「土足で踏み込んできてくれた方がええんですよ」
講談師生活25周年を迎える玉田玉秀斎(以下、玉秀斎)が、ライフワークと位置づける「ジャズ講談」取材会の終盤、そう言って笑うと、同席のベテランミュージシャン3人が、苦笑しながら深く頷いた。「リスペクトゆえの葛藤」その本音が飛び出した瞬間だった。
玉秀斎自ら、持ち味の柔らかく豊かな声で進行する和やかな取材会。語られたのは、25年間の歩み、この5月に95歳で逝去した伝説的なジャズ・サックス奏者ソニー・ロリンズへの感謝、「ジャズ講談で新しいジャンルを作りたい」と静かに持ち続ける野望そして夢だった。
■ジャズ講談は”心のオアシス”
もともと弁護士を目指していた玉秀斎が講談の道に進んだのは、師匠との偶然の出会いがきっかけだった。
「講談師も弁護士も最後に『士』が付くからやっておけ」という師匠の一言がきっかけ。講談への思い入れは、当時ほぼゼロ。お客様の反応も手応えも感じられないつらい日々が続いたという。
転機は2006年、音楽と講談を組み合わせた「音楽講談」を試みた。初めてのジャズ講談で、ソニー・ロリンズの物語を語ったときの客席の反応にしびれた。
「お客様が!立ち上がったんですよ…!講談会では見たことない光景。面白かったですよね?って言ったら、みんな、面白かった!って。古典芸能の世界は型や師匠の芸の継承を旨として、新しいものを始めるハードルはすごく高い。でもジャズ講談のお客様は全部受け入れてくださった。僕が今でも講談師をやれているのは、ジャズ講談のおかげだと思ってます」
■ソニー・ロリンズ追悼
今回の公演では、そのジャズ講談の原点ともいえるソニー・ロリンズのナンバーが偶然にも1曲予定されている。楽曲リスト7曲目の「モリタート Moritat」だ。
「出会いへの感謝、ジャズ講談を20年やってこれたこと。今回はその思いを込めて語らせていただきたいと思っています。不思議な縁を感じましたね」
■20年目の葛藤と信頼
取材会中、話が最も熱を帯びたのは、ジャズ講談の「難しさ」だった。
ドラム上場正俊「ずっと考えているのは、どこまで踏み込んでも侵してないか、ということです。講談師が喋っている間に音を出してもいいのか。逆に演奏中に語り出してもいいのか。その境界線が、まだずっとあって」
玉秀斎「こちらを立ててくださるお気持ちが強くて」(苦笑)
サックス里村聡「昔はね、ある言葉が来たら演奏を始めるって決めてたんですよ。でも、その言葉が来ないんです(笑)。話の流れで結末が変わるから、段取りが通用しない」
ドラム上場「最近は、クライマックスが来たな!と感じた瞬間に、自分で勇気持って入るようにしてる。でも玉田さんがものすごくいいものを作ってくれてるから、入りにくい(笑)」
「それなんですよ!」玉秀斎が身を乗り出す。
「舞台の上で、全員が葛藤しながらやってる。でも、信頼関係があるから大丈夫だって分かってる。腹も立たないし、潰れることもない」
そこで出たのが、見出しの「もっと土足で入ってきてくれた方がええんです」だった。
今年の夏は、ジャズVS講談のどんな丁々発止がみられるのか楽しみでならない。
■「講談は、人の人生の選択の瞬間を描く芸能」
-25周年のセットリスト、どう組み立てましたか?
玉秀斎「まず『25』にまつわる物語を30個くらい出すんですよ。25歳で亡くなったミュージシャン、25歳のときに新しい音楽を生んだ人、1925年や2025年の出来事……。それをミュージシャンの皆さんに投げて、『この人、この曲を演奏してましたよね』って絞っていく。で、セットリストを並べてみて、面白くなかったらシャッフルして、また物語を持ってきて」
サックス里村聡「やっぱり聴きやすさのバランスも大事で。アップテンポあり、バラードあり。ジャズスタンダードって1920~40年代の曲が中心なんですけど、それは当時のミュージカルや映画の影響で広まったヒット曲が多くて。今でも色褪せない曲ばかりなので、知らなくても楽しめる」
玉秀斎「あ、見えてる世界の違いが今出ましたね(笑)僕は物語側から入るので、その時代のその場所で演奏されていた曲じゃないとまずいんですよ。なので、実は僕の方が大変です(笑)」
(一同笑)
玉秀斎「講談というのは、人の人生の選択の瞬間を描く芸能です。右に行くか左に行くか、その瞬間をなぜそう選んだのかを語る。だから、その瞬間に演奏されていた曲でないと、物語として成立しない」
■久々の「修羅場読み」
-「修羅場読み」と呼ばれるリズミカルな語りも久しぶりに披露されますね?
玉秀斎「修羅場読みは(一瞬の間あって)”三方ヶ原の戦いは、これ源平三年~~~”みたいな感じで、リズムに乗って語るものです」
ドラム上場「(両手にスティックを持つ仕草で)聞いた瞬間に反応したんですよ、僕。打楽器と修羅場読みって絶対合うって」。
かつてはフリージャズのボーカルパートとして修羅場読みを組み合わせてもみた。今回はチャーリー・パーカーにまつわる創作の修羅場読みを目指しているそうだ。
玉秀斎「間に合わなければ古典の修羅場読みになります。当日のお楽しみということで(笑)」
■いつかアメリカへ
-今後、挑戦したいことは?
玉秀斎「アメリカでジャズ講談をやりたいんですよ。英語で。ジャズの本場に、日本の物語の力を持って乗り込む。日本には神社が8万から20万社あって、それぞれに土地の物語が紐づいている。これほど物語を大切にしてきた国は世界でも稀有です。その力を、アメリカの皆さんに届けたい」
◆公演概要
「JAZZ講談 講談師生活25周年、玉秀斎襲名10周年記念 名曲で綴る「25」にまつわるジャズ物語」
【日程/会場】
2026年8月5日 (水)
ブリーゼプラザ小ホール(ブリーゼタワー7F)
【出演】
玉田玉秀斎(講談)
里村稔(Tenor Sax)
神田芳郎(Bass)
上場正俊(Drums)
畑ひろし(Guitar)
【チケット】
前売:4,000円(全席自由・税込)
★演奏曲決定!
●演奏曲
※下記、太字の曲名はチラシ掲載曲です。
1st
OP 修羅場読み×ジャズ
1 曲名『Now‘s the time』 人物 チャーリーパーカー
2 曲名『Time after time』 人物 「お楽しみ」
3 曲名『What’s new』 人物 ヘレン・メリル
4 曲名『Stompin’ at the Savoy』 人物 ベニーグッドマン
休憩
2nd
5 曲名『Boplicity』 人物 「お楽しみ」
6 曲名『I Remember Clifford』 人物 クリフォード・ブラウン
7 曲名『Moritat』 人物 「お楽しみ」
En
8 未定
◎詳細は下記公式よりご確認ください。
【公式】
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