
1997年の開館以来、様々なエンタメの舞台となった内幸町ホールが4月から約2年の改修工事に入る。休館前のラストを飾るBluePrintの公演「After The Show!!」の稽古がスタートした。
BluePrintはダンス・エンタメ界を牽引するダンサー・振付師のJUNを中心に結成され、メンバーはDA PUMPのTOMOほか、劇団SETのおおたけこういちや、各ジャンルで活躍中のダンサーがメイン。演劇・ダンスの枠にとらわれないエンターテイメント作品を創作してきた。そんなBluePrintが今回挑むのが、観客を巻き込んだ没入型のイマーシブシアターだ。

稽古場には脚本・演出のおおたけこういちと、今回出演するATSUSHI、久下恵、前田剛司、HAMACHI、Kekke、MIHO BROWNが集まり、笑いに溢れた自己紹介の後に台本の読み合わせが始まった。

オープニングはこんな場面から始まる。
劇場は緞帳が閉まっている状態で、その後ろではバラシ作業の音が聞こえている。
「After The Show!!」のタイトル通り、一つの舞台が終わって舞台装置の撤去作業が行われているという設定だ。
緞帳が上がると何もない舞台が現れ、そこに守衛のヒグチ(JUN)と劇場の館長ミサコ(久下恵)が立っている。
どうやらこの劇場の最終公演だったようで、その内容にミサコは心残りがあるようだ。「28年間お疲れさまでした」というミサコの言葉に、実際の内幸町ホールの歴史とリンクする。ミサコが去った後は劇場に宿るという神々が次々と現れる。


舞台の神様ビューネ(ATSUSHI)、音響の神様オキョー(MIHO BROWN)、照明の神様テル(おおたけこういち)、大道具の神様アラさん(HAMACHI)、助手の神様サブ(前田剛司)、新人でトイレの神様(Kekke)が現れ、それぞれの紹介とともにソロダンスを披露する。まさに本番のショーが終わった後の神々の宴だ。


神々たちは劇場の「ココロノコリ」と化した観客たちも巻き込んで酒盛りを始め、ついにはミサコに見つかってしまう。ミサコの心残りは大好きな物語を自分が書いた台本で上演できなかったこと。神々たちは、その物語を上演していく。

途中には楽屋の神様として日替わりゲストも登場し、実際に客席にいるお客様が選択していくシーンもある。ダンスシーンも多いため、台本だけでは全貌がわからない。スリリングな展開になりそうだ。ぜひ劇場に足を運んで目撃して欲しい。

最後におおたけこういちと、久下恵、MIHO BROWNに話を聞いた。
__今回のお話はどういった経緯でできたのでしょうか。
おおたけ「内幸町ホールの館長の齊藤さんと、うち(Blue Print)の主宰のJUNさんが、元々知り合いで、内幸町ホールが休館に入るタイミングでフィナーレとして何かBlue Printでお願いできないかと一番最初にお声がけいただきました」

_台本のアイデアはどこからですか。
おおたけ「齊藤さんから、今まで使っていた劇場を、ありのままの姿で会場にお越しいただいたお客様に見て欲しいということ、なおかつずっとイマーシブシアターという体感型の演劇に興味があって、それをこの劇場で出来ませんか?ということを伺いました。でしたらなるべく素舞台を生かした台本にしようと思いました」
__素舞台とは全く何にもない舞台ということでしょうか。
おおたけ「そうです。でも、まさに今その弊害が出ちゃって(笑)」
MIHO「タップ(ダンス)をどうしようか、という」
おおたけ「そう、タップをやるための板が敷けない」
おおたけ「でも素舞台から始まって、実際に装置が出来ていって、それをバラシていくという舞台は僕も出演者として経験していました。じゃあバラシが終わったあとの話は見たことないなと思って、それなら素舞台である必然性があるなと。一時休館するという設定もいただきまして、休館する劇場で巻き起こる前夜の話をイメージしました」

__タップもそうですが、ダンスのシーンもとても多いですよね。
おおたけ「もともと僕らの集団はダンサーがメインで、ダンスやパフォーマンスがお芝居に融合されている演目を今までやってきたので、お芝居とパフォーマンスが同等に組み込まれていたいなとはずっと思っていました。そうしたダンスや色々なパフィーマンスも神様なら踊ってもいいだろうということで(笑)
長く舞台をやっていると舞台の神様に助けられたという言葉を耳にするんですけど、もしそんな神様がいたら打ち上げパーティーでもしてるんじゃないかと。劇場が終わるときに、あの時こうだったな〜とか昔話をしていたら面白いなということろから発想して物語を作っていきました」


__久下さんとMIHOさんは台本を読んでどう感じましたか?
久下「お客さんから見て館長として『こういう思いがあったんだな』ということが見えてくるのが面白いんじゃないかなと思いました。一つの人間模様が描かれていると思います」
MIHO「私たちは劇場がないとパフォーマンスできないじゃないですか。舞台に立つ立場の人間だけじゃなく、普段観にきてくれているお客様も、きっとこんな裏とかは見たことはないんじゃないかと思います。おかげさまで舞台が成り立っていることを改めて感じます。実際、舞台には神様がいて本当に助けられたりとか、私も出とちりしそうになったら、何かの面白い感じで音響がおかしくなって、みんなが私が出てないってことに気がついて、ということが起こったり(笑)ダンスで出とちったことはないんですが、お芝居はまだ慣れない時にありました」
__キャスティングもおおたけさんがされたのですか。
おおたけ「今回のキャスティングは舞台上でお客様との垣根をしっかり超えられる人を意識しました。ちゃんとお芝居しないメンバーを集めたらこうなったという(笑)ボーダレスというか、ジャンルレスな人選をしたらこうなった。ダンサーという軸で、いろんなことをやっている人たちばかりなので。まずはお客さんを楽しませるということを一番にやっている方達というか。」
__日替わりで出演するゲストの方々も豪華ですよね。DA PUMPのTOMOさんに立川こしらさん、KTRさんに最終日には福士誠治さんがご出演されるそうですね。
おおたけ「バラエティに富んでいますよね。立川こしらさんは立川流の真打ちの落語家さんです。この方はよく内幸町ホールで独演会もされていますし、なおかつ僕と昔ラジオ番組での共演歴もあるので、すごく縁を感じて声をかけました」
久下「KTRさんはプロダンスリーグのD.LEAGUE(ディーリーグ)で活躍するダンサーです。D.LEAGUEでは大企業がスポンサーについて、ダンサーが野球のようにチームを組んでシーズンごとに戦い抜いていくんですよ。そのチームのメンバーの一人で、世界的にも活躍しているダンサーです。特にKRUMP(クランプ)というジャンルでトップレベルの存在なんです。みんな、おおたけさんの知り合いですね」
__最後に観に来てくださるお客さまにメッセージをお願いします。
おおたけ「本当に僕も経験したことがないような素舞台でお芝居が展開されていく、なおかつどこまでイマーシブにできるかは僕にとってもチャレンジだと思っているので、普段お芝居を見慣れている方にとっては、きっと味わったことのない体験になるだろうなと思っておりますし、お芝居をあまり観たことがない方は、すごくエキサイティングな舞台になると思いますので『舞台を観る』というよりも、体感しに来て欲しいな、と思っています」
久下「物語自体もそうですけど、内幸町ホールというところが、今までどういうものをやっていたかという歴史も含めて体感できますし、色々な人がどんな思いでここを支えてきたかということも感じられると思います。ぜひ、そうしたことも『体感』して欲しいですね」
MIHO「ぜひ、未知の世界に飛び込んできてください(笑)。私たちも含めてそんな時間になったらいいなと思っています。本当に長い間、こうしたエンターテイメントの場を私たちに与えてくれて、そして観る者も支えてくれた内幸町ホールに感謝の気持ちを、そしてまた新しく会いましょうという気持ちですね」
(取材・文・撮影/新井鏡子)
公演概要
Eccentric Immersive Dancetainment『After The Show!!』
公演期間:2025年3月28日 (金) 〜 2025年3月30日 (日)
会場:内幸町ホール(東京都 千代田区 内幸町 1-5-1)
■出演者
ATSUSHI 前田剛司 HAMACHI Kekke おおたけこういち 久下恵
MIHO BROWN JUN
[Daily Special Guest]
28日19:00 TOMO(DA PUMP)
29日13:00 立川こしら
29日17:00 KTR(FULLCASTRAISERZ/RAGPOUND)
30日13:00 福士誠治
■スタッフ
脚本・演出:おおたけこういち
振付:Blue Print
■公演スケジュール
2025年3月28日(金)19:00-
29日(土)13:00- 17:00-
30日(日)13:00-
全4公演
※開場は開演の45分前です
※上演時間は約100分です
■チケット料金
一般:6,500円
高校生以下:3,500円
1,000円割引!6,500円(通常料金) → カンフェティ席5,500円!
(指定席・税込)