死体を乗せた車で走る2人を描くハートフル・ロード・コメディ 旅の途中で出会う人々と織りなすストーリーは、きっと何度も観たくなる!

死体を乗せた車で走る2人を描くハートフル・ロード・コメディ 旅の途中で出会う人々と織りなすストーリーは、きっと何度も観たくなる!

 ACTOR’S TRIBE ZIPANGを主宰し、舞台俳優としての幅を更に拡げている鳳恵弥。声優としてアニメや映画など数々の大作で活躍する傍ら、舞台や歌でも活躍する松本梨香。華やかさでは引けを取らないこの2人に、テレビドラマ『ごくせん』などを手がけた脚本家、江頭美智留が加わって意気投合。
 ちょっとした事情から死体を運ぶことになった女2人を描いた新作『ナビゲーション』が幕を開ける。2人以外にも個性派俳優が揃ったこの作品には、爆風スランプのギタリストで作曲家でもあるパッパラー河合が楽曲提供だけでなく役者としても参加するという。
 劇場都市TOKYO演劇祭の杮落としでもある今作について、江頭、鳳、松本、河合の4人に話を聞いた。


―――極秘で知人の死体を運ぶ……なかなか興味深いストーリーですが、まず思いついたきっかけを教えてください。

江頭「3年くらい前に毎週舞台をやっていたことがあり、その時、劇場のオーナーさんから知り合いのご遺体を山形の家族のところに運ぶ話を聞いたんです。もちろん勝手に遺体を運ぶのはいけないことなんですが、その話を聞いてすごく人間臭さを感じました。その後、そういった話をやりたいとあちらこちらで言っていたんですが(笑)。私が企画書を書くのが苦手でなかなか実現しませんでした。それが今回、鳳さんと松本さんに声をかけてもらったときに、この2人ならできると思ったんです。
 それと私は『テルマ&ルイーズ』(アメリカ/1991年)という映画が好きで、それをリメイクできないかなとも思っていたのですが、今回2人とこの話に取りかかってみると、まるで『テルマ&ルイーズ』だなと思いました。だからずっと想い続けたいくつものことが一気に実現した感じです」

―――話に聞いたところだと、11月くらいにあった3人での食事会がきっかけだとか。

松本「その時は3人でいつかやろうということで意気投合して、舞台の話も出ていたのですが、蓋を開けてみたら1ヶ月後?となって。狐につままれたみたいな感じです(笑)」

鳳「演劇祭(劇場都市TOKYO演劇祭)に参加する話もあり期間中の3月までのどこかで上演すると思っていたのですが、実際は劇場の空きが年明けすぐしかなくて。さらに劇場さんからも(演劇祭の)杮落としをとお願いされて、この時期となったんです」

―――ではメインキャストとなる鳳さん、松本さんそれぞれ抱負を聞かせてください。

鳳「私がその死体を運ぶドライバー役で、それまでに男性に騙されるなどして傷つき、人間不信気味になっているところから始まります。そんな彼女がいろいろな人との出会いにより徐々に気持ちが溶けていきます。詳しくは本編をご覧になってほしいですが、それらの出会いがまず見どころです。
 さらに河合さんが曲を、江頭先生が詞を書いて梨香さんと私が歌う曲が、お客さんのハートを鷲掴みにするでしょう。すごい化学反応を起こしていますから。昨年からのコロナ禍で疲れた気持ちに効く作品になるでしょう」

松本「私は恵弥ちゃんのパートナーのようにして一緒に旅をする役どころですが、旅の最中にいろいろなドラマがあり、人間臭い人達と出会っていきます。まるで『銀河鉄道999』みたいなところがありますね。生きているといろいろな涙を流すじゃないですか。悲しい涙だけじゃなくて、嬉しい涙も。そして人生の最後には幸せの涙を流したいと思っていますが、そんな幸せの涙を探していくようなストーリーです。絶対に親子で観て欲しいし、観た後には何か持って帰れる作品だと思います」

―――松本さんはベテラン声優というイメージが強いのですが、舞台にも多く出演されていますね。

松本「そう見られがちなのですが、実は声優と舞台俳優を半分ずつバランス良く取り組んでいるんです。声優で参加しているのが大きな作品が多いせいもありますけれど。もともと父が大衆演劇の座長だったもので、舞台はお芝居と歌と踊り、お客さんが喜ぶものを、とやってきたんです。まあ自分の中ではフィールドがはっきり分かれてはいません。楽しんでやらせてもらっています」

―――そして河合さんは今回挿入歌だけでなく役者としての参加となりますね。

河合「同じく曲を提供した『シーボルト父子伝』ではゲストコーナーに出ていたので、そのつもりで軽く引き受けたら、今回は台本が4ページくらいあって……。舞台は間違えたら台無しだから大変だけど頑張ってます。音楽なら緊張もしないし、テレビや映画ならやり直しもきくのでいいのですが、舞台はそれがきかないんですよ。
 普段一緒に活動しているサンプラザ中野くんも以前『鉄人28号』という舞台にダイアモンド☆ユカイ達と出たんだけど、その時は僕の台詞の3倍くらいあって、もうノイローゼになってたもの(笑)。まぁ、ミュージシャンも同じステージなんですけどね。ともかくちゃんとしたお芝居は初めてです」

鳳「河合さん、結構重要な“社長”役ですものね」

河合「本当に結構重要なんです。本当は中盤くらいでちょこっと出るのが理想だったけど、そうはいかなくて」

松本「でもこういう社長さんってリアルにいますからね。あんまり演じてないでしょ」

河合「そんなことできないからね(笑)。『男はつらいよ』に出てくるタコ社長みたいな感じ?とみんなに聞いたらそうだと言うから、今、寅さんシリーズを観ているところです(笑)」

―――ともあれ、鳳さん、松本さんあっての作品ですね。

江頭「この作品はやはりこの2人がメインですが、旅の途中に出会う人をどうクセ者にできるかを悩みました。最初はキャストも2人以外は決まってなくて、普段は結構当て書きすることが多いものだから、顔ぶれが決まっていない状態で書いていた今回は結構悩みました」

―――先ほど話も出ましたが、この作品は劇場都市TOKYO演劇祭の参加作品ですね。演劇祭に挑む抱負を聞かせてください。

鳳「20団体近くが参加するそうですが、何か1つは賞は獲りたいですね。でも作品としては賞を総ナメにするだけの自信もあります。もういろいろなエンタメを凝縮して伏線や仕掛が張り巡らされているので、何度観ても面白い作品になってます」

松本「何度観ても、ではなくて、何度も観たくなる作品なんです! 本当に、ええ本当に(笑)」

江頭「演劇祭の仕組みはよくわかっていないんですが、まあ何か賞品が出るなら欲しいなぁって思います(笑)」

松本「なんかお正月ならでは、新春らしいイベントですよね。これで演劇を盛り上げようと言うね。コロナのお陰で演劇界自体が力を失っている部分があるので、みんなが力を取り戻そうと頑張っている感じです」

―――話せる範囲で見どころを教えてもらえませんか。

松本「この舞台ですごいことが、車で死体を運ぶ話だから当然車が出てくるんだけど、それが本物の車を使うんです」

―――えっと、劇場はサンモールスタジオでしたよね。どうやって車を入れるんです?

松本「だから車を解体して舞台に入れるんです。真っ赤な本物の車が。そういったことも含めて作り手みんなが楽しんでいますね」

鳳「3人で話していて、やっぱり本物がいいよね、ってなったんです」

江頭「もともと映画向けで考えていた話なんですよ。舞台で車は無理だと思ったので。だから今回本物を用意してくれるのは有り難いですね」

―――なんかすごいことになりそうですね。ではみなさんからお客さんへのメッセージをお願いします。

松本「演劇祭に参加される劇団さんは、既にファンがいるわけじゃないですか。でも私達はこの作品の為に集まったわけですから固定ファンはいない。そんな中で支持を得るのは大変なんだけれども、その中で高く評価されたら光栄過ぎて涙チョチョ切れるなあと思いますね。ともかく絶対面白い!という自信があるんです。これだけ自分が演っていて周りに面白いから来てといえる作品はなかなかないですから。稽古場でも毎回爆笑ですし。観ないと損だよと言いたいですね。
 そして私には更なる野望があって、この作品を日本全国で演って日本を元気にしたいですね。それが終わったら海外に持って行きたいです。今回だけで終わらせたくないですね」

河合「音楽の世界もコロナが開けつつあるのだけれど、以前に比べてお客さんが半分しか来ないってみんな嘆いています。それが現状ですし、音楽界も演劇界も同じでしょう。だからそういった状況を打破したいという思いで取り組みます。でも、大丈夫かなぁ」

鳳・松本「大丈夫、大丈夫(笑)」

江頭「久々の新作の稽古場で役者さんが稽古をしながら台詞が生まれていくのを眺めていてすごく楽しんでいます。つくづく脚本を書いていて良かったなと思います。舞台は脚本に沿って役者さん達で創り上げていくものですから、それができる現場で良かったと。役者さん達がどれだけ魅力的に動いてくださるか。それができる作品になっていると思います」

鳳「この座組はエネルギーに満ち溢れ、楽しく、前にしか進んでいない感じがします。そして役者さんみんながそれを楽しんでいるのを観て、私も幸せを感じています。でも他の参加劇団もこの演劇祭が大きなモチベーションになっていて、どこも同じように熱を持って活気づいていると思うんです。そういう稽古場で出来たものは絶対に面白い! だから是非観に来てください。物語には『だいじょうぶ』というキーワードがありますが、まさにみんなを励ますような作品になっていますから」

―――ありがとうございました。


(取材・文&撮影:渡部晋也)

プロフィール

鳳 恵弥(おおとり・えみ)
東京都出身。2002年、ミス・インターナショナルで準ミスとして日本代表に選ばれる。その後、舞台やモデルとしてTV、CMなどに出演。さらにつかこうへい劇団に入団(13期)し女優としてドラマや映画、舞台と本格的に活動を展開する。またプロデュース、キャスター、執筆活動、演技やダイエットなど様々な指導などマルチに活躍。2019年には演劇ユニットACTOR’S TRIBE ZIPANGを旗揚げ、演出、脚本も手がけている。

江頭美智留(えがしら・みちる)
兵庫県出身。「読売ゴールデンシナリオ賞」での受賞をきっかけに脚本家を志し、1990年に火曜サスペンス劇場『人生相談殺人事件』で脚本家デビュー。その後『ナースのお仕事』、『ごくせん』、『1リットルの涙』など数々のヒット作を手がける。また2008年には自ら主宰として劇団クロックガールズを旗揚げし、舞台作品も手がけている。鳳恵弥とは彼女の代表作『こと~築地寿司物語~』や同じく主演ドラマ『あじさい』でも脚本を担当した。

松本梨香(まつもと・りか)
神奈川県出身。大衆演劇の座長を父に持ち、子どもの頃から劇団で舞台を踏む。一時期舞台からは離れるものの、アニメ『新・おそ松くん』で声優としてのデビューを果たす。さらに『絶対無敵ライジンオー』で主役デビューを果たし、人気アニメ『ポケットモンスター』では主役であるサトシ役を担当して世界的な知名度を獲得する。また数々の洋画作品にて吹き替えを担当するほか、歌手、そして俳優としても活躍している。

パッパラー河合(ぱっぱらーかわい)
千葉県出身。サンプラザ中野(現・サンプラザ中野くん)とともにスーパー・スランプから爆風スランプに参加。ギタリストとして活躍。数々のヒット作に関わる。さらに楽曲提供や舞台音楽も手がけ、鳳が主演した『シーボルト父子伝』では主題歌を提供した。映画やテレビドラマにも出演経験があるが本格的な舞台作品への出演は今回が初めて。

公演情報

ACTOR’S TRIBE ZIPANG
劇場都市TOKYO演劇祭 参加作品
舞台『ナビゲーション』

日:2022年1月13日(木)~16日(日)
場:サンモールスタジオ
料:一般6,000円 
  学生[各回枚数限定]3,500円
HP:https://twitter.com/stage_ATZ?_fsi=Diwndeq4
問:(ACTOR`S TRIBE ZIPANG)舞台【ナビゲーション】 mail:atz.stage@gmail.com

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