【取材会レポート】十三代目 市川團十郎白猿「11月からはもう襲名披露巡業ではなくなりますので、ようやく安堵できるのかな、と思っております。」

【取材会レポート】十三代目 市川團十郎白猿「11月からはもう襲名披露巡業ではなくなりますので、ようやく安堵できるのかな、と思っております。」

自分自身がもっと歌舞伎を楽しみたい。それをお客さまにも伝えたい。

市川海老蔵十三代目 市川團十郎白猿を襲名してから約2年。2023年には全国各地35か所44公演の襲名披露巡業を成功させ、今回で最後の襲名披露巡業に臨む團十郎が都内で取材会を行い、見どころや意気込みを語りました。

――最後の襲名披露巡業を前に、どのようなお気持ちでいらっしゃいますか。

東京での公演も大事にしていますが、地方で歌舞伎をすることの大事さは、若い時より諸先輩方からもお話しをお伺いしており、ここ10年ほどは旅巡業公演も重視して公演を開催して参りました。「十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業」と言う形での公演では『勧進帳』『毛抜』を演じてきましたが、今回は『河内山』です。『河内山』は歌舞伎十八番ではないのですが、私は好きなお芝居です。9月に巡業、10月に松竹座公演を終えて、11月からはもう襲名披露巡業ではなくなりますので、ようやく安堵できるのかな、と思っております。

―襲名披露巡業を行ってきたこの2年で、何か心境の変化はありましたか。

心境の変化としては、歌舞伎と向き合う時間というものが海老蔵時代よりもだいぶ深くなったように思います。今はもっと歌舞伎を自分が楽しみたい。そして自分が楽しんだ結果、お客さま方にもそれが伝わるような歌舞伎を、古典でも新作でもやってみたいです。そこは今までにない、新しい心境ですし、それをやらなくてはならないと感じています。やることが運命であって、父に教わったことを受け継いで、それを次の世代に渡すという責務を大きく感じています。それをしていくために、自分自身が楽しんで、それがお客さまにも伝わっていくこと。それを次代の人間たちが見て、ああいう風になってみたいと思ってもらえるような形が、結果としてはいいんじゃないかという変化がありました。

――襲名披露巡業と歌舞伎座などでの興行とで、何か違いは感じていらっしゃいますか。

襲名披露巡業というものは、楽しめるものではありません。責務の大きさが第一にありまして、そこで楽しむ、楽しまないは別のお話なんですね。ただ、襲名披露巡業をやっている2年間の間にも、普通の興行が混じってきます。これがまた不思議なお話なんですが、歌舞伎座の團菊祭ですとか、新橋演舞場での子どもたちとの興行ですとか、来月には「星合世十三團」もございます。そういうものが混じってくることによって、襲名披露の巡業中ではありますが、普段の興行に戻ったときに解放感を感じられます。襲名中にしか起こらない、非常に特殊な状況です。解放されているからと言って、手抜きをしているということではもちろんないのですが、解放されているからこそ芸事の楽しさ、深みなどを感じやすくなっているのではないかと思います。

――『河内山』はどのような演目なのでしょうか。

質屋のお嬢さんが大名家に奉公へ行ったところ、お殿様に気に入られてしまって女性として逃げられない環境になってしまうのですが、そこを御数寄屋坊主が高僧に扮して乗り込んでいくというお話しです。その後、扮していることが見つかってしまいますが、見つかってもなお怯むことがなく「それがどうしたんだ」と凄みます。最後はとてもわかりやすい展開になっていまして、襲名披露巡業でできることがとても嬉しいですね。

――演じられる数寄屋坊主・河内山宗俊はどんな人物ですか。

今の時代であれば、コンプライアンス的に存在できないようなタイプです。そういう役柄は歌舞伎の中に非常に多いんですよね。河内山は、ただの御数寄屋坊主ですが、ちょっと曰くがありげな危険人物。質屋のお嬢さんを返してもらうために親は何とかしてほしいわけですが、ただの坊主なのに引き受けてしまうんです。そして、200両という大金をほしいと言うのですが、引き受けるだけで100両、娘が戻ってきたらさらに100両を要求します。それはもう、引き受けた時点で勝つことが確定なのです。それで偉いお坊さんになって騙していくのですが、帰り際に正体がバレてしまう。でも、そこでもうまく返して勝つところが、爽快な演劇だと思います。古典で難しい言葉は出てくるかもしれませんが、少しでもわかりやすく伝えられるように演じたいと思っています。

代々の團十郎に受け継がれてきた豪華な演目に注目!

本巡業には、市川團十郎をはじめ重要無形文化財保持者(人間国宝)の中村梅玉市川右團次が出演。さらに、大谷廣松、中村莟玉、市川九團次、片岡市蔵が名を連ねます。

一、祝成田櫓賑(いわうなりたしばいのにぎわい)
 祭で賑わう江戸の街。鳶頭、芸者らが繰り出し、一同めでたく舞い踊ります。襲名披露を寿ぐ祝祭気分にあふれた舞踊をお楽しみください。

二、十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 口上(こうじょう)
 裃姿の俳優よりお祝いの言葉が述べられます。
 十三代目 市川團十郎白猿より、ご来場の皆様へ、襲名披露のご挨拶を申し上げます。

三、河内山(こうちやま)
 江戸城の御数寄屋坊主、河内山宗俊は、松江出雲守邸で腰元浪路として奉公している質屋上州屋の娘が、 出雲守に見初められたために幽閉されていると聞き、200両で浪路の奪還を請け負います。河内山は、上野寛永寺の使僧と偽って出雲守邸に出向き、渋る出雲守を見事説得し、浪路の救出に漕ぎ着けますが、その帰りがけに…。 河竹黙阿弥の名作『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』からのひと幕。悪党ながらも人物の大きさや色気、愛嬌も兼ね備えた河内山宗俊を、團十郎が演じます。黙阿弥らしい七五調の名せりふも聴きどころです。

神戸公演詳細

神戸文化ホール開館50周年記念事業
十三代目 市川團十郎白猿襲名披露巡業

【出演】
市川團十郎
市川右團次/大谷廣松/中村莟玉/市川九團次/片岡市蔵
中村梅玉 他

【演目】
一、『祝成田櫓賑(いわうなりたしばいのにぎわい)』
今井豊 茂 補綴/藤間勘十郎 振付
鳶頭 右團次
鳶頭 九團次
芸者 廣松
芝居茶屋亭主 市蔵
二、十三代目 市川團十郎白猿襲名披露『口上』
海老蔵改め團十郎
幹部俳優出演
三、河竹黙阿弥作 『天衣紛上野初花 河内山(くもにまごううえののはつはな こうちやま)』
河内山宗俊 海老蔵改め團十郎
高木小左衛門 右團次
宮崎数馬 廣松
腰元浪路 莟玉
桜井新之丞 九團次
北村大膳 市蔵
松江出雲守 梅玉

【日時】
2024年 9月11日(水) 13:00開演(12:30開場)

【会場】
神戸文化ホール 大ホール(〒650-0017 神戸市中央区楠町4-2-2)

【チケット】
一等席:13,000円
二等席:8,500円
U25(25歳以下):5,000円
高校生以下:1,000円
(全席指定・税込)
※都合により出演者が変更となる場合がありますので予めご了承ください。
※公演中止の場合を除き、出演者が変更となった場合等のチケットの払戻は致しかねます。予めご了承ください。
※座席列は、「1列」が最後列となります。
※未就学児のご入場はご遠慮ください。
※車いす席のご購入については神戸文化ホールプレイガイド窓口までご連絡ください。※当日の会場でのチケット購入につきまして、お支払方法は現金のみとなりますので、予めご了承ください。

【公演に関するお問い合わせ】
神戸文化ホールプレイガイド 078-351-3349
(10:00~17:00月曜休み ※祝日の場合、翌平日)

【公演詳細ホームページ】
https://www.kobe-bunka.jp/hall/schedule/event/classic/13997/

主催:神戸文化ホール(指定管理者:公益財団法人神戸市民文化振興財団)
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

製作 松竹株式会社 
制作:株式会社3Top
制作協力:全栄企画株式会社 株式会社ちあふる



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