「謎のあるイマーシブ」を作り出すイマーシブシアター創作団体「ESPACT」特別インタビュー!

「謎のあるイマーシブ」を作り出すイマーシブシアター創作団体「ESPACT」特別インタビュー!

2024年4月1日に誕生したイマーシブシアターと謎解き制作に特化した俳優だけの創作団体「ESPACT(エスパクト)」。発表と同時に洗礼された団体ビジュアルも公開され話題になった彼ら。未だ謎に包まれていることも多いこの団体が誕生した経緯や今後の目指す先を、主宰の横山統威と脚本・演出を担う藤井千咲子に話を聞いた。

―――まずは、ESPACTが誕生した経緯を教えてください。

横山「メンバー全員が、SCRAPさんの「体験する物語project」に出演していた俳優たちで、『俳優たちがやるからこそ意味のある何かを作りたい』と思い、僕がみんなに声をかけたのがきっかけです」

藤井「(その場にいるメンバーを指して)例えば、ここにいる私と横山と吉野は「黄昏のまほろば遊園地」と「ALICE IN THE NIGHT MYSTERY CIRCUS」の2作品に出演していて、山本と徳岡は「黄昏のまほろば遊園地」に出ていました。去年の秋ごろに横山から「何か公演をやりたいんだよね」ってふんわりと相談を受けたのがきっかけですね。」

横山「僕から一人ひとりに連絡して、賛同してくれた人達が今のメンバーになります。」

藤井「今年に入ってから具体的に立ち上げの話が進みましたね。その中で「やるなら本気でやる」というのをしっかりと共通認識にして、覚悟を持ってやろうとみんなで決めました。元々、一緒にいる時間も長かったので、信頼関係もあり、人となりもわかっている状態だったので、話がまとまるのは早かったですね。」

―――団体のコンセプトである『謎のあるイマーシブ』というのは、どのようにしてできたのですか?

横山「最初はイマーシブシアターではなくて、俳優だけで「謎解き公演」を作ろうと思っていました。」

藤井「横山が「謎解き公演を俳優でやれば、司会(謎解き公演において進行管理担当。ゲームマスター。)が物語の登場人物っぽくなるから面白いのでは?」と言い出したのが始まりでした。ただ、話し合いを重ねていくうちに、やりたいことはイマーシブシアターなんじゃないか?というのが見えてきて…」

横山「メンバー全員が俳優ということもあり、演劇要素をもっと濃くした方がよいなと思いだしたんです。話し合いの中で「物語がしっかりとある」というのを大事にしたいと思うようになったんです。」

藤井「そこから「イマーシブシアターの中に謎があるのでは?」という結論に至り、コンセプトが“謎のあるイマーシブ”に決まりました。」

横山「イマーシブシアターはお客様が行動を選択することで、体験できる物語が変わっていきます。その中に推理要素を入れることで、「こういう行動をした方がいいかな?」と【閃き】が生まれ、行動する…そんな閃きと行動で物語を動かすのを楽しんでもらえるようにしたいんです。」

藤井「謎解きもイマーシブシアターも、皆さん工夫をしながら製作されているので、ESPACTもどこか特化していきたいと思って、その中で、謎を解くことで左右される物語を体験ができる場所を作っていきたいと思いました。」

―――コンセプトともに、団体のビジュアルも一緒に公開されましたが、洗礼された印象を持ちました。発表の際にこだわったこととかありますか?

横山「みんなと話し合った中で、まずは「信用できる団体」というイメージを持ってもらいたいと思いました。そうなると団体のブランドや公開するイメージは、最初から大事にしていく必要がありました。その上でビジュアルにもこだわって、団体設立とともに公開しました。」

藤井「発表してからは、様々な方にお声がけいただくようになり、オーディションにも多くの方からご応募いただきました。イマーシブシアターや謎解きがコンテンツとして盛り上がっているというのもありますが、「この団体、面白そう」というのを狙って仕掛けた部分もあるので、本当にうれしかったですね。「よくわからない団体」じゃないというのを提示していくのは本当に大事だなと改めて思いました。」

―――発表の際には、各メンバーの担当(マーケティングや広報など)も公開されましたが、全メンバーそれぞれに役職があるんですね。

横山「すごくバランスがよく、いいメンバーが集まったんですよ!」

藤井「(その場にいたメンバーを指して)マーケティング的なアイディアを出すのは徳岡が得意、広報として適切な言葉を選んで世に発信するのが山本は得意だったり。吉野は制作全般ができて細かいところにも気を配れるので、本当にバランスがいいんです。また、年齢も幅広いので、年上メンバーがしっかりとバランスをとっているような形ですね。」

横山「SNSでの投稿文も何パターンも用意してくれて、適したものを出せるように話し合いをいつもしていますね。」

藤井「大﨑というデザイナー担当もいて、一貫性のあるデザインができるのも強みです。あとは、それぞれ活動履歴もバラエティに富んでいるんですよ。例えば、私は演劇畑ですし、横山はもともとアイドルをやっていたり。価値観が違い、見てきた景色も違うので、いろんな見聞を共有できるんですよね。」

―――そんな個性豊かなメンバーが集まった中、10月には始動公演が予定されていますが、今の段階での構想を教えていただけますか?

藤井「会場のアトリエ第Q藝術は、建物を一棟借りできる場所なんですよ。なので、お客様には好きに歩き回ってもらうように作る予定です。まだ企画段階のところもありますが、お客様には特にキャラクターや設定を与えず、その物語の世界にきたお客様のままで物語を始める予定です。」

横山「謎解き要素も、より物語を深堀りできるような謎なので、謎解きが苦手な方でもイマーシブシアターとして楽しめるように作ってゆく予定です。なので、謎を解かなくても楽しめる物語になると思います。」

藤井「手がかりを集め、謎を解くことでキャラクター同士の関係性がどんどん見えて、物語の全貌が見えてくる構成にするつもりです。そもそも、演劇を作っているつもりなので、謎を解かなくても物語を最初から最後まで楽しめるようになっています。“イマーシブ要素のある謎解き”ではなく、“謎のあるイマーシブ”と謳っているのはそのためです。」

横山「イマーシブシアターという白米があり、謎解きというふりかけがかかっている。白米だけでもおいしいけども、ふりかけがあることでよりおいしくなるというか……」

みんな「…!!(「がんばれ」「いいぞ、いいぞ!」って小声で応援している)」

横山「やっぱり、たとえ話やめますね!(笑)」

藤井「(笑)作品としては、いくつもの物語が同時進行する形を取ろうと思っています。それを目撃してもしなくてもいいと思っています。人生のように、目撃者がいるから始まるものではないと思っていて、物語は進んでいる中でお客様はたまたま当事者として目撃してしまっただけ。そのシーンを目撃した人が「見ちゃった……」という経験を増やしたいですね。」

―――少し質問を変えまして、そもそも、イマーシブシアターを作るにあたっての難しさってどんな感じなんですか?

藤井「通常の舞台と同様、作り方や演技論は共通しているのですが、一部普通のお芝居とは違います。お客様とコミュニケーションで何が起きるかわからない中でお芝居をして、さらに物語を逸らさないように進めるので。」

横山「今回やろうとしている作品もそうですが、同時進行ですべての物語が動いているので、役者はハケがないんですよね、ずっとでずっぱり。その上で、360度からみられているというのも、普通の舞台とは違ったところですね。」

藤井「イマーシブシアターで芝居をしたことがある人にしか見えない景色というのがあって。それが「すごい」というわけではありませんが、経験しないとわからなかったり想像できないことがあるんですよ。普段使わないような特殊な筋肉が異常にムキムキになっている感じです(笑)これを言葉で説明するのは中々難しいですが、ESPACTは全員が経験者でお互いの共通認識もあるので、客演をお招きするにあたっても、イマーシブシアターに必要なことをお伝えしやすいというのは強みになっています。」

横山「稽古はもうトレーニングですよ。」

藤井「まずはイマーシブシアター独自のルールに慣れる必要がありますね。最初は徹底的に演じる役の設定の作り込みをお願いすることになります。」

横山「それからは、ざっくりいうとエチュードを重ねていきます。その役者と、お客様役に別れて、常に演じる役のまま受け答えができるようにする稽古です。1000本ノックみたいな感じですね。」

藤井「タイムキープも大事な稽古になります。シーンごとに時間が決められているので、数十秒単位で各場所のタイムテーブルが組まれることもありますね。また、実際のお客様の移動も考えなければならないので、その導線づくりも最初は難しいかもしれませんね。イマーシブシアターはお客様が自由であることが前提になっているので、自分が物語を動かしている・選んでいると思わせなきゃいけないと思っています。なので、役者が「次はこっちに動いてください」「あっちに行きましょう」とやりすぎてしまうと、もはや役が選んだ物語になってしまいます。でも、ある程度の指示をしないとお客様が動きにくいと感じてしまうこともあるので、役者の塩梅が問われる部分になります。」

横山「そのシーンで観ている人の数を僕たちは「視聴率」と表現しているんですが、お芝居の中でその視聴率を調整するような工夫もしています。例えば、物語の大筋になりそうなシーンの場所に人が集まっていなかったり、逆に溜まりすぎてしまっている場合とかは、セリフや動きで誘導していく場合があります。」

藤井「その塩梅も難しく、お客様に選択してもらい、楽しい選択をしたとポジティブな気持ちになってもらう必要があるので、役者のセリフや言葉選びが大事になってきます。」

横山「また今回はマルチエンディング(物語のエンディングが複数もあり、公演毎に変わる形式)に挑もうと思っています。」

藤井「エンディングは各回、皆さんの行動次第で変わります。なので、台本の量もかなり多くなりそうで(笑)、私は自分の個人ユニットでも脚本を書いているんですが、毎日内容が違っていいと思っていて。 今回ももちろんセリフはありますが、私たちの相手役はお客様なので、その日によって物語は違うはずなんですよね。毎日別作品見てるぐらい別でいいものをやらしてくれる場所なので楽しんで挑んでいます。」

―――様々な要素が盛り込まれた公演になりそうですね!それでは最後にESPACTとしての目標をお願いいたします。

横山「まずは「謎のあるイマーシブシアター」といったらESPACTと思ってもらえるようになること。あとは、イマーシブシアターを演劇界で確立させることです。体験型コンテンツとしてイマーシブシアターはよくあるのですが、僕らの作品はあくまでも演劇ベースで作るイマーシブシアターなので、舞台や演劇が好きな方にまずは楽しんでもらいたいです。あとは、街や生活の中にイマーシブシアターを組み込んで、大きくしていきたいですね。」

藤井「イマーシブシアターは別ジャンル・別業種との掛け合わせがしやすいコンテンツだと思っています。場所も選ばずにできるので、その場所に合わせた作品でもよいし、いろんな場所でも上演できる作品を作ることもできてしまうのは魅力の一つです。建物や街としてエンタメをしたいけどやり方がわからないという方々と一緒にやりやすいものだと思っています。ゆくゆくは、演劇・謎解きといったジャンルにとらわれない掛け合わせでいろんなところを盛り上げていきたいです!」

プロフィール

横山統威(よこやま・とうい)

東京都出身。2000年12月13日生まれ。元『祭nine.』メンバー。現在は歌って踊る俳優として舞台やライブ、イベントを中心に出演。謎解き・マジック・映像編集・曲作りなどが特技で、クリエイティブな活動も行っている。主な出演作に、体験する物語project『ALICE IN THE NIGHT MYSTERY CIRCUS』、体験する物語project『黄昏のまほろば遊園地』、舞台『レ・ミゼラブル〜惨めなる人々〜』、舞台『雨と夢のあとに』など。

藤井千咲子(ふじい・ちさこ)

大阪府出身。4月30日生まれ。俳優・脚本家・演出家。演劇ユニット『シマイシバイ』主宰。俳優として舞台・映像作品に出演する傍ら、演劇作品の作・演出、縦型ドラマの脚本提供、エッセイの執筆など活動は多岐に渡る。猫のオリーブとジンジャーと東京暮らし。主な出演作に、体験する物語project『ALICE IN THE NIGHT MYSTERY CIRCUS』、体験する物語project『黄昏のまほろば遊園地』、泊まれる演劇『藍色飯店』、映画『I am a Trader』橋本凛役、舞台『遥かな町へ』長瀬智子役、など。

ESPACT

イマーシブシアター(体験型演劇)と謎解き制作に特化した俳優で構成された、2024年4月1日新設のイマーシブシアター創作団体。メンバーは、横山統威・吉野めぐみ・藤井千咲子・橘沙穂・徳岡あんな・大﨑萌々香・山本美佳・わたなべゆうた・梅田脩平、他裏方メンバーの全10名。裏方メンバーを除く全メンバーが俳優として出演とコンテンツ制作も担当。

公演情報

ESPACT始動公演「(タイトル未発表)」

日:2024年10月3日(木)~10月6日(日)

場:アトリエ第Q藝術

企画・製作:ESPACT

公式X https://x.com/Espact2024

イベント情報

『ESPACT緊急記者会見 2024夏』

日:2024年8月14日(水)

場:ふれあい貸し会議室 五反田松楽

イベント詳細 
https://note.com/espact/n/naae0f02ec195

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