森穣によるNoism0新作との2本立てで上演します。
キーワードは「領域」。2人の振付家によるそれぞれの視点をどうぞお楽しみください。

公演によせて 井関佐和子

撮影:松崎典樹

今回、ゲスト振付家招聘企画として二見一幸さんをお迎えし、Noism1新作『Floating Field』と、金森穣による Noism0 新作『Silentium』をダブルビルでお届けします。 

メインタイトル「領域」  
ある哲学者が「私たちは類型的な物事を、自ら判断をして決着をつけていると思っているが、 実は決着などついてはいなくて、“無意識の領域”に閉じ込めているだけだ」と言っている本を読んで、“無意識の領域”というものに関心を持ちました。一体どれほどの事柄、事物をこの領域に閉じ込めているのだろう、と。 
フロイトのいう「意識」「前意識」「無意識」 
それぞれの「領域」 
舞踊家としてこれらの領域の垣根を越えることは可能なのだろうか? 
舞踊団としてこの命題に挑戦をしたいという思いからこのタイトルに決定しました。

二見一幸さん  
二見一幸さんは日本のコンテンポラリーダンス及び現代舞踊界で長年実績があり、La Danse Compagnie Kaleidoscopeを1996年に発足して以来、数々の賞を受賞してこられました。私自身も二見さんのお名前は日本に帰国した 20 年前から聞いており、作品も何度か拝見しました。身体から派生していく作品創りとその奥に潜む人間の物語が、現代日本における舞踊作品のなかでも魅力的な振付家だと思っています。そして長年集団性に重きを置き、この国で活動されている二見さんとNoismには共通の問題意識や共感があるのではないかと感じています。 
Noism1のメンバーと共に二見さんが新たな領域を発見してくださることを願っています。 

金森穣の新作 
金森の新作は、Noism0が発足して以来初となる金森本人と私、井関佐和子の2人の作品となります。金森が近年重要視している「沈黙の言語」が私たち2人によってどのような新たな領域を生み、作品として世に出ていくのか楽しみにしています。 
そして6年ぶりに宮前義之さん(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)をお迎えして衣裳を製作していただくこととなりました。素晴らしいチームの皆さんの感性と想像力が、この作品の見どころのひとつとなり、作品を新たな領域に導いてくれることを確信しています。

Floating Field』創作によせて 二見一幸

舞台に流れる嵐の前のような静寂の時間と繊細で緊張感ある空間の中

身体が刻んでゆく時間
身体が描いてゆく空間
そこから現れてくる舞踊の形

ダンサー達は、他者との合流や集合・離脱を繰り返し、さまざまな状況を創りながら流動化していく。

心の動きに問いかけながら、
自分の中にある舞踊言語を駆使してこの「時間」と「空間」と「身体」の流れが導いていくところへ向かって行く。

Silentium』創作によせて 金森穣

撮影:篠山紀信

《Silentium》とは、アルヴォ・ペルトによる楽曲《Tabula Rasa》の後半部分に相当する、20分程の楽曲である。Tabula Rasaとは何も刻まれていない石板を意味し、Silentiumとは沈黙や闇を意味するラテン語である。
この楽曲を私はNoism設立年である2004年に『black ice(第3部black garden)』の終曲として用いている。私にとって同じ楽曲を別の創作に用いることは稀で、今回はその異例の一つとなる。それほどこの楽曲に“いま”惹かれたのである。
私にとってある楽曲に惹かれるということは、そこに世界(空間/照明/舞踊家)が見えることを意味する。18年前そこに見えたのは一人の男(私)の姿であり、今回そこに見えたのは一組の男女、私と佐和子の姿であった。
佐和子と二人だけで踊り“続けた”ことがない。Noismでの作品はもちろん、unit-Cyan(金森/井関のユニット)として発表した作品ですら、互いにソロを踊ったり、映像を挟んだり、いわゆる展開があってのことで、二人だけで踊り“続けた”ことはない。
踊り続ける私たち。「私たち」という領域。「私」の中に「あなた」を内面化し、「あなた」の中に「私」を拡張することで生まれる「私たち」という領域。明滅変容する空間も、沈黙を奏でる音楽も、見つめる観客の視線もすべて内面化して、「私たち」という領域を拡張していく。その場にいなければ決して共有できない「沈黙」を共有するために。

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沈黙に満ちた静寂の中、一組の男女が踊っている。
身体を伸縮させ、空間を変容させながら、沈黙の対話を続けている。

沈黙に満ちた静寂の中、音楽が生まれる。
空間を明滅させ、身体を変容させながら、沈黙を奏で始める。

沈黙と沈黙の拮抗。その間に生まれる第3の沈黙。

再び訪れた静寂の中、一組の男女が踊っている。
そこにある静寂は、かつてのそれとは異なる沈黙に満ちている。

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Noism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ)

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する、日本初の公共劇場専属舞踊団。プロフェッショナル選抜メンバーによるNoism0(ノイズムゼロ)、プロフェッショナルカンパニーNoism1(ノイズムワン)、研修生カンパニーNoism2(ノイズムツー)の3つの集団があり、国内・世界各地からオーディションで選ばれた舞踊家が新潟に移住し、年間を通して活動。2004年の設立以来、りゅーとぴあで創った作品を国内外で上演し、新潟から世界に向けてグローバルに展開する活動(国際活動部門)とともに、市民のためのオープンクラス、学校へのアウトリーチをはじめとした地域に根差した活動(地域活動部門)を行っている。Noismの由来は「No-ism=無主義」。特定の主義を持たず、歴史上蓄積されてきた様々な身体表現を後世に伝えていこうとしている。
Noism Company Niigata オフィシャルウェブサイト www.noism.jp

公演概要

『Floating Field』
演出振付:二見一幸
衣裳:堂本教子
音楽:ドメニコ・スカルラッティ、7Chato、他
出演:Noism1

『Silentium』
演出振付:金森穣
衣裳:宮前義之(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)
音楽:アルヴォ・ペルト
出演:Noism0

新潟公演 2023年6月30日(金)⇀7月2日(日)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
東京公演 2023年7月14日(金)⇀7月16日(日)めぐろパーシモンホール〈大ホール〉

主催:公益財団法人新潟市芸術文化振興財団
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団(東京公演)
製作:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

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