いよいよ4月6日(木)より開幕!
出演の松島庄汰・木戸邑弥にインタビュー
幼馴染4人の9歳、19歳、29歳の姿を描く unrato#9『Our Bad Magnet』が4月6日(木)~4月16日(日)、東京芸術劇場シアターウエストで上演されます。
膨大なせりふ量の翻訳劇に挑む松島庄汰、木戸邑弥のお二人に聞きました。
――『Our Bad Magnet』はスコットランドで初演され、世界各地で上演されている戯曲ですね。この舞台をやろうと思ったきっかけは何ですか?
松島 あるとき、「自分でわからない芝居、理解しにくい芝居に出るといいよ」と言われたことがあり、それがずっと頭に残っていました。今回、最初に台本を読んだとき、「何だ、これは?」と「?」だったんです。でも、この戯曲が世界各地で上演されるのは、何かしら皆が熱中するものがあるはずなので挑戦しよう、という思いからはじまりました。
木戸 今の僕たちとは違う昔の話や違う国を舞台にした作品だとしても、歴史や事実を知るだけではなく、その世界で生きた人たちの人間模様や思いが見える瞬間がとても好きで、この作品でも同じような瞬間を感じました。大河内直子さんが演出された『冬の時代』(2020年)を観劇したときも、そんな瞬間をたくさん感じて、いつかご一緒したいと思っていたこともあり、オファーいただき迷いなく出演したいと思いました。
――稽古での手ごたえはどうでしたか?
松島 最初は頭がパニックになり、それがだんだんほどけてきているところです。表に直接描かれていない部分が大事な作品でもあるので、これまでにないほど4人でディスカッションしています。キャラクターの考え方や意見が変わっていくのもとても人間ぽくて、それを紐解く作業ですね。
木戸 男4人の20年間にある大きな出来事があって、それぞれがそれぞれの思いを抱え悩んでいる。その不安や悩みを、ときには助けを求めたりしながら自分なりに解決していく様や動いていく気持ちは、お客さまにも共感していただける部分だなと感じています。そして100人いれば100人違う考えを持つように、どれが正解でどれが間違いかの答えはないんですよね。稽古で作品と向き合うと、迷ってわからなくなることがあるけれど、そのもがく感じも役柄に近づけているのかなと思う。そういう感覚を大切にしています。
――松島さん演じるフレイザーは9歳ではリーダー格ですが、思い通りにならない人生にあがいています。木戸さん演じるポールは9歳ではフレイザーを崇拝していますが、いつしか町を離れロンドンで働いています。それぞれ演じる役柄をどう感じていますか?
松島 フレイザーは弁護士の優秀な親に育てられ9歳のときは成績優秀のリーダー格。良い人生を送れるはずがゴードン(ギルグズ)と出会い…。僕も若いころはとにかく勉強をさせられていて、周りも優秀な人ばかりで、何かに縛られている感じがありました。この仕事をはじめることでギアチェンジしましたが、周りと同じようにはいられない、縛られていることにあがくフレイザーの感覚はわかりますね。
木戸 自分に近いと思う? 遠いと思う?
松島 近いんじゃないかなと。この世界でもまだまだこれからの自分は、フレイザーと同じような状況にいるのかもしれない。でも、理解できるからこそ難しいところもあって…。人間らしいいい心は持っているのに、うまくいかないフレイザーは優しいんだろなと、通してみると感じます。
木戸 僕が感じたのは、フレイザーがリーダーで先頭を歩くタイプで、アランは一番周りが見えているからこそ敏感でどうにか盛り上げなくてはというのが空回りしちゃうタイプ。その中で、ポールはどちらの面もある。簡単な言葉ですが“バランサー”のような役割を担う部分があるのかなと思っていて、そういう面は自分に似てると思います。感情を押し殺して、その場に合わせた言葉をチョイスしているようなところも。だからこそ、言葉の裏に隠された彼の思いとか悔しさを、可能性を探りながら深く掘っていきたいです。
――9歳、19歳、29歳を演じるにあたって、演技の工夫などありますか?
松島 あえてわかりやすくしようとはしていないです。戯曲がうまくできていて、年代によってフレイザーのテンションもそれぞれ違うし、距離感もしっかり書かれている。あえて変えることなどを意識しないで戯曲に乗っかっていこうと思います。
木戸 戯曲の力を信じてだね。僕も世代で演じ分けようとはしていないですね。最初の本読みの段階ではわざと子供っぽい声を出してみたりしましたが、稽古をしてくうちに役者本人がもっているものでいいんだと。休憩時間にみんなで集まってる姿も、きっと”男の子”なんですよね。実際は30歳前後ですが、はたから見たら19歳に見えたり、子供っぽく見えたりもする。素直にやっていれば、演じようとしなくても関係性でそう見える。29歳のシーンでも19歳の彼らの姿を思い浮かべる瞬間があるかもしれないですしね。
――4人のうち好きな役をやっていいいと言われたら、だれを選びますか?
松島 アランをやりたいかな。一番、幅をつくれる役だと思うので。どうやってもアランになれると思うんです。だからこそ、難しい部分もあるけど。ラストシーンに向けての落差もいい。アランは、わかりやすく言うとコメディポジションでもあるしね。コメディ好きなんですよ。
木戸 うーん、ギグルズかな? この『Our Bad Magnet』の物語が言葉の裏に本心があったりして、うそをついているのでは?という瞬間があったりする。その中でも一番のフィクションはギグルズの「物語」のはずなのに、その物語が一番嘘がないと感じるんです。面白いですよね。
――タイトルの『Our Bad Magnet』は日本語にすると悪い磁石ですが、「Bad」にはいろんな意味合いが含まれるのかなと思います。タイトルをどう受け止めていますか?
木戸 日本語だと「悪い」という言葉は強い印象がありますが、この物語を観終わったら、単純に「悪い」だけとは思われない気がしています。お客さまひとりひとりで違う印象を持たれるような。この物語の中で生きている4人もそうだし、視点によっても変わる。タイトルをどう感じたか知りたいです。
松島 おしゃれなタイトルだよね。質感的に暗そうに感じるのかもですが、タイトルの奥にあるものを、舞台を観て知ってほしいです。
木戸 言葉にもいろんなものが含まれる。辞書に載っているだけではなく、それ以上のものを見つけていただけたら嬉しいですね。
――最後に、お客さまにメッセージをお願いします。
木戸 4人それぞれに思いがあって、女性も男性も共感できる部分があると思います。自分はあの時こうだったなとか、かつてはそう思っていたけど今は変わってしまったなとか。前に進んだり、立ち止まったり、いろんな気持ちを持ってほしいです。ネタバレになるので今は言えないのですが、僕の中でお客さまに届いたらいいなと思っていることがあるので、ひとりひとりに聞いてみたい。少しでも多くの方に観ていただき、どう受け止めたか教えてもらえたらと思います。
松島 「登場人物たちはこの先どうなるんだろうな?」、「彼らの生きていた場所に行ってみたい」、そんな風に思ってくれたらいいですね。そして観劇したあとに、一緒に観た人たちと「こういうことだったのかな?」と、いろんな話をしてくれるとうれしいです。
◆あらすじ
舞台はスコットランド南西部の海岸添いにある小さな町、ガーヴァン。
登場するのはアラン、フレイザー、ポール、ゴードンの4人の同級生たち。かつては人気観光地だったがすっかり廃れてしまったその町に、29歳になった彼らが苦い思い出を抱えながら集まってくる…。
地元に残ったアラン、元リーダー格のフレイザー、ロンドンで働くポール、そして…。彼らの9歳、19歳の場面を行き来しながら、思い出たちが少しずつ明らかになっていき…。
2000年にスコットランドのグラスゴーで初演以来、世界15か国以上で上演されている人気作を新翻訳で上演。
劇中劇を盛り込みながら現実とファンタジーが交差し、人生の真実を浮き彫りにしていく切なく美しい青春群像劇。
◆公演概要
unrato #9 『Our Bad Magnet』
【出演】
アラン:奥田一平
フレイザー:松島庄汰
ポール:木戸邑弥
ゴードン:小西成弥
(登場順)
【スタッフ】
作:ダグラス・マックスウェル
翻訳:広田敦郎
演出:大河内直子
音楽:三枝伸太郎
ほか
【公演期間/劇場】
2023年 4月6日(木)~4月16日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト
【公演スケジュール】
4月6日(木) 18:30
4月7日(金) 18:30
4月8日(土) 13:00 / 17:30
4月9日(日) 13:00
4月11日(火) 18:30
4月12日(水) 14:00
4月13日(木) 18:30
4月14日(金) 14:00
4月15日(土) 13:00 / 17:30
4月16日(日) 13:00
【公式】 unrato #9 『Our Bad Magnet』
HP: https://ae-on.co.jp/unrato/our-bad-magnet/
Twitter: @UNRATO_JP